笑う門には
「どうしたの、エリージャ!
あなたがそんなに大笑いしてるなんて…めずらしいじゃないの!
ねぇ、あなた!」
「…そうだな」
少し興奮気味のおばさんとその旦那さんがベッドに近づく。
「いやっ、この子、本っ当っ…!」
「別に私は何も言ってない!
あんたが勝手に笑い出したんじゃん!」
笑いすぎて呼吸困難になりかけているエリージャにそう怒鳴れば、
「あっはっはっはっ!
まるで娘ができたみたいだよ!」
おばさんまで笑いだした。
そんなおばさんの横ではおじさんも肩を震わせている。
なぜこんなに笑われないといけないのか。
そんな疑問は怒っている私が馬鹿みたいだと思わせてくる。
「なんなのっ…もうっ!」
怒りを通りこせば、それは笑いへと変わっていく。
いつぶりだろう、こんなに笑ったのは。
いつぶりだろう、こんなに誰かと笑っているのは。
楽しい
いつぶりだろう、こんな気持ちになるのは。
「ねぇ、ウミ。
君さ、帰る家がないんだよね?」
エリージャが私にそう問いかければ、
「えぇっ!この子、帰る家がないの?本当なの!?」
おばさんが食い気味に聞いてくる。
勢いに負けて思わず、はいと答えると、おばさんは満面の笑みで両手を大きく広げた。
「それなら!ここが今日からあなたの家よ!」
「…え?」
私が動揺を隠せずにポカンとしていても、おばさんは全く気にせず1人でうんうんと頷いている。
「この部屋だったら余ってるし自由に使ってもらって大丈夫だし、それに畑で採れた野菜も果物も、私達2人だけだと食べ切る前に傷んでしまうもの!ねぇ!いい考えだと思わない?」
「そうだな」
「ならまずは着替えが必要だな…新生活の祝いとして俺がプレゼントするよ」
旦那さんもアッサリと頷いて、エリージャまでもが今後の計画を立てている。
「えっと…あの…」
「あら、自己紹介がまだだったわね!私はイライザ。イライザ・アビエルよ!で、この無口な人はブラム・アビエル。こんな無愛想な人だけど根はいい人だから大丈夫よ!あなたの名前は?」
「えっ…と、ウミ…です」
「ウミね!よろしく、仲良くしましょう!
あなたは今日から私達の子も同然よ!ウミ・アビエル!」
ファミリーネームまでつけるなんていきなりすぎですよ、と笑うエリージャと、そうだな、と頷くブラムさんの姿を見て、私が何を言ってもきっと意味はないんだろうと察する。
「よろしくお願いします、イライザさん、ブラムさん、
…エリージャも」
でも、心の奥はすごく暖かくなっていた。