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全てのパーツ

「静香さん、一つ聞きたいんだけどいい?」

「何?」

「昨日、東田に呼ばれてたよね?」

「え?あ、ああ、あの時は謎について話してたんだよ」

「下の名前で呼ばれてたよね?」

「それは、京介くんが来る前に仲良くなったの」

「…そっか!ありがとう!」

「ううん。何か役に立てることがあれば私に言って」そう言い残し、静香は部屋へ戻って行った。

「渡辺さんにも聞きたいことがあるんです」

「何かしら?」

「どうして、俺について来てくれたんですか?」

「それは昨日言ったじゃない。私は弁護士だから、良心に従って行動するって」

「でも、仕事もありますし、こんな所からは早く出たいと思ってますよね?」

「ええ、それは勿論よ!」

「だったら、すでに問題を解いている東田に協力した方が得だったんではないですか?」

「何が言いたいのかしら?私を疑っているの?」

「いえ、そうではありません。こんなことがあって、俺も疲れてるのかもしれません。嬉しい反面、何かあるのではないかって考えちゃって…」

「しっかりしなさい!」

「え?」

「私があなたについて行った理由は、弁護士の勘よ!東田くんについて行くよりあなたについて行った方が得だと思ったの。それに、亡くなった人のことについてこんなこと言うのは失礼だけど、彼とはうまくやって行ける気がしなかったわ」

「渡辺さん…ありがとうございます!俺、絶対に皆さんを脱出させてみせます!だから、俺に力を貸してください!」

「ええ、最初からそのつもりよ。なんでも言って」

「本当にありがとうございます。早速なんですが、俺の部屋以外の畳の配置を正確に確認して来て頂けませんか?」

「でも、畳の配置はさっき話したじゃない」

「はい。そうですが、一応お願いできますか?」

「わかった。協力すると言った以上やるわ」

渡辺は茶畑の部屋の扉を叩いた。

「茶畑くん、渡辺よ。少し聞きたいことがあって、鍵を開けてもらえるかしら?」

しかし、茶畑の部屋からは返事がない。

「あら?聞こえないのかしら?」

「電話してしてみてはどうです?」

「そうね」

渡辺が茶畑の部屋に電話をかけると、すぐに茶畑が出た。

「茶畑くん?渡辺だけど、少し確認したいことがあるから部屋に入れてもらえないかしら?」

「え、いいっすけど。ちょっと待ってください」

「ええ、助かるわ」

電話を切り少し経つと扉が開いた。

「なんすか?」

「少し、部屋を確認させてもらいたいの。みんなにも協力してもらってるから心配しないで」

「わかったっす」

渡辺は茶畑の部屋に入って行った。俺は事件について考察を始める。

「状況からして、必ず犯人がいるはずなんだ。でも、どうやって犯人は密室を作り上げたんだ?東田の部屋は完全に鍵がかかっていたし…それに、紙の謎もわからない。一枚目の答えは『雨』に間違いないだろう。でも、二枚目がわからない。シュケディとアンタレスが、それぞれ山羊座と蠍座を構成する星というのは間違いない。それと、この『?』マークは何だ?関係ある……よな。この『?』はシュケディに係るのか、それともアンタレスに係るのか。前なのか、後ろなのか…」

!?

「そうか、真ん中か!確か……やっぱりか。『物は何』の答えはわかったが、おそらくもう一捻り必要だろな………」

俺が紙の謎について考えていると、渡辺が茶畑の部屋から出て来た。

「花月くん、茶畑くんの部屋を確認して来たわ。茶畑くん、私が扉を叩いた音なんて全く聞こえなかったらしいわ。田中さんと兵藤さんにも電話しなくちゃ。他の人の部屋も確認したら纏めて伝えるわ」

「はい!ありがとうございます。こっちももう少しなので頑張ります!」

渡辺は電話をしてから田中の部屋へ行った。

俺は、考察を再開する。

「渡辺さんは順調だな。扉を叩く音が聞こえなかったってことは、東田からSOSの電話が来た時も、俺たちが騒いでいたことに茶畑さんは気付かなかったってこともあるよな。でも、その後電話までしたのに気付かないなんてあるのか?本当は部屋にいなかったんじゃ…」

その時、俺はあることに気が付いた。

「…………そんな、馬鹿な。じゃあ、あの人の行動は…」

渡辺が田中の部屋から出て来た。

「あとは兵藤さんだけね。行ってくるわ」

渡辺は静香の部屋に電話をかけ、中へ入って行った。少しして、渡辺が広間へ戻って来た。

「花月くん、みんなの部屋の畳の配置を確認して来たわ。このメモを見て頂戴」

渡辺は紙を広げた。

「いい?まず、私たちの部屋は六畳の部屋よね?」

「はい、そうです」

「部屋を縦が3で、横が4の長方形の部屋に見立てるわ。上辺が横の4の部分とする。そして、畳の一畳を部屋と同じく、縦が1で、横が2と見るの。ここまでいいかしら?」

「はい。縦3×横4=12で、畳の一畳が縦1×横2=2

そして、12÷2=六畳、ということですよね?」

「その通りよ。六畳の部屋では、畳の配置は全部で11通りあるの」

「流石、弁護士ですね」

「まぁ、中学生くらいの問題だわ。そして、みんなの部屋を確認した結果、紙に書いてある通りになったわ。ややこしいから部屋を十二分割して、数字を振って見るわね。一番上、つまり一段目の左から1.2.3.4。二段目の左から5.6.7.8。そして、三段目の左から9.10.11.12として理解してね。

茶畑くんの部屋は、上辺を横の4にして見ると、全て横に敷き詰めてあったわ。つまり、1.2で横に一畳、3.4で横に一畳。二段目も三段目も全く同じだったわ。

田中さんの部屋は、1.2で横に一畳、3.4で横に一畳。ここまでは茶畑くんと同じね。でも、そこからは全て縦に敷き詰めてあったわ。つまり、5.9で縦に一畳。同じように、6.10で一畳。7.11で一畳。最後に8.12で一畳という具合よ。ついて来ているかしら?」

「何とかですね」

「あなたならわかるはずよ。続けるわ。次は兵藤さんの部屋ね。一段目は畳を横にして二枚が敷き詰めてあった、つまり、1.2で一畳、3.4で一畳ということね。そして、5と9で縦に一畳。6.7で横に一畳。8.12で縦に一畳。最後に10と11で横に一畳という形で敷き詰めてあったわ」

「田中さんの部屋と俺の部屋は上下逆さまという感じですよ」

「そうなのね。私の部屋は、一段目については茶畑くんと田中さんと兵藤さんの部屋と一緒で、横に二枚敷き詰めてあるわ。そして、5.9で縦に一畳。6.10で縦に一畳。そして、7.8で横に一畳。11.12で横に一畳という配置よ」

「東田の部屋は、どんなでしたっけ?」

「大丈夫よ。一応確認したから」

「仕事早いですね。助かります」

「えっと、東田くんの部屋は、1.5で縦に一畳。2.3で横に一畳。6.7で横に一畳。4.8で縦に一畳。三段目は横に敷き詰めてあるわ」

「あの、気になっていたんですけど、部屋の隅に書いてある『丸』みたいなマークは何ですか?」

「あ、そうね。言うのを忘れていたわ。コンセントの位置よ。茶畑くんの部屋は、5の位置にコンセントがあったわ。田中さんの部屋は9ね。兵藤さんの部屋は1で、私の部屋は8の位置にあったわ。そして、東田くんの部屋は12の位置にコンセントがあったわ」

「渡辺さん、本当にありがとうございました!」

「何かわかったのかしら?」

「はい、渡辺さんのおかげで犯人の正体が見えました。残るは、脱出の謎だけです」

「え!?本当なの、それは?」

「はい。脱出の謎が解け次第、犯人をあぶり出します」

ピーンポーンパーンポーン

「皆さま、昼食の用意ができましたので広間ヘお集まりください。最後の食事をお楽しみください」放送は止まった。

「最後の食事ってどういうことかしら?」

「多分、もうこれ以上長引かせられないということでしょう」

ガシャ

突然、壁が動き、その中からロボットが現れた。

「え?何だこれ?」

「ロボットが食事を運んでいるの?」

「そうみたいですね。ロボットが出てきた場所から出られるかもしれません、様子を見ましょう」

しかし、その望みは直ぐに打ち砕かれた。ロボットが食事を運び終えると壁に入って行ったが、ロボットは急に消えた。渡辺が壁の近くまで行き、そこを覗くと床が消えており、深い闇が続いている。

「花月くん、ここは無理ね。おそらく、穴になっているわ」

「そうですか。やはり謎を解いて出るしか無さそうですね」

壁が元に戻った。そうこうしているうちに、他のメンバーも広間へ集まった。

「あれ、またいつの間に食事が運ばれてるっすね」

「ロボットが運んできたのよ」

「え?どういうことっすか?」

「突然、そこの壁が動いてその中からロボットが食事を運んで来たの」

「そうだったんすね」

「え、ま、待ってください。渡辺さん、ということはそこから出られたんじゃ…」

「田中さん、残念だけどそれは無理だったわ。その先は深い穴になっていたのよ」

「そ、そんな…私たちは出られないのか」

「田中さん、諦めちゃダメですよ。だよね?京介くん」静香が励ます。

「ああ、そうだ。俺たちは絶対にここから脱出するんだ!そのために皆さんに聞きたいことがあるんです」

「京介くん、何?私は全力で協力するよ」

「ありがとう。皆さん、恐らく俺からの質問は最後になると思います」俺は深呼吸をし、全員の顔を見て質問する。

「皆さんに聞きたいのは、東田からSOSの電話があって皆さんをお呼びした時のことです。その時、何をしていたか教えて頂きたいんです」

「俺っちは言ったけど、覚えてないよ」

「そうでしたね…田中さんは?」

「私は部屋で横になっていたよ」

「静香さんは?」

「私も部屋にいたよ。携帯を見てたの。インターネットは使えなかったけど、写真を見てて」

「ありがとう。渡辺さんは?」

「私も部屋にいたわ。花月くんから電話があって急いで来たのよ」

「そうですか…」

その時、広間の古時計が鳴った。

「え!?皆さん見てください」田中が古時計を指す。

古時計を見ると、短針が1時のところから巻き戻って行く。長針が回り続け、短針が3時のところに戻った時、時計が再び正常に動き出した。

「ビックリしたわね。何だったのかしら?」

「そうっすね。あれ?花月くん、どうかした?」

「………………」俺は目を見開き、一点を見つめている。

「京介くん?どうしたの?」

「花月くん、何かわかったのかしら?」

「バラバラだったパーツが集まりました…」

「え?」全員が俺の方を見る。

「謎解きを始めましょうか!」






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