疑惑の眼差し
「おい、東田!どうしたんだ!東田!」俺は東田の部屋の扉を激しく叩く。
「どうしたの京介くん?」静香が部屋から出てきた。
「東田の身に何かあったらしい、電話があったんだ。東田!何があったんだ!?」俺は東田の部屋の扉を叩き続ける。しかし、扉は鍵がかかっており、東田からの返事もない。
「クソ!何があったんだ…。静香さん、俺は他の人たちを呼ぶから静香さんは東田を呼び続けて」俺は静香に任せ、他の人を電話で呼ぶ。
「東田さん、東田さん、どうしたんですか!?返事をして下さい」
ルルルルルル、ルルルルルル
「はい、渡辺です」
「渡辺さんですか?花月です。大変なことが起きました。後でお話しするので、今すぐ広間に来てください」
「わかったわ」
渡辺との電話を切り、他の二人も呼ぶ。
ルルルルルル、ルルルルルル
「はい、田中です」
「田中さんですか?花月です」
「か、花月くんとは話してはいけないと東田くんに言われているんだ。ごめんよ」
「そんなことどうでもいいんです!大変なことが起こったので急いで広間に来てください!」
「た、大変なことってなんだい?」
「後で話します、すぐに来てください」田中との電話を切ると、渡辺がやって来た。
「花月くん、何があったの!?」
「渡辺さん!東田が誰かに襲われたかもしれないんです!」
「なんですって!?本当なの?」
「わかりません。ですが、先ほど東田からSOSの電話がかかって来たんです!」
「東田くんは、どこに?」
「自分の部屋です!東田が言っていました。今は静香さんが呼びかけを続けてくれています。俺は茶畑さんに電話します」俺が茶畑に電話をかけようとした時、田中が急いでやって来た。
「か、花月くん何があったんだ!?」
「すみません、後で話すので少し待ってください」
俺は茶畑に電話をした。
ルルルルルル、ルルルルルル、ルルルルルル、ルルルルルル、ルルルルルル
茶畑は電話に出ない。
「どういうことだ?なんで茶畑さんは電話に出ないんだ…」
「もしかして、東田くんは茶畑くんと組んで君に嫌がらせをしているのかもしれないよ」
「どういうことですか、田中さん?」
「いや、東田くんは君を目の敵にしていたし、もしかしたら、からかっているのかも」
「でも、あの電話は異常でした。万が一にも何かあったのかもしれないじゃないですか」
「田中さんのいう通りかもしれないわ。あなたはからかわれたのかもしれないわよ」
「渡辺さんまで…」
「花月くん、賢いあなたならわかるはずよ。もし、本当に東田くんが襲われていたのだとしたら、今この瞬間も犯人は東田くんの部屋にいるはずよ。でも、茶畑くん以外はここにいるわ」
「じゃ、じゃあ、茶畑くんが犯人なんじゃ…!」
「田中さん、残念ながら俺は奴にからかわれたのかもしれないです…」
「どういうこと、京介くん?茶畑さんが犯人の可能性だってあるんじゃないの?」
「ほぼないと思うよ。茶畑さんが犯人だとしたらどうやって東田の部屋に侵入したんだ?鍵は指紋認証装置の付いたキーホルダーに付いていたし、部屋にいる時は東田が持っていたはずだよね?」
「東田さんが茶畑さんを招いたんじゃ?」
「多分ないよ。東田が茶畑さんを招く理由はないし、謎について話すなら田中さんも呼ぶはずだ」
「じゃあ、東田さんはこの部屋で私たちを笑ってるの?」
「…………」
「京介くん…?」
「気になるんだ…」
「え?」
「これが奴の自作自演だろうが本当に何かあったのか、どちらにしろ気になることがある…」
「何かしら、教えてもらえる?私たちも何か役に立てるかもしれないわ」
「渡辺さん、ありがとうございます。東田から電話があった時、俺はあいつにどこにいるか尋ねました。あいつは、何かに気付いて自分の部屋だって言ったんです」
「自分の部屋だと示す何かがあったっていうこと?」
「そうだとしか考えられません。田中さん、あなたは東田の部屋に行きましたよね?」
「あ、ああ、行ったよ」
「その時、あいつの部屋に変わったものはありませんでしたか?俺の予想だと、この館の部屋はどの部屋もまったく同じ構造だと思うんです」
「確かにまったく同じ構造だった。壁の色も畳もまったく同じだったよ」
「じゃあ、東田さんはどうやって自分の部屋だと判断したの?」
「まだ、わからない…」
その時、広間の古時計が鳴った。
ボーンボーンボーン
「もう、十二時なのね」渡辺が口ずさむ。
「もう遅いし、明日にしませんか?東田くんのイタズラかもしれないですし、明日になって笑いながら出てくるかもしれない」
「そうですね…今日はいろいろあり過ぎました。それぞれの部屋へ戻りましょう」
俺たちは解散することとなり、それぞれの部屋へと戻った。