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一触即発

「みなさん、また紙を見つけましたよ」田中の声が聞こえた。

「どこにあったんですか?」

「椅子を調べていたら、この紙が挟まっていたのを見つけたんですよ」

「なんて書いてあるの?見せてくださる?」再び渡辺が手紙を受け取り、紙に書いてあることを読み上げる。

「シュケディ ? アンタレス 物は何」

「なんかの呪文すかね?」

「茶畑くん、あなたを馬鹿にするつもりはないけれど、学校とかしっかり行っていたの?」

「行ってたっすよ。俺、学校では結構優秀で、成績も3は取ってたし、クラスでは上から数えた方が早かったっすからね」自慢気に言う。それを聞き、そこにいるみなはそれ以上言及することはしなかった。

「ま、まぁ、それはいいわ。ここに書いてある、アンタレスは星の名前ね」

「流石、弁護士っすね」

「知ってても不思議ではないことよ…」渡辺は苦笑しながら言う。

「と、言うことはこのシュケディも星かもしれないわね。私は聞いたことないわ。誰か知ってる?」

すると、一人で調べていた東田が口を出してきた。

「シュケディは山羊座を構成する星座だ。そんなのもわからないのか」

「東田くん、あなた一言多いのよ。なんで、そんな…」渡辺がそう言いかけると、遮るように東田が言う。

「因みにアンタレスは蠍座を構成する星だ」

「あら、あなた詳しいのね」

「まぁな」

「あなたも協力してくれれば、もっと早く出られるかもしれないのだけど」

「俺は自分が助かればいい。お前らがここでのたれ死のうが関係ない」

「じゃあ、なんで教えたんだ?自分だけが助かればいいなら、わざわざ言う必要はないだろ。お前も自分だけじゃわからないからじゃないのか?」俺は思ったことを東田に言った。

「なんだと?折角教えてやったのに酷い言い様だな。いいぜ、お前がその気ならこっちもそれ相応の対応をするぜ」

「どういうことだよ?」

「はっきり言うぜ。俺は、この問題もさっきの問題も既に解いている」

全員が驚きの表情を見せる。

「こ、答えは何なんですか?」田中が催促する。

「は?教えるわけないだろ」

「そ、そんな、いくらなんでも酷すぎるぞ」

「おい、おっさん。そんなこと言っていいのか?今の段階で解ってるのは俺だけだ。あんた、全員が集まる前に言ってたよな?子供が病気で早く帰らないといけないって」

「そ、そうですが。それが何か?」

「わかんねーかなー?俺に従えば答えを教えてやるって言ってんだよ、この先もな。あんただけじゃない。他の人たちも早く出たいんだろ?」

「ほ、本当に教えてくれるのか?」

「ああ、勿論だ」

「わ、私はどうすれば…」

「他の奴らもよく聞け、お前らの脱出は俺が保証してやる。条件として、そこの調子に乗ったガキを仲間ハズレにしろ。情報もそいつには渡すな」

「し、しかし、花月くん…」

「早くしろ。考える時間はあと十秒だ。そいつを仲間はずれにして俺について来るか、お前らの足りない頭で考えるか、二つに一つだけ。十、九…」東田がカウントダウンを始めた。

「か、花月くんごめんよ」田中は俺に頭を下げ、東田の方へ行く。

「お、俺っちも東田くんについて行くよ。早くこんな所から出たいし…」茶畑も東田側についたようだ。

「渡辺さんよー、あんたはどうするんだ?あんたも出たいだろ?」

「東田くん、私も答えを知って早くここから出たいわ」

「はははは、決まりだ。花月、残念だったな」東田は笑いながら俺を見る。

「東田くん、話は最後まで聞きなさい。私は弁護士よ。私は私の良心に従うわ」

「何が言いたい?」

「確かに、あなたはその謎を解いたかもしれない。でも、あなたのような人について行って自分たちだけが出られたって、私には後ろめたさしかないわ」

「つまり、あんたは花月につくってことか?」

「ええ、そうよ。私は花月くんと協力してここを出るわ!」

「渡辺さん…」

「私もです。私も京介くんを信じるわ」静香も俺についてきてくれるらしい。

「勝手にしろ!後悔するぜ。おい、あんたら答えを教えてやるから俺の部屋へ来い」東田は田中と茶畑を連れて、自分が出てきた部屋へ入っていった。

「扉は開かなかったんじゃないの?」静香は驚いている。

「もしかしたら、さっき一人で探している時に見つけたのかも」

「じゃあ、私たちの鍵もどこかにあるのかもしれないんだね?」

「そうかもしれない。さっき東田が探してた場所を探せばあると思う」

東田が探していた棚にある引き出しを開けると、そこにはまったく同じ鍵が10本入っていた。鍵は指紋認証装置に取り付けられており、それぞれの部屋の鍵は自分しか取れないようになっていた。

「鍵があるわ。数字が書いてあるわね、部屋番号かしら?」

「じゃあ、10本あるのはここにいない人の分も入ってるってことかな?」

「うん、静香さんの言う通りだね。最初からこの引き出しの中に10本用意してあったんだと思う」

「取り敢えず、自分の鍵だけは取っておきましょう」三人は自分の部屋の鍵を取り、引き出しを閉めた。






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