始まりの合図
扉を開けると、そこには予想もしていなかった光景が広がっていた。扉の先は大広間みたいになっており、俺の他に5人も人がいたのだ。
「お、また出て来た」若い茶髪の男が言う。
「あなたも抜け出して来たのね」頭の良さそうな女性が話しかけて来た。
「ここは?」俺が戸惑っていると、
「それは我々にもわからない」スーツを着た男性が言った。
「そうですか…」
「まぁ、そう落ち込まないで。そうだ、まずは自己紹介しましょう」頭の良さそうな女性が取りまとめる。
「そうっすねー。じゃ、まずは俺からでいいすか?」若い茶髪の男だ。
「ええ、いいわよ」
「俺っちは茶畑徹っす。トラック運転手してるっす」
喋り方が気にくわない…
「次は私でいいかしら。私は渡辺涼子よ。弁護士をしてるわ」
やはり頭がいい人だった。
「次は俺でいいか。俺は東田健吾、大学生だ。どうしてこんなことになってるかわからないが、俺はここから出る。邪魔するなよ」
協調性のないやつだ。
「私は電機メーカーで営業をしております、田中と申します」
スーツを着た男性で、かなり礼儀正しい人だ。
「私は兵藤静香と言います。私も大学生です」
「次は君だね」渡辺が催促する。
「はい。俺は花月京介といいます。俺も都内の大学に通う大学生です」
一通りの自己紹介が終わり、若干の沈黙が続くと突然、館内放送が聞こえてきた。
ピーンポーンパーンポーン
「みなさんお揃いになられましたね。これより、ゲームを開始したいと思います」
「ゲームだって!?」みんなの声が重なる。
「まずは館内の説明をしましょう。両側をご覧ください。この大広間にはあなた方が出てきた扉があります。部屋は再びそこをお使い下さい」
「おい、扉は左右に5枚ずつあるぞ」
東田の言う通りだ。10枚あるってことはあと4人いるはずだ。
「この館はこの大広間とあなた方のいた部屋からなっています」放送は一方的に進む。
「おい、無視かよ!」
「食事はこちらで出させて頂きますのでご心配なく。因みに外との通信手段はありません。ここは圏外となりますので携帯電話も使用できません。出られるかはあなた方次第ということになりますね。また、現段階で参加者の募集を締め切っています。扉一枚につき1人の参加者ですから、もし人数と扉の数が一致していないようでしたら、その方々は部屋から出られない仕様になっております。しかしながら、その方々もあなた方がゲームをクリアすれば解放されるでしょう」
「ふざけるな!ゲームなんてどうでもいいからここから出せ」
この時点で東田の傲慢さにはみんな苛立ちを見せていた。
「なぁ、落ち着けよ」そう言った俺を東田は睨みつけた。一瞬怯んだが俺は続けた。
「わからないのか?これは録音した音声を再生してるだけなんだよ。文句を言っても答えてはくれない」
「あ?なんでそんなことわかんだよ?」
「花月君の言う通りよ。こちらの問いかけに反応しなかったでしょ」渡辺さんが助け舟に入ってくれた。
「それは無視したんだろ」
「いや、それだけじゃない。今の放送で、もし人数と扉の数が一致しないようだったら、って言ってただろ。つまり、館の主はここに何人集まるかわからなかったんだ。あの部屋から脱出できるかできないかは個人の能力次第だからな。主が状況を把握してないって言うのも不自然だ。だとしたら、この放送は録音の可能性が高い」
「チッ」東田が舌打ちをする。
「それではゲームを始めます」再び放送が流れ、ゲームスタートの合図がされた。