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吾輩はヤクザな猫である。

作者: 夏眼蒼積

我輩は猫である。名前はノーネームだ。生まれてきたときのことはよく覚えていない。だが、これだけは覚えている。とても明るくて狭い檻の中で人というものから多数の視線を浴びていた。

そんなときだった。御主人様に引き取られたのは。

我輩は猫であるので、人語等を操ることは出来ない。犬の言葉は理解できるやつも居るらしいが、まるで文法からして違う。お陰に周波数も違うので聞き取るのに困難を生ずる。

ご主人様は、仕事が忙しいらしくて、最初は絡んでくれたのだが、我輩のために休暇を取ることは出来なかったのである。

ご主人様には子供が居ない。お陰に聖というところか。

人生の伴侶となるものは居ないのだ。彼には子供や妻がいないので、「俺には世間体とか慣習とか関係ねぇ。」と思っているのだと薄々感じている。

父や母の愛情も感じなかった我輩も、一生を聖で通すつもりだ。また、父や母と同じように甘い夜を迎えても、きっとご主人様は悲しむに違いない。だから、我輩も孤独を貫く。

家にやって来て今日で一週間だ。近くで猫の鳴き声がする。

ふと、外を見ると猫同士が争いあっていた。とてもうるさいので、仲介に入ろうと外に出た。

「おい。我輩の家で喧嘩は止めてくれないか?」

「んだてめぇよぉ!俺ら猫又組に喧嘩を売るというのか?」

「礼儀知らずなやつだな。猫六会の若頭の猫吉が成敗してやる。」我輩はそこまで強い訳じゃないが、牢の中で囚人、囚猫達と喧嘩していたからそこまで弱くはない。

「おう!我輩と勝負してくれ。」

「行くぞ!猫又流キック!」

「猫六拳❗」

見事にタイミングが二人とも一致した。

だから我輩は、猛スピードで前進してそれをかわした。

「うわあっ。痛い!目に入ったらどうするんや。」

「うわあっ。股間がぁ。股間がぁ。うぎゃあー。」

暫しあって。

「一体何ですか?我輩の庭で暴れるなんて。」

「申し訳ねぇ。実は、猫又組と猫六会は抗争状態でな。シマ巡った争いでな。実はもう懲りた。この家からこっち側を猫六会が。」

「猫又組はこの家から向こう側を。統治するんですか?」

「そうしようかと思ってるんだが。いかがするか。」

「そうしましょう。ところであなたの名字は何ですか?」

「いや、それがこの文字が読めなくて。」

「お前、この字は簡単だぜ。夢野だよ。」

「すみません。学がないもんで。」

「毛並みがええのぉ。もしかしてお前んちのボスは、ブルジョアジーか?」

「ブル?ブルブルッ?」

「ハハハハッ、面白いな。良いかい。ブルジョアジーっていうのは資産家のことだよ。」猫吉が説明してくれた。

「それでな。お前に頼みがある。猫又組に入ってくれ。俺は、大和田猫又。猫又組の組長をしている。」

「ダメですよ。猫六会がメンバーにいれる逸材なんですから。」

「いやですよ。どちらも。良い雰囲気しませんし。」

「猫又組に入ってくれたら。特別顧問として待遇しますから。それにもう争いもおこしません。」

「やはり、猫六会があなたをスカウトするしかありませんよ。」

「分かった。猫吉さん。俺、大和田猫又は本日をもって猫六会に加入することにする。いや、加入させてください。」

「それは良い考えですね。抗争も起こらないし。逸材な夢野さんも得られるし。ところで夢野さん。名前は?」

「いや、まだ決まっておりませんが。」

「じゃあ、神猫斎で良いですか?」

「おお良いですねぇ。その名前。」


先日、突如この地域の猫又組と猫六会の抗争を止め、猫又組の猫六会移籍を成し遂げ、自身は猫又組特別顧問兼猫六会元帥の座についた謎の新猫。夢野神猫斎。彼の気になる動向はいかがするのでしょうか。以上、猫界の臨時ニュースをお送りいたしました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのとしていて、いいですねえ。 憎めないキャラの面々が目に浮かぶようです。
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