序章:始まりの合図
幾度になく流れた血
誰も望まなかった結末
…燃え盛る 夢のような一夜……
(どうして君はまた先に居なくなる?)
(何故貴方は必死に私の名前を叫び続ける?)
(また寂しさだけが残るのはもう嫌だ)
(思い出したときにすぐ消えるそんな儚い思い出も嫌…)
でもまた何度でも巡り会ってしまう・・・・・・
見つめたいだけなのに
抱きしめたいだけなのに
何故許されない……?
…もう一度……
…たった一度だけでも…
…許されるなら……
[もう 結末をつけよう]
序章:始まりの合図
ガタン…ゴトン……
電車の揺れが車内に響く…アナウンスから、行き先が放送された。
『ザー……次は、葎衛〜葎衛…降り口右側―――』
「お姉ちゃーん…あとどれくらい〜?」
アナウンサーの声を遮る様に、
肩辺りまで伸びた橙色の髪の少女…妹の真名は、足を上下に動かしながら説いた。
「えっーと…次……ね。」
車内の行き先表を見て問いに答える、少女の姉である私。
朝早くから出てから、ずっと乗りっぱなしのせいで少し腰が痛かった。
「はぁ〜やっとかぁ〜…楽しみだね。」
わざとらしく息をはいて、真名は窓の外に目を向けた。
朝は田舎で緑が多かったところも、徐々に高い建物などが見え始めていた。
少しずつ見え始めてきた都会の様子に緊張を覚える。
「…早く姉さんの“アレ”……秘密が解ければいいね。」
突如そう零し、何処か口調が静かな真名に少し違和感を覚えた。
驚いたが、表に出さず少し瞬きして頷き、
「…そうね……」
曖昧な返事をして、ゆっくり腰を屈めた。
すると、“アレ”は『リン』と静かな音を響かせて、首元の服から宙に揺れる。
「ねぇ、これから行く街ってどういう所なの?」
不意に真名は明るい口調で、私に笑顔を向けた。
「………えっと、とても綺麗な街らしいけれど…」
不意をつかれたせいか作り笑いを浮かべると、気を遣うように真名は明るく笑みを浮かべた。
「へぇ〜…ぁ、まず着いたら、公園行きたいなぁ!あの有名な公園だよね!?早く出られるように用意しよ〜っと!」
鼻歌交じりで後ろの荷物に手をかける。家を出る前に、真名が鞄に入れたのはハンカチとティッシュ・・・それに、MDカセットだ。
「真名・・・いくら他に乗っている人が居ないと言っても・・・少し静かにしようね?」
朝に乗っていた、大勢の乗客は一人残らず居なかった。「別にいいじゃん〜居ないんだしぃ。」と頬を膨らませて、ちゃんと座りなおした。
先ほどの行動がまるで嘘のような・・・小さな子供の様だった。
「それに〜お姉ちゃんが昨日は『新幹線で行くから、ゆっくり寝ていていいよ』って言ったのに、今朝になってから『早く起きて、電車で行くことになったから。』って叩き起こしたんじゃない〜」
さらに不機嫌になる真名。今朝になってから今日通る新幹線に【珠之波行き】がなかったのに気付いたので、慌てて電車を選んだのだった。
そのために、真名を必死で叩き起こしたのだ。
けれど、叩き起こしたといっても、引っ叩いて起こしたわけではない。
まぁ…“多少”は手を使ったが…
「お姉ちゃん?」
不意に真名から呼ばれて、我に返る。
「ぁ…何?」
「もう〜ちゃんと起きてる?昨日、遅くまで読書したりとか…」
そう言いながら、目の前で手を軽く振る。
「大丈夫よ。ちょっとボーっとしちゃっただけだもの」
微笑んで見せると、「ホントに?」と疑った眼差しで見つめられた。
「本当よ」と言うと、「無理しないでよ?」と言ってそれ以上聞かれなかった。
私は、そっと電車の天井を仰いだ。
これからいく街で、きっと何かが分かる気がする。
それが何かは分からない。
けれど、必ず…
〔アナタヲ ミツケテミセル〕
『ザー…次は、珠之波市〜珠之波市…降り口左側―――』
「さ、行こうか。」
私は自分のバックを背中に背負った。
「うん!」
真名も元気に立ち、並んで街に到着した。
物語の始まりは此処から――…
前に一度書いていましたが、続かない為に勝手に消してしまいました。
今回のは、前作より編集をして出しております。
どうぞ、最後まで楽しんでいってください。