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三日月が夜空に輝く頃  作者: オルソー
~序章~『妖霊と少年の秘密』
9/18

『真実の中の嘘』

 「え? そ、そうなのか?」


 俺はてっきり完全に自分の意思で妖霊化したり解除したりできる物だと思っていたが。


「ボクはこう見えて好戦的なんでね。しばらく妖霊化してるうちに勝手がわかってきてさ。ある程度だけどコントロールはできるよ。だけどさっき君も見ただろ? 何百年も戦ってすらないと力のみが暴走して人格さえ崩壊してしまう。君が背負ってる誰かさんのようにね」


 ちらっと俺が背負う三日月を見る鎗水。

 確かにあの時の三日月は異常だった。パワーやスピードも素人の俺の目でも格段に上がっていたが、その力を完全に制御できてない感じだった。


「だからね、ボク達妖霊はできたら妖霊化したくないんだよね」


 まぁ、そういう気持ちには個体差や状況にもよるけどね。と鎗水は付け加えた。

 いや、あんた登場したときから能力全開にしてたよね。それにどっからどう見ても好戦的だよ。

 確かに見た目は背も低くて、可愛らしい顔付きしてるけどさ。


「さ、二人が楽しくしゃべってる間に家についたよ」


 ん? 恵がなんか妙な言い方をしてきたな。

 確かについさっきまで殺し合いをしていた敵と仲良く(?)しゃべるもんでも無いと思うけど、そんな棘のある言い方をしなくてもなぁ。


「なぁ、恵。なんか怒ってる?」


 普段こいつは大人しく素行も全然悪くないので恐る恐る聞いてみると


「……別に」


「あ、おい! ……ったく、なんだってんだよ」


 一人でさっさと俺の家に入ってしまった。なんか悪いことしたかな俺。


「くくく……。君もだいぶ苦労してるんだね。いや、君と言うよりあの子かな」


「ん? なにがだよ?」


「いや、なんでもないよ」


 そう言うと怪しげな微笑みを残し恵の後に続いて鎗水も家へと入っていった。


「……おかしなやつらだよな」


 ここに突っ立っていても仕方がないのでまだ目を覚まさない三日月を背負いながら俺も自宅へと入った。

 もう外の光りは月明かりと僅かな街灯だけで静まり返っていた。





「……ふぅ。なんか疲れたな」


 空き部屋のベットに三日月を寝かせ居間へ戻り、机の前に腰を下ろす。俺の隣には恵。机を挟んで鎗水という配置になった。


「僕はよくわからないけど、あの屋上を見る限りすごい戦いだったんだろうね。三日月もあれだけ眠ってるんだし……」


「ほとんど働いてない俺がこんだけ疲れてるんだ。当事者達はすごい疲労なんだろうな」


 と、俺は向かいの席で船を漕いでいる鎗水を見ながら言った。


「よくこの状況で寝れるよね……」


「妖霊だろうが人間だろうが眠気には勝てないってことだな」


 二人、顔を見合わせ笑うのだった。





 鎗水杏佳は夢を見ていた。

 史上最悪の妖霊が自分達の同種を殺し続けていたときのことを。いつか必ず復讐してやる。そう思って長い年月をかけ自分を仕上げた。

 だが、負けた。しかし不思議と悔いは残っていなかった。でも、もしもう一度力を交えるときがあるなら絶対に勝ってやろうと言う意志が芽生えるたのだった。

 それと同時にあの時、敵なのに体を張って自分を守ってくれたあの少年のことが気になっていた。





 朝、杏佳は起きると不思議な香りと光景に驚いた。光景は頭が冴えてくるとあの少年の家だったなと思い出した。しかしこの香りはなんだろう? 良い香りがする。

 優しい香りだ。杏佳は半ば無意識にその香りのする方、キッチンへと足を運んだ。


「ん? 早いな、もう起きたのか?」


 そこには昨夜の少年が朝食を作っているところだった。横には鍋が置いてある。

 きっと、味噌汁か何かを作ってるのだろう。さっきの香りの原因はこれだった。


「……朝食は君が作るのか?」


 別にこんなことが聞きたかった訳じゃない。なんとなく話題がほしかったのだ。


「ん? あぁ。家は両親がいっつも居ないからさ。 だから、自然とある程度はできるようになるんだよ」


「へぇ……。……あいつは?」


「へ? あいつ? あ、三日月のことか?」


 黙って頷く。


「あいつなー。ああ見えてすごい朝が苦手らしいんだ。だからけっこうギリギリまで寝かしてる」


 あいつはあいつでなんとも手のかかるやつだった。

 他にも他愛もない話をしていたが邦弘零夜はなんとも器用なやつで、ずっと料理をしながらしっかり返答してくるのだった。





「……ん」


 カーテンの僅かな隙間から差し込む日光によって起き始める恵。 うっすら目を開けると天井が広がっていた。しかし……、自分の家ではない。


「……んん??」


 徐々に意識が覚醒し始めてきてようやくわかった。

 ……昨夜、あれから家に帰った記憶がない。


「も、もしかして……ここは……!」


 勢い良く飛び上がり周りを見回す。もう一度、確認のためだけど、自分の家ではない。

 でも、全く見知らない所でもなかった。


(……あ、あれは)


 見つけたのはもう10年近く前に零夜と一緒に木の枝を編んで作った冠。ここは零夜の部屋だ。と、ここまで来てようやく気付く恵だった。


「って! やばいんじゃないのこれ!?」


 夜、寝ているときに無意識で脱いだのだろう上着すら着ずに急いで部屋から飛び出し薄い肌着のまま部屋から飛び出す恵だった。




「れ、零夜!? あの、僕泊まっちゃった!?」


 ばん! と襖を開けると食卓でひとり黙々とご飯を食べる零夜がいた。


「あ、恵……っておう!?」


 なぜか零夜がすごく驚いていた。その後、漫画みたいにわかりやすく挙動不審になりだした。


「ど、どうしたの……?」


 そしていきなり零夜は変な声を出してむせだした。何か僕におかしなとこでもあったのだろうか?


「え、いや、そのえっとだな……」


 妙に口ごもる零夜。しかもさっきから僕の方すら見ないし……。やっぱりおかしいとこがあるのだろう。変に寝癖が付いているのだろうかな。


「あ、あの……。どっか僕におかしなところある? 直すから教えてほしいんだけど」


「お、おかしなところと言うかな。ありえないものが……」


 そう言うと零夜の目線が一瞬、ある特定の場所に定められる。つられて見ると……胸だった。


「……」


「……」


 両者沈黙。そこには明らかに女性特有のある部分があった。


「あの。お、お前……。女だった……のか?」

展開が遅くてすいません……。それに

不定期更新でご迷惑をかけてすいません……。

謝ってばかり……。

さて、次回はあの二人が久しぶりに登場します!

ご指摘、ご感想、アドバイスなどよろしくお願いします!

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