『現れた刺客』
いつも通り退屈な授業が終わり、放課後。そのまま帰ろうとしていたら見覚えのある一人の生徒が駆け寄ってきた。
「やぁ、零夜。今帰り?」
銀髪を軽く揺らしながら言ってきたのは恵だった。昼休み見た恵の姿は色々な意味で印象的だったが俺の無事を確認できたためか、いつもの恵に戻っていた。
「あぁ。お前も今から帰りか? 珍しいな」
俺が珍しいと思ったのはいつも恵は人柄が良く、優しいのでなんかの役員などをやらされたり、手伝わされたりするから帰りは別々な時が多い。
まぁ、それはこいつの長所でもあるんだけど。
「あはは。今期は何も役員とかに入ってないからね。さ、帰ろう、帰ろう」
立ち止まる俺に催促し恵は靴を履き替えていた。今まで通りの普通の時間が流れていた。
「今日の数学。あれ解けるやついるのか?」
「数学っていうと、あの応用問題の?」
「それそれ。あれ、理工学系大学の問題だってよ」
一応、文理選択で俺は文系を選んだ。理由は理科とか数学とか理屈っぽいのが苦手だから。自分で言うのもなんだが、短絡的。
「そーなんだ。でも、あれならできたけど……」
「……。」
なんて、他愛もない会話をしながら俺と恵は歩いていた。こいつ、やっぱり頭良いよな。
そして俺の家に近づいた時、俺はあることに気づき、また恵は違うあることに気づいた。
「な、なんなのこれ……」
「……あ、あいつかぁ」
見事に庭がめちゃくちゃに荒らされていた。具体的には庭の地面に昨夜のような斬撃跡が多数見られた。
しかしはそれはよく見ると浅かったり深かったり、短かったり、長かったりとまちまちだった。
「あいつ? 零夜は誰の仕業かわかるの?」
……しまった。三日月のことはまだ恵どころか誰にも言ってなかった。
でも、実のところ恵は妖霊の存在を知っている。いずれ話そうと思っていたからちょうど良かった。
「……とりあえず、家に入ってくれ。あと、ひとつ言っておくとこれの犯人は妖霊だ」
少し苦笑い気味だった恵も妖霊と言う言葉に多少なりとも反応し、気を引き締めていた。
「た、ただいまー……」
なぜ自宅なのにこそこそと裏口から入らなければならないのかと思ったが玄関は粉砕され、瓦礫の山が作られていたので使い物にならないので仕方がない。
俺の後に付いて恵もやって来る。そして居間の方に行くと三日月が丸机に置いてあるカステラとにらめっこしていた。
「あ、あの子が妖霊……なの?」
俺もそうだが恵も実際に妖霊を見るのは初めてなのでその人間となんら変わらない姿に驚いていた。
「そうだな……。まぁ、昨日は俺を助けてくれたし味方だと……。思うんだけど……」
味方の家をこんなめちゃくちゃにするだろうか?
「ん? 主、そんなところでなにをしておる?」
カステラをいつの間にか片手に取り食べながら三日月がしゃべりかけてきた。
「お前こそ何してるんだよ! ってか、庭! 玄関! あれはなんだ!?」
三日月に近づき丸机をバンバンと叩く俺。
……いや、待て。
昨夜、こいつはまた騎士戦団と戦う可能性が高いと言っていた。俺の留守中にもしかしたら騎士戦団のやつらが来て戦ったとか……? それだと感謝しないと……。
「いや、何故か技が上手く出なくてな。練習してたのだ」
前言撤回。だめだこいつ。
「あのなぁ!! あんな技を何回もやったってのか!? むしろ良くご近所さんなんも言ってこなかったな!!」
今の世の中、ちょっとの音でトラブルになったりするってのに。
「あ、あのー……」
俺と三日月が騒いでいると後ろからおずおずと手を挙げた恵。あ、忘れてた。
「なんだ。そなたは」
少し威嚇っぽく睨んだ三日月を注意してやめさせ、恵を前にやった。
「こいつは俺の幼なじみで親友の弥富原恵だ。仲良くな」
「ど、どうも。弥富原恵です……。以後お見知りおきを……」
恵はけっこう人見知りするので初対面の相手には必要以上にかしこまってしまう。ま、三日月相手ならこれくらいがちょうど良いかもな。
「ほぅ。時に主」
「ん? なんだ?」
恵をジロジロ見てから三日月が話しかけてきた。
「最近ではおなごにでも『さとし』と言う名を付けるのか?」
など、おかしなことを言い出した。確かに女の子にさとしと名付けるのは少々珍しい気がする。
しかし
「なに言ってるんだ? 恵はれっきとした男だぞ?」
男にしては可愛らしい顔をしているが何年も一緒にいるんだ。そんなはずは無い。
「いや、しかしな……。ん?」
なおも食い下がる三日月。
そして三日月がなにかをまた言おうとした時、庭にひとりの小さい少女が立っているのを見つけた。どこから入ってきたのだろう、と思ったその瞬間。
「……っ!?」
「主!?」
「零夜!?」
なんとその少女の腕が長く、伸びてきた。そして俺の身体中に巻き付く。
すかさず三日月が斬ろうとするが見事に全てかわされた。そしてその腕は俺ごと少女の方へと戻っていく。
「あはは。強い霊気を感じると思ったらまさかあの三日月弥生が復活してたなんてね!」
その少女は、よほど好戦的な性格なのか三日月が刀を出した瞬間、目が輝いて興奮気味だった。
「……貴様は誰だ。主を離せ」
完全に戦闘体制に入った三日月が刀、皇を構え謎の少女に問う。しかし少女は
「んー、今はどっちも応じるのは無理かな? ここじゃボクが断然不利だし」
そう言うと少女はまたも腕を伸ばし屋根まで登り
「これは置き土産だよ~。とりあえず妖霊殺しの末裔は預かってくよ」
そういうと少女は俺を捕まえている腕と逆の腕を上げみるみるうちに細い、鋭い棒状の槍を成形した。それを三日月らに飛ばす。
「三日月! 恵!」
俺の叫びも空しく、俺は少女に捕らえられどこかに運ばれるのだった。
時間がありましたので二日連続投稿です!不定期で申し訳ありません……。
さて、第四話どうでしたか?いきなり現れいきなり零夜を連れ去る謎の女の子。明らかに人間業じゃないのを見せてくれましたね。
では、簡単ですが次回予告!
ついに本格的な戦闘が幕を開けます!次々と明らかになる真実も必見ですよ!
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