『秘密の会話』
彼女は俺へと完全に向き直る。それにより堂々と騎士戦団には背を向けることになる。そして俺に一歩近づいてしゃがみこんだ。一瞬ドキリとするぐらいの距離。
そして俺の足元に溜まっている血を刀を持っている逆の手で少量すくった。
「お、おい! そんなものでなにしようと……!」
もちろん見ず知らずの少女だったがあまりに奇怪な行動をするので制止しようとする。が、飛ばされた時の傷で少し動いただけで激痛が走り。
しかしこれはいつものことなので特別気にすること無かったが。まだ、血は体内から流れ続けている。
「なに、主はそこで大人しくしていろ。……まぁ、その血はどうしていようとしばらくは収まらんだろうが」
今更だが、主って俺のことだよな……? と、俺が考えていると少女は俺の血を持っている手を赤く光る刀に当てた。すると騎士戦団員の剣を弾き飛ばした時に刃が大きく削れていたのだろう。そこが一瞬にして元に戻り、彼女の手の平にあった血がなくなった。
それを確認すると少女は騎士戦団員らに向き直りこう言った。
「私は、『三日月 弥生』(みかづき やよい)。命が惜しくばさっさとここから立ち去れ」
威嚇にか、彼女、三日月 弥生は手に持った刀を振るった。風を裂く心地よい音が鳴った。
「お、恐れるな! 相手は妖霊だ! この武器さえあれば敵ではないぞ!」
「……よ、妖霊?」
この子が? と思ったがいきなり現れ、この強さ。例え本当の人間だとしても妖霊と間違われても仕方がない。しかし、明らかに俺の中で何か違和感が残る。
騎士戦団のリーダーが残りのメンバーに向かってなにかを叫ぶ。きっと騎士戦団員が持っている武器は対妖霊用武器。既存する武器は妖霊に全く効果がないため、妖霊を倒すためだけに創られた武器である。
しかし三日月はそれを知ってか知らずか、歩みを進めて行った。そして敵からわずか2~3メートルの距離まで近づいた。そこまで近づくと足を止める。騎士戦団員は全員、恐怖に顔を歪めているのがここからでもわかる。
「う、うわぁああ!」
三日月の悠然たる行動に恐れをなしたのか一人の騎士戦団員が襲い掛かった。思いっきり降り下ろされた剣は三日月の頭上で刀に止められ押し返された。戦い慣れした騎士戦団員をここまで冷静にさせなくする威圧感。
力の差は歴然としていた。
「ふ、その程度なら今度はこっちから行かせてもらおう。死んでくれるなよ!」
三日月が刀を真横に持ち一気に騎士戦団員に肉薄する。そして
「行くぞ、皇!」
そう叫び、刀を振り上げ……
「雪月花!!」
刀は振り抜かれ、粉塵が舞った。
少しの間、粉塵が晴れるまで時間がかかった。
今、ようやく視界が戻ってきたような感じだ。騎士戦団員五名は全員、倒れておりそのすぐ目の前に大きな大地の裂け目があった。さっきそこには無かったのだからこの妖霊と呼ばれた三日月の仕業に違いなかった。
「……もう一度言おう。命が惜しくばさっさとここから立ち去れ」
「ば、化け物だ!!」
ひどく、冷たい声。騎士戦団員を見下ろす眼光はやはり、人間のものではなかった。化け物と言い残し、騎士戦団員は我先にと逃げ出したのだった。
「……主、大丈夫か?」
「え、あ、うん。問題ない」
血はようやく止まりかけてきている。
常人ならとっくの前に大量失血であの世行きだっただろう。実は俺、邦広零夜は家系上、二つの特異体質を持っている。そのひとつが『ディバインド』。別名、永久出血体である。怪我をするとその部位、深さなど全く関係なく大量に体内から血が流れ出す。しかし、絶対に血は無くならない。
つまりどれだけ血が外に出ようが体の中で作られる血の量のが多いため無くならないらしい。これは邦広の力の副作用が原因だとされているが詳しいことはわかっていない。
「……とりあえず三日月さん、だっけ? 詳しい話を聞かせてよ」
敵対の意思は全く無さそうなので俺は先程のことをいろいろ聞くべく、三日月 弥生を家の中へと通した。
「……。」
「と、言うわけだが。主は信じれるのか?」
一通り、事情を聴いてみた結果、こういうことらしい。
この赤かかった髪の美少女、三日月 弥生は妖霊ということは事実だ。騎士戦団員らが言っていたときは謎の出現により妖霊と間違われてるだけかと思ったがあの雪月花と言う技を見せられているので信じるしかなかった。
ちなみに妖霊とうち、邦広家は昔からのこともあり切っても切れない縁にある。この三日月弥生は昔に力を持ちすぎたために邦広家の秘術により書物に封印されていたらしい。
そしてあの物置に保管されていた。
「君が妖霊って言うのは信じるよ。けどなぜ封印されていたのに急に出て来たんだ? 俺がぶっ飛ばされた拍子に秘術が解けたのか?」
俺は丸テーブルの向かい側に座っている三日月に疑問をぶつけてみた。確かあのときは俺が騎士戦団員に飛ばされ、物置に突っ込み、斬られる寸前に三日月は現れた。
と、考えていると
「あほぅ。そんなくらいであの邦広の秘術が解けるわけないだろ」
そんなことくらい……。俺が十数メートル飛ばされたのはそんなことで片付くんですか!?
「じゃあ、なんでだ?」
改めて聞いてみると三日月は一応包帯を巻いている俺の腕を指差した。 そして話始めた。
「私は血を操る妖霊。主が物置に突っ込んで来た時に私が封印されていた書物に主の血が付いたのだ。そして一時的にだが力を少し取り戻した私は秘術を破って主を助けたと言うわけだ」
なるほど。血に反応する妖霊か。それで、刀を直すときも俺の血を使ったのか。
「主に聞きたい。主は妖霊のことをどこくらいまで知っている?」
俺が黙っていると三日月は唐突に質問をして来た。
「……正直、妖霊が存在しているってのは知っていた。でも、実体が無いものとばかり思っていたから見るのは初めてだ」
妖霊は人間の死や憎しみなどにより発生するいわば、亡霊のような存在。
俺は家柄上、存在を知っていたが現代で妖霊を知っている者なんてそうそう居ないと昔、親父から聞いた。
「なるほどな。実はな、少々厄介なことになっているようなのだ。今のこの世は」
「……と、言うと?」
俺への質問もあれだけで充分だったらしく三日月は新たな議題を出し始めた。
「今日来た、騎士戦団の奴ら。これからしばらくは主と私に付きまとうかも知れん」
「え?」
思わず俺は聞き返していた。
「つ、付きまとうかもって具体的には……」
俺が質問すると間髪入れず、三日月はきっぱりと答えるのだった。
「今日のような戦闘がたくさん起こるかも知れん、と言うことだ」
第二話、どうでしたでしょうか?一週間更新ペースで申し訳ないです……。
説明ばかりで長い文章が多いですがどうかよろしくお願いします。
さて、次話では零夜の個性豊かな学友達が登場します!今後、一暴れさせたいなぁ……。
では、読んでくださった皆様に感謝とよろしければご感想、ご指摘、アドバイス、説明不足などの点がありましたらご通知よろしくお願いします!




