『真実へと続く道』
「恵!? いるか!?」
息を切らしながら俺はさっきまでいた恵の家に引き返した。無事を祈って玄関のドアを思いっきり開き、叫ぶが中は静まり返っていた。
ドアの鍵はかかっていなかった。きっと騎士戦団が連れ去ったのだろう。
「くそっ! どこだ!? どこに行った?」
俺は闇雲に探すしかなく、思い付くところに片っ端から行ってみることにした。
「……零夜君遅いねー」
「ん? そうだな……」
邦広家前。
三日月 弥生と鎗水 杏佳は零夜の帰りを待っていた。杏佳と零夜が会った時も既に日は落ちかけ暗かったが今は完全に落ちきり辺りは真っ暗になっている。また零夜が何か気付いて走り出した後、杏佳は零夜を追いかけたが見失ってしまった。
しばらく探したが見つからず仕方がなく家に戻ってきたところ弥生も二人を心配し、家を出てきたところだった。
「何もないと良いんだけどな……」
見失ってしまった事を負い目に感じているのか杏佳はとても心配していた。
「まぁ、そう気に病むな。主は強い。杏佳はその身を持って体験しただろう?」
「そうは言うけど……。弥生は普段あんなにベッタリなのにやけに落ち着いているね」
少し嫌みっぽく言う杏佳だったが、弥生は何食わぬ顔で受け流す。そんなこんなをしていると向こうから微かに人影が見えた。きっと零夜だろう。
二人は駆け寄っていった。
今では見知った二人が俺に駆け寄ってきた。俺が帰ってくるまでずっと待っていてくれたんだろう。感謝しなきゃだな。結論を言うと恵は見つからなかった。恵だけじゃなく、唱歌さんも。
学校、通学路、裏路地までも探したが手がかりすら無かった。さすがに暗くもなってきたので一旦家に戻ることにしたのだが、やはり恵のことが気が気でなかった。
「どこ行ってたの零夜君! 心配したんだよ! 途中で見失っちゃうし……」
鎗水が心配そうに俺を見ながら言ってきた。案外、こいつはこいつで義理深いところあるんだな。
その隣には三日月もいる。この二人には恵のことも、俺の推測も言っておいた方が良さそうと俺は判断したので一回、居間に入り、捜索する手がないか相談してみることにした。
「め、恵が……」
「妖霊なんて……。本当なのか主!?」
この二人も気付いていなかったようだ。妖霊のような素振りは勿論見せたこともなかった。
「まぁ、今の時点ではあくまでも俺の推測だけど、その可能性は決して低くない」
「騎士戦団はきっと恵が私達の戦力だと考えて連れ去ったのだろうな。相変わらず、せこいことをしてくるものだ」
「あいつらは一度、お前にやられてるからな。できるだけ自分達を有利にしたいんだろ」
「くぅ……。すぐに見つけて恵を取り戻したいとこじゃが……」
「まぁ、それは無理だろね。もう夜だし、危険がたくさんだよ」
悔しがる三日月。鎗水は至って冷静だが顔が少しばかり強ばっている。この二人はまだ会って間もない恵の事をまるでずっと一緒にいた幼馴染みを心配するようだった。
……こいつらの性格がまた少しわかった気がする。
「ん? 鎗水。夜は危険ってどういう事だ? 確かに危険は危険だけど……」
この二人が危険視するような事は無いと思う。だって強いし。外見はどちらとも文句を付け難い美少女なので襲われるかもしれないが相手は人間だ。
軽く返り討ちにできるだろう。しかし……
「……主、知らぬのか? 全く、親父殿が泣くぞ」
わざとらしくあきれて見せる三日月。俺にだって知らないことくらいあるさ。
「なら、なんで危険なんだ? 教えてくれよ」
当然の疑問を三日月に投げ掛けた。すると
「それはだな、その、えっとだな……。なんて言えば……。とにかく、私たちのような存在は狙われてるのだ!」
…………。え?
「いや。全然わからん。誰に? なんで?」
「えーと……。それは……」
うろたえる三日月。変だな。明らかに変だ。
かと言って本当に襲われるかもしれない理由をわかってないようには見えない。きちんと伝えようとしているのだ。が……
「ボクらのような人間と手を組んでいる妖霊は他の妖霊から見たら敵、同じ妖霊なだけにスパイかもしれないって思うでしょ?」
そこに見ちゃられないとばかりに割り込む鎗水。そして説明をしてくれる。
「零夜君なら、スパイをどうする?」
そうだな……。
「俺なら、証拠を見つけてそいつの正体を暴く」
あまり手荒な真似はしたくないので、なるべく穏便に事を収めるのが俺の流儀だ。それに対して鎗水は
「零夜君ならそうかもね。だけどあいつらは純粋な妖霊。ボクらみたいに話がわかるだけでも珍しいんだ」
「……と、言うことは」
鎗水はどこか悲しそうに、しかしハッキリと言い切った。
「そ、実力行使。隙を見せたら絶対に殺りに来る」
結局、今日は決定的な案が出ないまま明日へと持ち越されることになった。あんな話も出たので行動は夜にはできない。
いずれにせよ、時間はかけれないので余り状況的には変わらないが。とにかく、話をした翌日、つまり今日が日曜日で良かった。夜までの長い間、恵を探せるのだから。
……その、はずなんだが
「おい、起きろ。もう9時だぞ」
眠っている美少女を起こす俺。なんか普通は逆なんじゃないのかな? いや、何が普通か知らんけども。
「むぅ……。れい……や、君……? 眠いって……」
未だほぼ10割寝てる鎗水は布団から出ようとしない。
部屋の都合で、と、言うよりはベットと布団の都合で鎗水の隣で寝ている三日月も起こそうとする。
「おーい、三日月~? おき……!?」
揺さぶろうとした瞬間。三日月が寝返りをうち、いつも着ている和風な着物が少し崩れる。
こ、これは……。なんとも言い難い、何かを感じる。普段はほとんど全く気にしてなかったがこいつ、よくよく見るとけっこう露出高い服を着てるよな。
そう言えば、この前洗濯をしていたら三日月の普段着ているこの着物が何着もそのまま洗濯機に突っ込まれていた。全部同じやつ。何かこだわりでもあるのだろうか。しかしこの状況はまずい。
「……た、頼むから~。おとなしく起きてくれよ~……」
この二人を起こすのにそれからだいぶ時間がかかった。妖霊は夜早く寝るくせに寝起きが悪いらしい。
「ところで、探すと言っても検討くらいは付いとるんじゃろな?」
「あぁ、お前らがぐーすか寝てる間に俺は俺なりにちゃんと考えてるんだよ」
「いや~。寝坊したのは悪いけどさー。友達一人の命かかってるんだから起こしに来るとかしても良いと思うよ~?」
「いや、起こしに行ったわ! 何回も!」
時間は昼前。俺たち三人は外へ出てある場所に向かいながら話していた。
「でも、ホントになんか余裕って言うか……。そーゆーのは無いと思うんだよね」
と、鎗水が言う。なら、早く起きろよ。
「そうじゃな。そろそろ真剣に行動するようにしなければな」
やっと真面目モードになってくれたようだ。
「ところで主。どこへ向かっておるのじゃ?」
「何か目星は付けてるみたいだけど……」
三日月と鎗水が質問をして来る。今、俺は弥富原家に向かっている。妖霊の仕業なら同じ妖霊であるこいつらになら何か手がかりが掴めるかもしれない。
「……?」
「? どうした? 三日月」
突然歩みを止める三日月。鎗水はその急停止に反応できず三日月にぶつかっていた。三日月はずっとある場所を見ていた。
「いや……。なんでもない」
「……そうか?」
そして俺たちは再び弥富原家に向かって歩き出した。三日月がさっきまで見ていたが、あの公園に何かあったのだろうか?
今回もよろしくお願いします。




