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三日月が夜空に輝く頃  作者: オルソー
~序章~『妖霊と少年の秘密』
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『謎が謎を呼ぶ体験』

「おーい! 零夜くーん」


 帰り道の途中。今ではすっかり聞き慣れた声が後ろから聞こえたので振り返る。


「おぅ、どうした鎗水。お前が一人でいるなんて珍しいな」


 もう、薄暗くなってきていると言うのに危ない。

 まぁ、強いのはあの戦ったときに身をもって体験しているから人間相手なら軽くあしらえるだろう。


「いやね。弥生のやつが今度は一人で料理を作るって言って聞かないんだ。それでボクは買い出し。嫌になるよまったく……」


「そ、そうなのか……。楽しみだな。あはは……」


 俺はつい最近食べたあの謎の料理の味を忘れない。

 いや、味無いんだけども。すると鎗水はそうそうと思い出したようにもうひとつ俺に告げてきた。


「君がずっと前に襲われた騎士戦団って覚えてる?」


 と、質問してきた。もちろん、忘れるはずがない。

 あれから少し調べたのだが、全ての妖霊を悪と見なし、殲滅するという思考を持つ組織。それが一体、どうしたんだろうか?


「また、あいつらの動きが活発になったみたいだね。つい最近までは弥生の一点狙いだったけど、なにか違う目標でも見つけたみたい」


「違う目標……」


 やつらの目標となりうるのは妖霊かそれと手を組む人間。つまり俺のようなやつだ。

 三日月は当初からの目標だし、俺も襲撃された夜に顔が割れてる。その俺たち二人と派手にやりあった鎗水もたぶん調査済みだろう。と、なると身近なとこには騎士戦団の新たな目標となる相手はいないわけだが……。

 俺の頭の隅でまたも何かが引っ掛かる。すると、鎗水も似たような感情を抱いたのか呟いた。


「きっと……。あくまでボクの予想だけど、君は何か見落としてることがあると思うんだ。大切な何かを」


 いつもの拍子抜けしたくらい明るく騒がしい鎗水の声とは真逆のとても低く、重く、悲しみが混じったような声だった。


「見落としてること……?」


「よくはわからない。けど、何か悪いことが起きる気がしてならないんだ。気付かないといけない。絶対に阻止しなきゃいけない何かがあるんだ」


 そこまで言って鎗水は突如、何かに気付いたように俺を見た。


「な、なんだよ。その見落としてることって……」


「もしかして……。ある可能性の話だけど……。騎士戦団の最終目標は普通に考えると弥生な訳でしょ。それを簡単に違う目標に変えるってのはおかしいと思うんだ」


 確かに、妖霊の中で最強と言われた三日月を倒せば格段に他の妖霊ともやりやすくなるわけだし、俺の家を襲撃してまで三日月を探していたのだ。

 おかしいと思わない方が不思議だった。


「それはわかってる。ってことは……」


 ある可能性が俺の頭をよぎった。同じ考えだったのか鎗水もひとつ頷いた。


「そう、きっと騎士戦団は弥生の周りの妖霊から消すつもりなんだと思う」


 鎗水の言う通りだ。しかし、この説には矛盾がある。

 弥生の周りの妖霊。それはつまり鎗水しかいない。でも、当の本人は騎士戦団に顔が割れている場合が高い。なので『違う目標』なんて曖昧な呼ばれ方はしないはずだ。

 鎗水の情報源も鎗水自体がターゲットならその場で忠告するはずだし、それを知った鎗水が俺に相談してくることも無いだろう。

 そして俺は気付いた。なぜ今まで気付かなかったんだと思うくらい、とても単純で簡単なことを見落としていた。


「奴らの狙いは三日月の周辺にいる妖霊でなおかつ、それは鎗水、お前じゃないってことは……」


「……他の妖霊?」


「つまり、俺達の身近な人物でもうひとり、妖霊がいるってことだ!」


 これしか考えられない。そしてその人物は……


「……恵!!」


 俺は来た道を慌てて引き返した。あの時突如、弥富原家を訪ねてきた客。あいつが騎士戦団って可能性は十分にある。

 確信は無いが、今はとにかく走るしかなかった。




「れ、零夜君! どーゆーこと!?」


 すぐ後ろを走る鎗水が俺に問いかける。さすが妖霊。俺は全力で走っているのに付いてきてる。女の子のスピードとは思えない。


「三日月と関わりがあるやつって言ったら恵の他に誰もいないんだ! 俺との接点なら学校のやつらって場合もあるけど、三日月とは面識がない。それでお前でもないって言ったら、もう、恵しかいないんだ!」


「理屈はわかるよ! で、でも……。恵が妖霊と繋がりがあるって……」


 そこがわからない。騎士戦団は妖霊、もしくは妖霊と手を組む人間を敵と見なす。

 妖霊の存在は知っているがそんな深いところまで首を突っ込んでいないはずだ。


「……くそ、わからないことばかりだ!」


 俺は走りながら苛立ちを押さえるばかりだった。しかし、俺の頭の中でおかしな点が浮き上がってきた。自然と足が止まる、


「うわっ! 今度は何だよ……」


 慌てて後ろの鎗水も止まる。

 俺は恵の家を見たときこう思った。『昔から、全然変わってない』と。普通、そんなことがあり得るだろうか? 最後に恵の家を訪れたのはもう十年以上も前だ。

 まだ、家の外見だけなら納得がいく。しかし、家に入ったときのあの感じ。曖昧だが本当に昔の記憶そのままだった。果たしてそんなことがあるのだろうか? 考えるほどおかしいことだらけだ。

 そこまで考え、俺は結論を出した。あくまで俺の仮説だが今、考えれる中で一番真実である可能性が高い仮説だ。


「……鎗水。今も生き残っている妖霊のうち、人の記憶とか過去を読み取れるのっているか?」


 突然の俺の問いかけに鎗水は一瞬、驚いた顔を見せたがすぐに考えはしてくれた。少しすると回答が帰ってきた。


「そうだね……。まず、生き残っている妖霊の家系自体が少ないからね。記憶とかってのはすごく曖昧なとこが多いからそんな特殊な妖霊はいないんじゃないかな?」


 ボクが知らないだけかもしれないけど。と付け加える鎗水。

 そうなるとそれだけで俺の仮説はもう弱くなってしまう。また新たな可能性を考えていると……


「あ、でも、残ってるか、残ってないかわからないけど記憶を司る妖霊ならいたよ」


「ほ、本当か!?」


 思ってもいない返答につい、声を大きくしてしまう。鎗水は構わず続けた。


「そんなに大きな力は持っていなかったけど、時間と人の記憶を操れる能力を持った妖霊。想佳鱗そうかりんがいたっけ」


「……そ、想佳鱗?」


 確かに聞いたことのない妖霊だった。


「想佳鱗は人の記憶を頼りにそのものを作り出せる力を持ってたんだって。あれだよ、人間がよく狸や狐に化かされたっていうやつ。……って零夜君!? また走ってどこ行くのさ!?」


 そうか! そう言うことだったんだ! これですべて繋がった。でも、信じたくなかったことまでも俺は確信してしまった。

 もう自分でも少しは気付いていたのかもしれない。それを否定したくて必死に否定材料を探していたんだ。しかし、ここまで来たら受け入れるしかない。




 弥富原恵が妖霊かもしれないと言うことを。


遅くなり申し訳ありません……。

アドバイス、評価など宜しければぜひお願いいたします。

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