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三日月が夜空に輝く頃  作者: オルソー
~序章~『妖霊と少年の秘密』
10/18

『非日常的な日常』

 しっかりと俺にはその膨らみが目視できた。明らかにある。男にはなくて女にはあるあれが。しかし恵は男だろ? もしかして……


「もしかして……。お前……」


 俺の言葉に少し身構える恵。


「どっかで胸でも打ったか?」


「……」


「……一回死んだ方が良いかもな。主」


「君は本当にバカだねー」


 恵の沈黙に続いて三日月と鎗水が登場。

 鎗水、どっか行ったと思ったら三日月を起こしに行ったのか。


「いや、さっきのは冗談としてだな? 恵は男だぞ!? 胸があるなんて……」


「「「……」」」


 え? なんですかみんな揃ってその表情。バカを見る目で見ないでくれ!


「やれやれ……。だから言っておろうが。恵、いや、『めぐみ』は女子じゃろ」


「……え、ええええええ!!??」


「……鈍いよね。ほんと」


 今日は朝からとてもハードな内容だった。





「でだ。さと……いや、めぐみだったな。お前はなんでずっと黙ってたんだ? 俺たちもう何年の付き合いだよ?」


 諭すように言う俺にようやく恵は口を開いた。


「それは……。悪かったよ。けどね、言い出すタイミングとかいろいろ迷ってたらこうなっちゃって……」


 恵が言うには普段はコルセットなどを巻いて女である特徴を隠していたらしいのだが、目が覚めたのが俺の部屋と言うこともあり、焦って外れたコルセットをそのままにして出てきてしまったのだ。


「で、でもな……」


 そもそも俺はなんで今のいままで気が付かなかったのか。これだね身近な存在なんだ。いくはなんでもありえないだろう。

 とは、思ったが気付かなかったのもまた事実。


「ま、主が鈍感すぎなだけだと思うがな。私は」


「そーだねー。ボクも出会って、一目見ただけで女ってことはわかったから」


 妖霊はやはり人にはない不思議な力でもあるのだろうか?


「と、言うか主。今までで何かこやつが女子ではないかと疑える場面は無かったのか?」


 三日月にそう聞かれたので記憶を呼び覚ましてみる。


「……そう言えば、小さい頃からの付き合いだけどトイレに一緒に行ったこともないし、風呂も一緒に入ったことないし、プールに誘ってもいつもなんかの用事で断られてた気がするな」


 わかってから思うとすごく不審なことばかりだった。


「それだけあったら普通、疑うものだと思うんじゃが……」


「あはは! それもそうだよね!」


 呆れる三日月に楽しそうに笑う鎗水。これからどうなって行くんだろう……。

 俺はなんとなく、気が気ではなかった。





 あの後、とりあえず俺は支度をし登校してきたのだが恵はと言うと今日はやめとくとかなんとか言って休んだ。

 あいつ割りとメンタル弱いんだな。いや、まぁ性別を偽っていたくらいなんだから、それなりの理由があるんだろうけど。


「おー、どーした零君。幽霊みたいな顔してー」


「ん? 道乃。それは幽霊と零夜の『れい』をかけたのか? おもしろいじゃないか!」


「あ、蓮斗! すごいでしょー!」


「でもな、お前は気づいていないんだ。一番大切なことを……」


「そ、それは……。な、なんだい?」


「それはなぁ……。幽霊と零夜の『れい』と言う漢字は同じじゃない!」


「な、なんだってぇぇぇぇぇ!」


 ……朝っぱらからとても頭が悪い会話が聞こえてきたが無視をしよう。他人のふりだ。いや、まて。元から他人だった。

 そもそも何が言いたいのかさっぱりわからん。


「ちょいちょいちょい! 無視はないよ~」


「そだぜ! お前の顔にいつもの元気がないのは確かなんだしな」


 こいつらの場合、おちょくってるのか本気で心配してくれているのかいまいち分からないところだ。


「ま、俺にも色々とあるんだよ。あ、今日って一限目から小テストだぞ? 抜き打ちっぽいけど」


 ちなみに小テストは嘘である。早くお前らどっか行け。


「え! ホント!? 全然聞いてないよ~!」


「俺もそんな話知らないぞ!」


 慌てふためく道乃と蓮斗。だから抜き打ちっぽいって言ったじゃねえかよ。

 しかし、これでやっとこいつらから解放……


「ま、でも今さらやったって変わらねーや」


 ……え。


「うん、そーだね! 諦めよう!」


 な、なんて切り替えが早いんだ……。その後、俺はこいつらの相手をするのだった。





~一時限目~


「じゃー、お前ら。今日は抜き打ちになるが小テストをするぞー」


 ……え。嘘だろ?






「そーいや、今日の一時限目にさ、寺本のやつ抜き打ち小テストって言ったじゃん?」


 昼休み、屋上で昼食を取っていると蓮斗が不意に口を開いた。

 ちなみに寺本とは一時限目にあった古典の担当教師であり俺たちの担任の男性教師だ。まだ若いのに学年トップクラスの問題児である道乃と蓮斗の担任にさせられてさぞかし頭が痛いだろう。


「ん? あー、そう言えばそうだったね。みんな驚いてたし……」


 担任の頭を痛ませてる本人たちは、まだ俺の見え見えな嘘に騙されている頭の悪さだった。

 いい加減に気付けよ。


「そーいや、零君」


「ん? なんだ?」


 後は特に気にした様子も無く、話を俺に向けてくる道乃。素晴らしい切り替え術と言わざるを得ない。


「やとみっちは? 今日は来ないの?」


 やとみっちとはさと……、いや、めぐみのことだ。

 道乃は人に勝手におかしなあだ名を付けて勝手に呼ぶ。なんと言うか癖みたいなものらしい。ただし蓮斗は例外で普通に名前で呼ぶみたいだ。何故かは知らんけど。

 俺は呼び方はなんでも良いんだが、零君と呼ばれるのはなんだか恥ずかしい気もするが……。


「あいつは今日、風邪を引いたらしくてな。学校自体、休んでる」


 まさか本当のことを言うわけにもいかないので適当に誤魔化しておく。まぁ、道乃だしバレないだろうけどな。


「へぇ。やとみっちも病気にかかるんだねー」


「そりゃ、あいつは賢いからなっ! お前みたいなバカは風邪を引かないからな!」


「なにー!? 蓮斗だって人のこと言えないじゃん! あたしのが順位上だしー!」


 またバカ二人がギャーギャー騒ぎだした。昼休みだし屋上には少なからず他の生徒が居るんだが……。道乃と蓮斗を見るなり、あいつらなら仕方ないな。と言う感じで放置されている。

 もうすっかり学校の有名人だった。


「……今日も平和だなぁ」


 俺は他人のふりして屋上から出るタイミングを掴むのにけっこう手間取った。


今日で正月休みも最後。また、遅い更新ペースになってしまうと思いますがよろしくお願いします。

では、次回はいよいよ物語が動き始めます!!

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