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三日月が夜空に輝く頃  作者: オルソー
~序章~『妖霊と少年の秘密』
1/18

『夜空の向こう側』


 突然だが君達は『妖霊』と言う言葉を知っているだろうか。簡単に言うと妖怪と幽霊を合わせたような存在、ということにしておこう。厳密に言うと色々と異なる点はあるのだが。


 実際、妖霊というのは、古くから存在している。そしてほんの約600年ほど前は妖霊の世と言われるほど世界が妖霊で溢れ返っていた時代だった。現代にも妖霊はいるが俺の父親の話では人里離れた場所で静かに暮らしているらしい。

 こういうふうにしゃべっているが俺自身、妖霊に会ったことはなかった。そしてあの夜、俺と妖霊が初めて出会ったときそれまでの俺の平凡で平和な生活は幕を閉じた。





 夜。近くにあるのは古びた書物や道具。それに見慣れない銃や剣を持ち、防具で身を固めている男数名。そして目の覚めるような美少女。そして彼女は俺をしばらく見つめ口を開いた。


「……あるじ、悪いが血を借りるぞ」


 そのとき俺は初めて妖霊を見た。





『またも、C-43地区で不審死。警察もお手上げか? 無惨な遺体を多数発見。』


 朝刊から嫌な記事を見てしまった。

 ここC-43地区は古い町並みが今なお残っている。土地整備が進んでいる現在ではとても珍しい場所だ。そんなC-43地区は俺の生まれ、そして育った場所。


 いつもとなんら変わらない朝。

 この後も俺はいつも通り平凡で平和な日常が待っているんだと信じていた。いつもと変わったとすれば朝食がいつもより美味く感じたことだ。また、料理の腕が上がったのかもしれない。そして学校へ向かうのだった。

 外に出てみると春がやってきたのを教えるように桜が咲いていた。


「おはよう、零夜れいや。今日はいつもより早めなんだね」


 そう俺の名前を呼んで来たのは弥富原やとみはら さとし。俺の家の近所に住んでいて俺たちは小さい頃からよく遊んでいた。幼馴染みというやつだ。

 こいつは男なのだがおっとりとした口調に中性的な顔立ち。さらに身長も男にしちゃ低めだし、体も細い。生まれつきの銀髪も後ろでまとめてあり、それを解いたらすごく長そうだ。

 もうひとりの友人、蓮斗というやつがいるのだがそいつはこの恵と全くの正反対である。


 余談だが俺はこいつと出会うまで恵と書いて『さとし』と読めることを知らなかった。こういうところからまたひとつ、賢くなるんだろうな。うんうん。


「あぁ、たまには早起きも良いかもって思ってな」


「へー、そうなんだ。ま、今日も一日頑張ろうね」


 そうして俺たちは何気ない、いつものようにしゃべりながら学校へと向かった。






 そして、いつも通り平和で少し面倒臭い学校から帰宅。そこで普段なら一直線に玄関に進むのだが……。

 玄関の前にちょっとした庭があり、その隅に昔からある物置が建っている。めったに入らないし、まずその存在自体、忘れていることも多い。

 しかしなぜか今日に限り異常にその物置が気になり自然と足を止めてしまう。

 それから、ふと空を見上げるともう既に綺麗な三日月が夜空に輝いていた。



 気にはなっていたがとりあえずその場はそのままにし、夕食を済ませた俺は居間でテレビを見ていた。

 ちなみにうちは父親が仕事でまったく帰って来ず、母親もどこまで親父に着いて行ったのか定かでない。

 つまり、事実上の一人暮らしってわけだ。

 のんびりとすごしていると、インターホンが鳴り響いた。時計は午後11時を指していた。


「……ったく、誰だ? こんな夜に」


 とりあえず玄関へ返事をしながら向かう。

 扉を開けるとそこにはおかしな格好をした数名が立っていた。具体的には鎧と腰にはなんと剣まで差している。まぁ、当然レプリカだと思うがすごくリアルにできている。俺が不審に思ってみていると


「あ、すいません。邦広零夜さんですか?」


「え、えぇ。そうですけど……」


 その不審な人物の一人がしっかりと俺の名前を言った。まず同姓同名の間違いではないだろう。

 邦広くにひろ 零夜れいや。このだだっ広い邦広家ただ一人の住居者。ここら辺じゃあることで少し有名な家系で俺はその末裔に当たる。俺が答えるとその人物は後ろの何名かになにか合図を送った。


「私たち、『騎士戦団』と言いまして……。あ、邦広家の方なら知っていますよね?」


「騎士戦団……。あ、はい。話しには聞いてます」


 騎士戦団きしせんだん。古くに邦広家となにか友好関係にあった組織らしい。しかしもうだいぶ昔のことだが仲違いし、争ったという歴史もある。

 その後、和解したが前の友好関係には戻らなかったという話を聞いたことがある。騎士戦団はその後、警察の特殊部隊のような役割を担い日々活動しているらしかった。


「最近この辺りで不審死が相継いでいるので少し調査をさせてもらっております。ここ最近で変わったことはありませんか?」


 不審死とは今朝の朝刊でもあったあれのことだろう。学校でも少し噂になっていた。なにしろ今までの遺体が全て一滴残らず血を体内に残されていなかったとかいう噂話を聞いてきたところだった。


「いや、ないですね。特には」


 なんの偽りも無く俺はそう答えた。


「そうですか。ご協力ありがとうございます。なにかささいなことでも気付かれましたらご連絡くださいね」


 そう言い残し彼らは去っていった。仕事熱心でご苦労様。


「……さて、風呂に入ってさっさと寝るか」


 





 数十分後。風呂から上がり着替えたところでふと俺は不思議な音を聞いた。なにやらガサゴソと漁っているような音が居間の方から微かに聞こえてくる。


(うわぁ、泥棒か? 鍵はきちっと閉めたはずなんだけど……)


 携帯電話も居間に置きっぱなしでどうすることもできないのでとりあえず居間へ物音を立てないように向かった。


「早くしろ! 必ずあるはずなんだ!」


 小さな話声が聞こえてきた。完全に泥棒だ。えらいことになった。

 確かにこの家は見た目だけなら古風だがすごく大きいので金目のものはありそうだが、ありふれた普通の家と同じような物しか置いていない。


「見つけないと今度こそあの人に怒られる! それだけは避けないと……」


 なにやらまだしゃべっている。しゃべっているということは複数人居るのだろう。

 俺は居間の近くの階段で身を潜めている。さっさと帰ってくれることを祈るしかないのだ。平凡な男子高校生には。しかし、この声、聞き覚えあるような……。まさか! クラスのやつの犯行か!? そこまで嫌われているのか俺!?

  ……いやいや、ないない。自己完結。


「無いぞ! くそ、あのガキどこに隠してやがる……」


 今度は聞き覚えのない声。

 しかし、なにを探しているのか知らないがまったく知らない、しかも泥棒にガキ呼ばわりされて少しムッとした俺は顔だけでも見えないかと身を乗りだし、居間を覗こうとした。……が、近くにあったのに気付かなかった何かを倒して音を立ててしまった。


「……!!!」


「なんの音だ!? 当主は留守なんじゃ……」


「落ち着け、誰だ!! おとなしく出てこい!」


 やばい、気付かれた……。でも、誰だ! だって。普通はこの家の者でしょうよ。


「早く出てこい!」


 仕方がなく俺は両手を頭の上に置き、出ていった。大人しくしてれば大丈夫だろうと。

 そして俺は居間を見た瞬間、目を疑った。


「……き、騎士戦団?」


 先ほど調査に来た鎧と腰に剣を差した騎士戦団が居た。その数五名。


「なんだ、あの時のやつか。ちょっと来い」


 俺に質問していたやつがリーダーらしく俺を呼び寄せた。質問してきた時の優しい口調は消えていた。

 俺は抵抗することなくその指示に従いやつの側へと歩いた。


「ぐっ!?」


 その直後、首もとを捕まれた。残りの四名もこちらを見ている。


「秘術の書のありかを教えろ」


「ひ、じゅつの……?」


 全く聞き覚えのない単語に思わず聞き返すと騎士戦団員は


「そうだ。お前も邦広の人間なら知っているだろう? 教えればなにもしない」


 と返してきた。しかし俺にはなんのことかさっぱりわからなかった。邦広の人間なら知っていること……。そんなの思い付かなかった。

 黙っていると痺れを切らしたのか俺の首もとを掴んでいた騎士戦団員は思いっきり俺を投げ飛ばした。ガラスを割り外の庭に出てすごい速さで自分の身が飛んでいく。そして隅にある物置にぶつかりその壁を貫き止まった。な、なんて力だ。あきらかに人間の出せる力じゃ無いぞ……。体のあちこちから出血し俺は物置の中に入っている形となった。

 そこへ騎士戦団員五名が近づいてきた。


「さて、吐く気になったか? もう一度聞く。秘術の書はどこだ?」


 先ほどは黙っていてこの様なので痛む口を開けて


「……し、知らない。まず……秘術の書って、なんだよ……」


 そう言った。しかし騎士戦団員はその答えにも不満だったのか俺の腹をさらに蹴りつけた。吐血する。俺の下じきになっていた物置の本が血に濡れる。


「そうか。そこまで言うなら仕方ないな。お前にはここで死んでもらおう。盛大に首を飛ばしな」


 そう言うと腰に差した剣を手に取り、抜いた。三日月の明かりに照らされ特有の光沢を放っている。

 レプリカでもなんでもない。正真正銘の剣だった。そしてそれを俺へと真っ直ぐに降り下ろした。




 0コンマ何秒かの世界。なにが起こったのかわからなかった。今、物置の外へ向かって飛んでいるのは俺の首……。


 では無くさっきまで俺を切ろうとしていた騎士戦団員の剣だった。突如、目の前が光に包まれ次の瞬間には剣が弾け飛んでいた。そしてさっきまでそこには居なかった一人の少女が立っていた。俺と騎士戦団員との間、右手は赤くいびつな形状をした刀らしきものを持ち、右腕を右に伸ばしきり、それを振り切った姿勢で静止している。


「お、お前は……!?」


 剣を弾かれた騎士戦団員はすぐさま距離をとった。この仕草で俺はそうとう相手は戦い慣れているとわかった。少女は刀を持ち直し振り返って俺を見た。

 それにつられ背中くらいまである少し赤色のかかった髪の毛が揺れる。顔は少し大人の、しかしまだ少女のあどけなさを残した端整な顔立ち。美少女だった。

 そして彼女はこう言うのだった。


「……久方ぶりに戦うには、少し血が足りないな」


「……え?」


 思わず聞き返した。


「……主、悪いが血を借りるぞ」

新たに投稿させてもらいました。第一話、どうでしたでしょうか?更新ペースは遅いですがなんとか仕上げていきたいと思っています。よろしければご指摘、ご感想などお願いします!

では、簡単な予告を。

二話では謎の美少女の秘密と力が明らかになります!

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