人生の分岐点
人生は何が起こるかわからないものだとエイナル・・オブリーは考えていた。彼は今隣国ウルリヒに主である若い魔法師ニーム・ロドリゲス・ガウスと留学という名目で滞在している。彼の若い主はある事件に巻き込まれ命の危機を迎えたが忠実な専属侍女がハヴェルンからの花嫁行列に加わっていたことで命をとりとめた。最悪なのは久方ぶり会った彼の密かな想い人であるアナスタシア嬢から本気で攻撃魔法をしかけられたことだ。
若い主を間近にいて守れていないこと、そしてカリンに危険なことをさせてしまったこと更に私の本意ではないがアルベリヒ殿下に危険なモノを持たせてしまったこと最後に最悪私まで危険な場面に巻き込まれるのではないかという恐怖それらの感情が入り乱れているのが伝わってくる。
あぁ、この女性はまだ私を待ってくれている。不謹慎ながら嬉しかった。そしてその時から考えたまだ間に合うだろうか?うけいれてもらえるだろうか?もし、それが許されるなら私は努力をしよう。
ブロワト家に関する問題は全て片付いた。それと並行して以外にもヴィルヘルミナ王女が率先して騒動に紛れ尻尾を出してきた反ヴィルヘルミナ派を一掃した。ユベール第二王子は彼女を評して氷の王女と読んだ。反対派の貴族令嬢ばかりが集められ茶会を開き一人一人とゆっくりにこやかに話をしたそうだ。
見ていたものは和やかな雰囲気だと思っていたが、当事者の令嬢らは拷問にかけられた気分だったそうだ。そして同じ時、彼女らの父親達は別室に集めれユベール殿下からこちらもにこやかな表情だが漂う空気は氷のように冷たく、口調は穏やかだが話す内容は厳しくこれ以上ハヴェルン王女に手を出さないこともし、何事かあればその家系は取り潰されることになるだろうと、同席したイニャス殿下も震えが来るほどの静かな怒りだったそうだ。
そして、我が主とその専属侍女はまだ目覚めない。あの日の出来事を思い出すと今も胸が痛む。忠実に主の為に動く少女が倒れた時、同時に別の場所でブロワト令嬢が飛び降りた。しかし、主はためらいもなくカリンにに向かい走り容体を確認すると取り乱した。あの研究棟を建てた時のように、いやあれ以上に。
アナスタシア様もヴィルヘルミナ様もかなりの取り乱しようだった。
あの時、もし私が倒れたら?
狙われたのがアナスタシア様だったら?
考えると震えが来る。
私の若い主と幼い侍女は完全にお互いを信じあっている。
では、私と公爵令嬢は?
あの頃のように彼女は想っているのだろうか?