表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の手を取り共に歩もう  作者: にしのかなで
8/16

お別れは言わない

いつの世も、この日ばかりは賑やかだ。

貴族の子女らが着飾り大人への背伸びをする。中でも王家から今年社交界にデビューするヴィルヘルミナ王女とシュヴァリエ公爵家のアナスタシアは特に際立っていた。王女のパートナーは滅多に表に出ないアルベリヒ王太子が務めることで更に話題になっている。

そして、アナスタシアのパートナーも。鳶色の髪の長身の若者。貴族社会では見たことがない、誰もが囁きあい噂をしていたが二人は全く気にせず最初の3曲を踊り終えるとテラスに出た。オブリーには彼女に言うべき事があった。アナスタシアも覚悟をしていた。

少女の時代は終わりを告げたのだ。

「ねえ、エイナル。貴方が私に言いたいことはわかっているの。だけど、私は諦めないわ。貴方はきっと私を迎えに来る。きっとね・・・じゃあ、私この後はもう王宮に入ることになっているの。だから、ごめんなさい勝手ばかり言って。でも、駄目なの諦めきれない。だからお別れは言わないわ。」

そう言って華やかな後ろ姿が人垣に紛れて見えなくなるまでオブリーは見送るしかなかった。

「諦めない・・・かぁ。だろうなあ。」

アナスタシアはまだ15になるところだ。時間は十分ある。

「いずれ、チャンスが訪れるかな・・・あぁ、占い学も専攻しとけばよかったか。」

そう呟いたのを彼女は知らない。会場を早々に後にして王宮内にあてがわれた新しい自分の部屋に誰も入れず声を押し殺して泣いていた。

それを彼も知らない。本当はもっと相応しい相手があるのに、自分だけを見つめてくるあの瞳を思い出していた。

彼の努力と彼女の根気が実を結ぶのは更に数年が必要だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ