令嬢と執事
あっという間に3年が経ち、アナスタシアは屋敷に帰ることになった。成績は優秀で癒術を学んでいた。また、飾らない人柄と差別意識のなさでクラスにも溶け込み別れの際には他のクラスの女子まで見送りに来てくれた。
「ただいま帰りました。」
「おかえりなさいアナスタシア。嬉しいわこれからは一緒に暮らせるのね。」
母は駆け寄り抱きしめた。上二人の兄とはとしが離れているためこの時間は勤めに出ている。弟のウィレムも嬉しそうにまとわりついてくる。
アナスタシアはそんな弟を見てにっこり笑うと着替えてくるから待っていてねと言い残し部屋へと消えた。しばらくして降りてきたアナスタシアは剣を片手に兄のお古を着て嫌がる弟を中庭に引っ張っていく。
「嫌だよっ!ぜったい勝てっこないもん。はーなーしーてぇぇっ!助けてエイナル」
見ると中庭に既に卒業をしたばかりのエイナルがいる。
「駄目よ!私はあなたがちゃんと鍛錬しているか確かめたいんだから。」
と、空いている片手を掴まれる。
「いけませんね、お嬢様。残念ですがウィレム様は今朝私が稽古をつけています。必要以上の鍛錬は体を壊す元ですよ。それに帰ったばかりでそのようなことをされるのは公爵家令嬢として如何なものかと。」
エイナルに気を取られている隙にウィレムが逃げ出す。
「ありがとう、エイナル!」
「あ!ウィレム待ちなさいっ。」
そう言ってからエイナルに向き直る既に手は離されていた。
「なんであなたがここにいるの!」
「それが、大叔父が引退することになりまして、その引き継ぎをしています。今後ともよろしくお願い致します。」
にっこり笑ってそう言うエイナルはどこか以前と違って見えた。
「何その嘘くさい笑顔」
全く気にした様子もなくアナスタシアの手を取り中庭から邸内に入る。
「エミリーさん、お嬢様をお願いします。私は離れに戻りますので。」
「まあ!お嬢様っなんて格好を。奥様に叱られますよ。あ、オブリーさんありがとうございます。さ、お部屋に参りましょう」
エミリーに引きずられながら部屋に連れて行かれ湯浴みをしすっかり見た目は公爵令嬢になった。
「今日はご主人様もお兄様方もお早めにかえられるそうです。それから、魔法学校で学んでいない分は先ほどのオブリーさんが家庭教師を務めれるそうですよ。なんでも魔法省からお声もかかっていたそうですが丁度大叔父様のバスティアンさんが引退なさるということで、親類でお小さい頃から離れで過ごされてましたし信用がおけるということでエイナルさんが選ばれたんです。お嬢様の家庭教師としても申し分がないと随分な信頼を得ていますねあの方は。はい、できました。」
髪の毛を整えてソファに座らされる。
「これからは大人しくなさってくださいね。苦手な淑女の嗜みもお勉強していただきますから、ウィレム様に稽古をつける余裕はないですよ。」
そう言い残し部屋の外に出て行った。
「なによ、それ。」