祝福の女神
程なくして、遂にこの日が来た。我が国の誇る王女ヴィルヘルミナ様とウルヒリ第一王子ジルベール様との婚礼の儀だ。
この婚礼に際しヴィルヘルミナ様たっての願いでカリンが儀式の進行と立会いを務める。
ヴィルヘルミナ様にとっては忌まわしいブロワトを廃した立役者であり、祝福の女神の名を持つカリンに全てを任せたかったのだろう。
そして、奇跡が起こった。
普段は高位神官か高位巫女に信託される言葉がカリンの身体に降臨した女神ハプトマンが神語で新郎新婦に祝福を述べる、そしてそれを受けヴィルヘルミナ様からアナスタシアに花嫁のブーケが渡される。そして、カリンの姿を借りた女神がやはり神語で私に語りかける。神語の知識のない私にも頭の中に声が響く。
「エイナル・オブリー。そなたの大事なものが何かはもうわかっているであろう。その手を絶対いに手放す事なかれ。」
まいった、完全に見透かされているしカリンの顔でそれを言うのは神様ちょっとズルくないですか?しかし、神妙に受け取り頷くと安心したように離れて行った。
婚礼の披露宴にはルディ様とカリンは参加しなかった。これが終われば明日一番で帰国をする。今日のアナスタシア様はアルベリヒ殿下のパートナーだった。その彼女を例え少しの間でもお借りするのがどんなに失礼なことか、そんな事は百も承知だ。
非礼を詫びアナスタシアを庭に連れ出す。
「ちょっと、あなた大丈夫⁉︎今日は私、殿下のパートナーなのよ。」
「だから、非礼を詫びてお借りしたんじゃないですか。」
「大体、こんなところに連れ出してなんなの?最近おかしいわよあなた。」
ふーっと息を吐き出し話し始める。
「おかしくもなりますよ、私の大事なものが目の前からいなくなるかもしれないんですから。」
「え・・・?」
わけがわからず戸惑っている彼女の前に跪きその手を取り真っ直ぐ見つめてゆっくりと申し込んだ。
「シュヴァリエ公爵家令嬢、アナスタシア・フォン、シュヴァリエ殿。どうか私の求婚を受け入れていただけませんか?」
驚いている、そりゃそうだ。だけどこの気持ちを伝えなければ一生後悔するだろう。
「私はこちらの魔法省でニームの称号の推薦状をいただきました。明日帰国したのちすぐに試験を受け正式に称号を頂いたあと、爵位を頂戴するつもりです。貴女に相応しい立場になるために。」
「でも、だってあなたは私を避けてたじゃない、そんな突然・・・。」
「いつ、どこにいてもあなたを一番に考えていると約束しましたよね。あれは今でも私の心にあります。ところで、お返事は?」
「おっそい!遅いわよどれだけ待ったと・・・」
オレンジの瞳が涙で潤む。
「もちろん、はいよ!決まってるじゃないっ馬鹿・・・。」
立ち上がりハンカチを渡し軽く抱き寄せる。
「・・・よかった・・・半分諦める覚悟をきめてました。必ず幸せにします。」
「当たり前よ」
その後、案の定アルベリヒ殿下に覗き見されていたが気にならなかった。
やっと、こうして私は幸せを手に入れた。