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君の手を取り共に歩もう  作者: にしのかなで
12/16

彼の努力

婚約披露の場で聞いた話は少なからずショックを受けた。

それだけ彼女を大切に遠くから見守ってきた。あの幼い日の約束通りに。しかし、このまま放っておけばいずれヤケになって政略結婚でも修道女にでもなりかねない。何せ彼女は強情だ、大事な弟のためなら自身の犠牲などなんとも思わず周囲にとって最善の策を取るだろう。


もっと早く行動すべきだった。

今は彼女の全てが愛しい。こんなにも長い間自分のような者を一途に想い続けた女性をみすみす手放していいのか?いや、いいはずはない。私は怖かったのだ、魔力持ち同士が一緒になればそれこそ子どもは望めないだろう。ならば何分の一かでも確率の上がる普通の人間を伴侶にするのが彼女にとって最善だと思い込もうと、自分の気持ちに蓋をして過ごしてきた。

本当はわかっていた。生まれてから家族の一員として扱われず半ばやさぐれた子どもだった私に彼女はいつもまとわりついてきては私の心を和ませてくれた。そして、あの日の幼い約束は私の生きる糧になっていた。


とにかく彼女が帰国するより先にこちらで粗方の資格を得て最短で帰国し、約束通り彼女に相応しい地位を手に入れなければ。彼女を失望させるだけでなく、自分自身耐えなれないだろう。

若い主に一足先の帰国予定を告げると驚いていたがそれ以上深くは聞かれなかった。私の計画が成功すればもう彼の下で執事として働くことはできなくなるだろう、その事が心苦しく思えたがそれでも私は大切なものを手放すまいとあらためて誓う。それを自覚させたのも奇しくも彼、ニーム・ロドリゲス・ガウスである。彼と彼の侍女の深い所での心の結びつきは私以外にも影響を与えている。だから、ジルベール殿下も改めて自分自身の言葉でヴィルヘルミナ様に再求婚しそれを受け入れられた。危うく破談となる危機の両国の婚姻届を救ったのはこの主と忠実な侍女だ。


全く、羨ましい。無自覚無意識の心の繋がり。いつか、彼らが良き日を迎える事を望むのは私だけではないだろう。

さて、ウルヒリでの仕事は粗方終えた。全ての魔法を総括するニームに値する推薦状もいただいた。あとは、無事にヴィルヘルミナ様の婚礼の儀を見届け帰国の前に彼女に今の気持ちを聞かなければならない。


できるなら、あの頃のままであってほしいと望むのは勝手すぎるだろうか?

幼い二人が指切りをして約束したあの事は今でもまだら有効だろうか・・・・。

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