彼女の想い
あれは何だったのかしら?
久しぶりに話したと思えばいきなり忙しくなるし婚礼の儀の後は一足先に帰るなんて。もしかして私の話のせい?
いやいやまさかそんな。期待するだけ馬鹿みたいな思いは今まで何度も味わってきた。
・・・まさか、転職?あり得るわ。私が実家に帰れば嫌でも今まで以上に顔を合わすし。でも・・・そんなに迷惑?
「アナスタシア様、オブリーさんは何か急用を頼まれたのでしょうか?婚礼の儀の後早々に帰国すると言ってきたんですが。」
「あら?あなたも理由を聞いてないの?」
「はい、ただ最近魔法省に通いつめていてなんだか忙しそうで。」
「ふーん。何かしらね?私も聞いてないの理由は。ホームシックかしら。」
一応、主であるルディにまで内緒の帰国理由。やっぱり私かなぁ、しつこく想いすぎたかしら・・・。私がお嫁に出ればずっと離れの執事で居てくれるのかしら?そうすれば里がの度に会えるわけだし・・・。でもね、女としてはやはり愛のない結婚は嫌なのよ。
ふと、呑気にお茶を飲んでいる魔法使いに目をやる。いいなぁ・・・。ヴィルヘルミナ様も言っていたけどお互いを信頼し大切にしてるもの。それって、理想じゃない?
「ね、ルディはカリンをどう思ってるの?」
「なんですかいきなり。」
「いいから、どうなのよ?」
「ん〜、大事にしたいですね。特に今回の事がありましたし。これからはいっそう僕の方が護ってやらなきゃ無茶を重ねるだろうし。それに、僕はこれでも後見人ですからお嫁に出すまでしっかり見守らないと。」
駄目だこりゃ。完全無自覚、でも羨ましいなそんな大事に思われて。
「あ!そういえば、婚約披露の時に控え室にいらっしゃったじゃないですか。あの時帰り際にカリンがアナスタシア様に何か耳打ちしていましたけど、なんて言われたんです?」
・・・今それを言う?言えるわけないじゃない。
「別に、今日のアナスタシア様は素敵でしたって感じの事よ。」
しれっと答えた。
「ああ、確かに。あの日ダンスの最中見えたのですがオブリーさんとすごく親密そうで僕もお似合いだな〜ってあの時思ったんですよ。」
こいつ・・・しっかり見てたのね。
「帰国したらご実家に帰られるんですよね?カリンが喜んでいました。なんでも癒術をもう少し習いたいんだそうで。あ、もちろんお時間のある時でいいのですがお願いできますか?」
「いいわよ。どうす暇で退屈な日々がまっているんだから。」
それからしばらく世間話をしてルディは帰って行った。どうやら婚礼の儀に向けてカリンが神殿に借り出されて暇を持て余しているようだ。
「結局、エイナルの真意は解らず・・・か。」