幽冥楼閣の亡霊少女と蒼穹の瞳
「そうなのよ、藍ってば蒼尾にはものすっごく甘いのよ?」
「あらぁ~今でもなの?」
「はい、正直も慣れてしまった私が可笑しいのでしょうかね・・・」
蒼尾は紫、幽々子の会話の話題にされていた。蒼尾にとっては何でも無いのだが
内容が母が自分に対しての、甘さの事であるので溜息が絶えない。
「でも、蒼尾君も随分凛々しいと思うけどね~」
「そう言ってくださるだけで恐縮至極で御座います。幽々子さん」
「本当に貴方って藍の息子よね~・・・その肩苦しさも母親そっくりね」
紫は蒼尾の肩苦しさが藍そっくりである事に呆れた。幾ら息子であるとしてそこまで
似る必要は無いだろうっと思っている。正直、蒼尾は人間で言う所の20代と同じ精神
もっとフランクさがあっても問題ないと思っている。
「そのお言葉は褒め言葉として、受け取らせて頂きますよ紫様」
「まったく・・・そうだ、ちょっと貴方の母親の主として、ちょっと命令するわね」
「は?はい、なんでしょうか?」
蒼尾は急に紫が、自分に命令すると言われ少し不意を突かれたような顔をするが
直ぐにキリッとした顔付きに戻した。紫は扇子で口元を隠してこう言った
「貴方は数日の間、白玉楼に留まってちょっと修行なさい」
「はい!・・・ってえ?」
蒼尾は勢いで頷いてしまったが、何故?っという声を上げる
「あら、いいのかしら紫?私としては別に構わないのだけど?」
「ええ、全く問題はないわ。藍には適当に言って誤魔化しておくわ。それじゃ」
そう言って紫は、さっさとスキマを開いて去っていった。蒼尾はあまりの事にポカンっと
している。幽々子はその蒼尾の顔を見て、少し楽しんでいる。
「え~・・・紫様、一体何ををお考えなのですか・・・」
「考えるだけ無駄だと思うけど?紫の事だし」
「そうでしょうね・・・」
蒼尾は諦めたように溜息をついた、紫の突然の行動に振り回されたのは1回だけではない
母同様に紫に振り回されている。
「では、数日の間ではありますが宜しくお願い致します幽々子さん」
「はい、数日だけど宜しくね。あっじゃ暫くは蒼尾君は私の従者って事かしら?
紫も修行しなさいって言ってたし」
確かに紫は数日の間、白玉楼に留まってちょっと修行しろっと言ってた
それは幽々子の従者になれとも取る事が出来る。幽々子は嬉しそうに顔を綻ばせて
扇子で口を隠した
「それじゃ、私の従者になったんだから先輩を紹介しないとね。妖夢~妖夢~?」
幽々子は声を出して誰かを呼んだ。すると程なくして廊下から此方に走ってくる音が
聞こえてきた
「幽々子様、お呼びですか?」
襖を開けて顔を覗かせたのは
白い短めのYシャツのような服の上に、緑色の上着とスカートを履き
胸元と頭に黒い飾りを付けた少女、そして彼女の周りに白い幽霊のような物が浮遊している
その少女は幽々子に向かい合うように座っている蒼尾を見て、首をかしげた
「幽々子、そちらはお客様ですか?本日は紫様がいらっしゃるとは聞いてはいましたが」
「ええ、紫の式、藍の息子さんの八雲 蒼尾君よ。数日、私の従者になる事になったのよ
貴方も挨拶してね」
妖夢は幽々子から話を聞いて、納得したような顔をして正座をして
蒼尾に向かって頭を下げた
「そうでしたか、私は西行寺 幽々子様に仕える剣術指南役兼庭師の魂魄 妖夢と
申します。宜しくお願い致します、八雲 蒼尾様」
蒼尾は妖夢の丁寧な自己紹介を受けて、自分も妖夢に身体を向けて、綺麗な正座を保ち
そのまま頭を下げた
「此方こそ宜しくお願い致します、私は八雲 紫様の式である八雲 藍の息子
八雲 蒼尾っと申します。何かとご迷惑をお掛けするかもしれませんがなにとぞ
お願い致します、それと私の事は蒼尾と呼び捨てにして貰って構いませんので
魂魄殿」
「私も妖夢で結構です、蒼尾さん」
そう言った所で、二人は同時に頭を上げてお互いに微笑んで、握手した
「あらあら、仲良くなってなによりだわ~」
そして、紫の気まぐれか否か解らぬが、蒼尾の白玉楼での修行が始まった