蒼尾、吸血鬼と戦う
「さて、俺はそろそろ行かせて貰うよ」
紅茶、美味しかったっと小悪魔に礼を言いながら立ち上がる。
「もうお帰りかしら?」
「否、此処の主との約束を果たす……俺と遊びたがっている御嬢ちゃんが居る。そうだろ?吸血鬼の御嬢ちゃん」
そういい、鋭い目でパチュリーの背後の本棚を睨み付ける。暫しすると、そこから一人の少女が出てきた。妖しくも美しく輝く七色の宝石が果実になっている翼、幼くも、その瞳に宿した狂気。そして、全身の毛が逆立つような感覚が襲ってくる、肌で僅かな空気の乱れも感知できるほどに神経が研ぎ澄まされている。そこから出てきた金髪の少女は、狂気に染まりきった笑顔を浮かべながら。
「フ、フラン!?」
「へぇ……魔力は極上の域、それに比例する能力を持っているようだな。楽しめそうだ」
「ふう~ん、お兄ちゃんが遊んでくれるの?」
虚ろな瞳に浮かんでいるのは狂気だけだった、何処かで見たことがある瞳。いつぞやの自分のような哀れな目だ。
「まあそんな所だ、だがその前に名ぐらいっ!!!」
そんな事知るかと言わんばかりに、ほぼ全方向から弾幕が襲い掛かった。
「そ、蒼尾!?」
「ご、ご無事ですか!?」
「あ~あ、やっぱり直ぐに壊れちゃった」
「誰が壊れたって?」
残念がった少女だが、声が聞こえると直ぐに目を輝かせた。煙が晴れると髪を擦りながら体の骨を鳴らす。そして7本の尾は自らの意思を持っているかのように伸縮し、少女へと襲い掛かった!
「きゃははは!!凄い凄い!!」
七尾槍、それもまるで銃機関銃の如き連射速度。七本の尾を凄まじい速度で伸ばしては戻し、伸ばすのを繰り返しているだけだが見ている人間からしたら尾が大量に増えているように見える。だがそれを少女は完全に見切って避けている。
「おいおいこれを避けるかい?やるな、なら直接!!」
拳を握りなおすと色が変化する。シミが無い白い肌は鋼鉄の如き色へと変化していく、そのまま跳躍して少女へと殴りかかる。が
「ヒュウ、これも止めるかい?」
「お兄ちゃん凄いね!!」
これもまたあっさり受け止められてしまった。二人は直ぐにはなれ、少女は周囲に弾幕を展開する。が蒼尾は2枚の札を取り出した。
「零下の氷よ、砕け!!」
札を投げる、投げられた札は少女へと向かっていく。途中で無数の数へと分裂し少女を包囲していく。
「こんなお札なんて!」
札を突破しようと強行突破しようとするが、札に触れた箇所、手、足が
「きゃっ!!ど、如何言う事なの!?」
「ふっ掛かった!」
凍結した。瞬時に凍りついた。
「甘いなお嬢さん、グッバイ!」
「きゃあああああああああ!!!!!!」
札が炸裂した大きな爆発が巻き起こる、中にいた少女は少しボロボロになって床へと落ちる。
「ウ~……なんか解らないけどすっごい疲れた……」
「当たり前さ、今の術は囲まれた対象の魔力を強引に放出させて爆発させるって物なんだから」
少女を立たせながら行った術の説明をする蒼尾、それに熱心聞き耳を立てながらメモを取るパチュリー。どうやら興味が湧いているらしい
「さてと、まだやるかいお嬢ちゃん?」
「んっ~………疲れちゃったから良いや。でもまた遊んでくれる?」
「勿論、今度は真剣にお相手させてもらうさ」
それを聞くとすやすやと寝息を立て始める金髪の少女を抱き上げて適当な椅子に座らせて寝かせてやる。一方の蒼尾は全く疲れた様子も見せずに汗を少し欠いている程度、パチュリーはそんな蒼尾を信じられないという目で見ている。フランの強さを良く知っているからだ。自分も対抗する事は出来るがそれは吸血鬼という種族の弱点を付いての事、だが目の前の七尾の青年は真っ向から戦って勝利したのだ。
「良く、勝てたわねフランに」
「ん?そりゃねぇ、幾ら力が強かろうがそれをうまく使えるだけの経験と技量がなかったったらただの雑魚と同じさ」
「確かにその通りだけど………「それに
―――八雲 紫様の式、八雲 藍の息子だ」