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目覚め

なあ、・・・。聞いてもいいか?


なぁに?


お前は、私と一緒にいれて幸せか?


うんとっても。だって、お母さんと一緒に居られるだけで幸せだもん!


・・・


大好きだよ!お母さん!


私もだよ、 ・・・ 


「・・・」

「藍、どうしたのよ?」


幻想郷、人間と妖怪が共に暮らす理想郷であり、楽園と呼ばれている世界

その幻想郷を作り上げた妖怪の賢者、八雲 紫は自分の式神である九尾の八雲 藍が

食事をしている時に箸を止めて外を見つめているに気づいて声をかけたが

藍はぼ~っとしたまま外を見つめている


「藍!」

「・・へ!?はっはい!」


藍は紫に強く呼びかけられて漸く気づいたようで、尻尾を大きく揺らして紫のほうに向き直った

紫は溜息をつきながら、箸を置いた。


「一体如何したのかしら?外ばかり見て」

「いえ・・・その・・・」


藍は顔を下に向けた、まるで紫の視線から逃げるように


「・・・紫様・・・蒼尾が眠りついて今日で500年だと思いまして・・・」


紫はそう言われると少し悲しそうな顔になった


「そうね・・・早いものね。貴方の子供が眠りに付いてから

もうそんなに時間がたったのね」

「ええ・・・紫様と出会って前に心から愛した人と間に生まれた蒼尾は・・・

まだ起きない・・・」


藍が言っている蒼尾というのは、八雲 藍がたった一人だけ本当に

互いに心から愛し合った男と間に産まれた子供で、狐と人間の半人半妖だが

父が死んでから異様と言えるほど力が増して行き、藍に追いつく程だっだが

紫が制御の為に一時的に封印を掛け、蒼尾は眠りに付いたのだが

封印を解いても蒼尾は目覚める事は無かった。それはもう500年も前の事だ。

その間も藍は時間があれば蒼尾の傍に居た。もしかしたら蒼尾が目覚めるかもしれない

っという願いがあるからだ。でも蒼尾は一向に目を開こうとしない死んでいるかの様に

眠っている。


「・・・紫様、お先に失礼します・・・」


藍は席を立って食器を流しに置き洗った後、そのまま居間を出て行った。

それを見送った紫はお茶を啜った。苦味がある筈なのに、少ししょっぱく感じた


藍は廊下を歩いてそのままある部屋に向かって行った。その部屋の襖開けると1枚の布団が敷かれていてそこには、藍と同じ金色の髪に藍よりも白い肌に藍似の顔付き。

一見女の子に見えるが眠っているのは藍の息子、蒼尾そうお


藍は眠っている蒼尾の頭を撫でた


「蒼尾・・・早いものだな、もう500年も経ってしまったとは・・・

蒼尾、お前は眠る前に言ってくれたよな?封印が解けたら・・・私と笑いたいって」


すると一滴の水滴が、蒼尾の顔に落ちた。それは藍の涙だった


「頼む・・・起きてくれ、蒼尾ぉぉ・・・」


藍は涙を流し懇願する、起きてくれと・・・大粒の涙を流しながら蒼尾の手を握り締める

涙は蒼尾の顔に落ち続ける、がその時!


「うぅん・・・」

「!!?」


藍は小さいが何所からか声が聞こえた事に気づく、それは記憶に刻み込まれている

蒼尾の声と一致した。藍は蒼尾の顔を凝視した


瞼がゆっくりと開いて行き、まるで青空のような綺麗な蒼色の瞳が見えた

まだ寝ぼけてるかのような瞳は藍を見つめた


「お母さん?」

「蒼尾・・・おはよう」


藍は涙を拭いて、蒼尾に笑顔を向けた。蒼尾もそれに答える様に微笑んで


「おはよう♪」

「蒼尾、蒼尾、蒼尾!」

「お、お母さん?」


目覚めた蒼尾を待っていたのは、母、藍の抱擁だった。


「ああ・・・蒼尾、蒼尾、蒼尾・・・ああ・・・これだ・・・

蒼尾の温もり・・・これを求めていたのだ」


藍は蒼尾を抱きしめる腕に更に力を込めた、500年も眠りから目覚めるのを

待っていた蒼尾が目覚めて今、自分の腕の中にいる。それが嬉しくて堪らないのだが・・・


「お母さん・・・苦しいよぉ」


蒼尾は藍の豊満な胸が顔に押し付けられ窒息しかけているのだ。蒼尾は手で藍の身体を叩いて伝えようとするが藍の9本の尻尾も、蒼尾に巻きついている為に蒼尾は身動きが出来ない。

次第に蒼尾の腕は垂れ下がっていき、蒼尾の意識は遠のいていく、すると畳の一部が

割れるように裂けた。避けた空間は両端がリボンのような物で結ばれて

たくさんの目が見えている空間から紫が顔を出した。


「蒼尾が起きたみたいねって、藍、いい加減に離してあげなさい。

また永い眠りに着きそうよ」

「え!?」


そう言われて藍は蒼尾から離れた。それで蒼尾は漸く息が出来るようになり

大きく息を吸っては吐き吸っては吐き呼吸が落ち着いて所で、ウルウルとした涙目で藍を見つめる。とても可愛らしく藍はドキドキするが、直ぐに拙いと思う藍。


「お母さん・・・酷いよぉ・・・僕が何かしたの・・・?」

「うわぁあ!すまない!蒼尾!!久しぶりにお前を抱きしめる事が出来て嬉しかったんだ!」


藍は蒼尾の肩に手を置いて平謝りしている。九尾の狐は数々の伝説にあるように

それ自体が最上位に位置する力を持つ強力な妖怪であって、

そんな存在である九尾の藍が息子とはいえ平謝りしているのはある意味凄い光景である。

因みに蒼尾の年齢は672歳の六尾。

紫は流石に見ていられなくなったのか、それとも自分の式の姿が見ていられなくなったのかは解らないが

蒼尾に近づいて、蒼尾の頭の上に手を置いた。


「うぁ?」


蒼尾は頭に手が置かれたのに気づいたのか、後ろを向いて紫に気づいたのか、1歩、紫に近づいた


「その辺にしてあげなさい」

「???お姉さんは誰?お母さん、この綺麗なお姉さんお知り合い?」


蒼尾は疑問に思った事を口に出したのだが、その言葉が紫に突き刺さった


「い、今なんて言ったのかしら?」

「???お母さん?」

「その少し後よ」

「この綺麗なお姉さん?」

「それよ!!」


紫は蒼尾を抱き上げて抱きしめた。力の加減はしているようで蒼尾はまったく苦しがってはいない


「貴方最高よ!みんな私の事ババアとかそう言う事ばっかり言ってくるのに貴方ったら!!」

「ババア?え?だってお母さんと同じぐらい綺麗で優しそうで暖かいお姉さんでしょ?」


蒼尾は紫の温もりが藍と似通っているを感じたのか、藍と紫を見比べるように視線を向けて言う蒼尾

その言葉に紫は勿論、藍も喜んでいた


「もう貴方はどれだけ良い子なのよ~!藍!この子とっても良い子だわ~!!」

「でしょう!?私の自慢の息子ですもん!!」


藍は紫の言葉に同意しながら、紫が抱いていた蒼尾を奪還して抱き直す


「お母さん・・・暖かい・・・すぅすぅ・・・」


蒼尾はやはり母の温もりが一番なのか、再び瞳を閉じて穏やかな寝息を立てて、眠り始めた


「蒼尾!?」


藍は眠った蒼尾を見て大いに焦った、再び永い眠りについてしまうのではないかと。

が、その眠りは本当にただの睡眠だと藍は感じ取ると、安心して、蒼尾を布団に寝かせた


「蒼尾・・・お前は私の宝だ・・・私は永遠にお前を愛し、絶対に守ってみせる・・・」


藍は蒼尾の寝顔を見て心に誓った。絶対に蒼尾は自分が守って見せる

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