サプリメント
近所の小さな薬屋さん。小さなネタが転がる店の筈だった。しかし、〈裏日本、うふふんジャポンへようこそ!〉って事になって、今や僕は犯罪者?
今日は、出勤しなくて良いと言っていたので、通りすがりに立ち寄ってみた。
【身体の資本は、栄養から!!】
最近思うのだが、この宣伝用紙、あの店主が書いてるんじゃないんじゃないのか?
と、店内へ。今日の目玉商品は……、サプリメントか……。
『て言うかさ、毎日毎日目玉商品ころころ変えて、どうすんの? って、僕が考えても仕方がないか……』
【ダイエットをすると、気になるのが栄養バランスの偏り。だからと言って、栄養バランスを気にしていたら、ダイエット出来ない。そんなあなたに、新商品。《私はこれでキレイになりました!》】
『……っと、もうツッコミを入れるのも面倒臭いな。とは思いつつ、恒例行事なので、「誰がキレイになったんだよ!?」と、これでいいか……。ええっと、何々?』
【このサプリメントは、他社の販売するサプリメントのように、個別に効果を分けていません。そのため、一日に必要な栄養が、毎食時に一粒飲むだけで摂取できます。しかも、満腹感を得られる効果も付いているので、間食の心配はありません】
か……。
『コイツのヤバイ点は……。ゲッ! 商品の蓋の裏側に書いてやがる! 絶対捕まるぞ! 詐欺だろ!? 確信犯的詐欺だろ!?』
【この製品には、膨張剤が大量に混入されています。一食につき、一粒以上摂取しないでください。また、栄養成分を全て混入したため、どんな副作用があるか不明です】
開けてしまった商品を店主の所に持って行くと、店主は何も言わずにそれを受け取り、そのままゴミ箱に放り込んだ。
「あの……」
僕が口を開いた途端、
「じゃあ、今日は、裏日本うふふんジャポンの説明だったのぅ」
と、既にスイッチが入っている。
店主の口調で話されると、かなりウザイので、簡単に説明するとこうだ。
【裏日本うふふんジャポンは、日本の経済情勢を黒字化させるべく設立した闇の薬品販売業者らしい。しかも、この店で売られているあの商品達にも、きちんと注意書きがされているので、苦情がきてもよく見ないのが悪いと、追い返しているらしい。そして一番質が悪いのは、製造販売国・製造会社が明記されておらず、一定の場所で販売を行う事は、ほぼ皆無だという事だ。省略して言うと、計画的詐欺会社。しかも、国営の。このうふふんジャポンの総責任者は、僕の目の前にいるオッサン。そして、表舞台の日本が国債を増やす一方、うふふんジャポンが、国債を減らしているらしい。つまりだ。裏日本うふふんジャポンは、国が認知している、国営のワールド詐欺会社って事だ】
「だから、僕は……」
そう言おうとして、口を開くと、
「やはり、儂の目に狂いはなかった……。これからも頼むぞ。若人よ」
と、いつもの何かに取り付かれた台詞と共に、薬屋から追い出された。
『あ、明日から……、どうしよう……』
いつにも増して、僕は重たい足取りで家に帰っていくのだった。
ちょいと無理押し?