入浴剤(温泉の素)
このはな さくら様のリクエストお題です。
温泉。それは、日本人の最大の癒しにて、最高の療養スポット。でも……。
『僕には、そんな温泉に行く、お金も、時間も、無いんだぁぁ!! ハァハァ!』
と、いう訳で、今日もやって来ました近所の小さなあやしい薬屋さん。ここならきっと、見たこともないような、入浴剤が置かれているに違いない。
ガラガラとガラス戸を開けて入店。
『う! な、なんだ……、こ、この臭いは……。店全体から、漂っている気がする……。と、今は入浴剤だ。入浴剤っ……と』
陳列棚を端から順に見ていくと、あったよ。あった。でも……。
『あれ? 一番の一押し入浴剤? 秘湯巡り? って一つしかないじゃん!』
【家庭のお風呂で温泉気分。効果が持続するから、リピーター続出! もう二度と、他社の入浴剤なんて見えなくなること、間違いなし!】
『なんだ、この強気な商品は……。【商品名《この温もりがたまらない》って、ネーミングセンス! もう少し何とかならんのか!?』
【この商品は、家庭用入浴剤です。浴槽一つに本品を一袋入れるだけで、あなたのお好みの温泉に早変わり。香りは気からと言いますので、入りたい温泉に入った気分でお楽しみください】
『へ? どこかの温泉みたいになるんじゃ……』
【使用上の注意。におい成分が強く、身体ににおいが付着します。(付着する可能性がありますなんて、あやふやな事は言いません)また、効能はあるかもしれませんし、ないかもしれません。効能:しもやけ・リウマチ・肩凝り・腰痛・四十肩・あせも・アトピー・水虫・短足(に効きますとは言いません)】
『なんだ! この商品は、なんだ!! ある意味、効能……皆無じゃんか……ってこの臭い! ……店長!!』
慌ててカウンターを見ると、店主が黄色いオーラに包まれて、手を振っていた。
『こんな臭いが付いたら、どこにも行けないじゃないか!?』
そう思って、慌てて外に出たけど……。僕……なんだか臭くない?