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S.U.B.N.E.T. ~牛乳AIロボと40代のおっさんが築く、ゾンビ禍の秩序~  作者: gagriongalrion
日本編

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鉄槌と居合:戦闘後の死体処理と火山ガス防壁計画


 巨体は、そのまま音を立てずに沈黙した。丸薬による過剰な生命活動は絶たれ、その頭部は硫黄の煙の中に転がった。

 折原は戦闘スーツの右腕を軽く振り、ブレードに付着した体液を払った。

「戦闘終了。エリシオン、周辺のガス濃度と、残存敵の確認を。そして、AIロボ部隊の被害度と影響を確認してくれ。」

『解析完了。ガス濃度は浄化パウダーにより一時的に安定。残存敵は付近に存在しません。戦闘AIロボット二機の稼働率、89%。リソースの損失は、最小限に抑えられました。旧型AIロボの被害度は60%ですが、新たな部品を交換すれば、あとは修理可能です。』

 折原は一息つき、目の前の巨体を冷静に見つめた。

「なあ、エリシオン…このデカブツをなんとか倒せたんだが、今後に備えて更に修行が必要になりそうだな。今後、こういった強敵が出てこないとも限らない。AIロボの強化、更なる武器や防具の強化開発が必要になりそうだ。」

『了解しました。今回の戦闘データと、強化個体がもともと通常のゾンビであったという事実を基に、次回以降の迎撃プログラムと装備拡張のシミュレーションを開始します。数年前から計画していた強力な兵器を急いで開発を進めます。』

「その兵器が出来ていたらもっと楽だっただろうな。よし。次は戦後処理に移ろうか。んっ?」

 折原は強化ゾンビの鉄槌によってつぶされた残骸に目をやった。その残骸の目の部分が光っていたのがわかった。

「ああ、生きていたんだな。よかった。エリシオン、RH-03が生きていたぞ。回収してくれ。」

 HUDの記録では『RH-03』に【DECOMMISSIONED (解体)】と赤表示が出ていたが……)了解しました、折原様。位置を確認しました。回収部隊に伝達します。」

 RH-03は目からオイル(冷却水)が、まるで涙のようにあふれているように見えた。

 やがて、RH-03は回収部隊により回収され、慎重に修理工場へ運ばれていった。


 折原は即座に戦場に残された巨大なゾンビの死体に目を向けた。この体組織は環境兵器として利用される可能性が高い。腐食ガスの発生として利用されることは絶対に避けなければならない。

『エリシオン、燃やしたら有害な煙が出るだろう。頼むぞ。』

「了解しました。特殊火葬機「フェニックス」出動。ガス流出防止プロトコル起動します。」


 上空から、小型のドローン部隊が巨大な強化ゾンビの死体を覆うように降下してきた。ドローンは、硫黄のガスが充満する火口縁でも使用可能な、耐圧性の高いナノファイバー製の特殊なシートを展開し、死体を完全に密閉する。

 次に、シート内部にプラズマ炉を搭載した特殊火葬機が接続され、超高温処理が開始された。

「これで煙は大丈夫そうか?」

「ご心配なく。特殊火葬機PHX(フェニックス)は、燃焼時に発生する排気ガスをプラズマ炉で再燃焼させ、最終的に無害な無機ガスに変換します。環境への影響はゼロです。」

 数十分後、強化ゾンビの巨体は完全に灰となり、無害な状態で回収された。

「それってすごいんだな…。普通は1体当たり1時間はかかるだろうに…。」と折原はかつて祖父の葬式後の火葬に立ち会ったことを思い出した。

 灰が静かに舞い落ちる。

 折原は片手を胸に当て、そっと目を閉じた。

「……安らかに」

 誰に聞かせるでもなく、ただ灰に向けて。

 強化ゾンビであろうと、元は人間だ。

 その最期に、せめてもの敬意を。

 エリシオンは無言でその様子を見つめていた。


 死体処理はまだ途中であったが、視察を終えた折原は、火口からやや離れた場所で、エリシオンからの報告を聞いていた。

「結局、知的ゾンビの本体は、ドローンを広範囲に展開しても見つからなかったんだな。」

『はい。最後に確認されたエネルギー反応は、丸薬を渡した後、急激にゼロになりました。これは、瞬間移動テレポート、もしくは超高速の隠密行動の可能性を示唆します。』

「テレポートか…。あのひょろひょろしたなりに知性と能力を見る限り、あり得ない話ではないと考える必要があるな。」

 どこかでクシャミがする音がなっていたが、火口付近の強い風の音のためにかき消されていたため気づかなかった。そう、知的ゾンビは火山縁の陰に隠れていたのだった。『クッ、ダレカ・・・ワタシノ・・・・ウワサヲ・・・・シテ・・イルナ・・・。』(結局、この知的ゾンビは明け方まで火口の陰に潜み、硫黄の煙に紛れ込んですんなりと逃走を果たしたのであった。)

 そして、折原は、今回の戦闘で得たデータと、今後発生しうるリスクを統合し、制圧計画の最終フェーズを決定した。

『折原様。今後の制圧計画について、阿蘇火山防壁プロジェクトを提案します。』

「おっ?それはどういうものなんだ?」

『周辺の火山活動の影響を最も受ける火口外縁から半径5キロ圏内を対象とします。ここに、現在配備されているナノセラミック複合素材よりもさらに高い耐腐食性・耐圧性を持つ特殊な壁を建設します。高さ10メートル、厚さ2メートル。』

「…その目的は何だ?」

『ゾンビや腐食ガスが火口から外部へ侵入するのを物理的に防ぎ、阿蘇山全体を隔離封鎖することです。この壁を完成させれば、たとえ知的ゾンビが再び環境兵器を利用しようとしても、その影響を火口内部に完全に閉じ込めることができます。』

 折原は、スーツのグローブを外しながら、冷たい岩盤を指先で叩いた。

「ああ、たいしたものだ。よし、エリシオン、この計画を実行してくれ。建設速度は最短で。奴が次に何を仕掛けてくるかわからないからな。」

 制圧の第一段階は完了した。

 こうして、折原は戦後処理を回収部隊に任せ、日没前に基地へと帰還した。彼らは夜通し作業を行うため、死体処理の完了は早いだろう。

 基地に帰り着いたのは夕方であった。

「今、世界はどんな感じなのだろうな…。」

 ふと折原はこう思った。

ーーー知性を得た敵の本体が次に使う「奥の手」は、折原の予測を超えるものになるであろうことは、もはや確実であった。


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