宣戦布告
更新、すごく遅れちゃいました!
「んッ・・・」
「お、起きたか!」
サキが目を開くと、目の前にイタチがいた。しかも着物を着て、喋っている。
確か、こいつは・・・
『館』の住人其の四だったはずだ。名前は凪。十歳の鎌鼬の少年で江都の花街の近くで医者を営む妖怪の孫らしい。元気過ぎるガキ大将でサキも妖界に来てから会う度に振り回されている。しかし、医者の孫というだけあって医療の知識があるので喧嘩の仲裁に入って傷を負うこともある〈烏天狗〉では重宝されている。
今回は元気なガキ大将ではなく、医者としてサキの様子を診ていたようだ。
サキは自分が泊っている部屋のベットに寝かされているようだ。
まだ、頭が混乱している。感覚的には失神してその後沙雪と話し合い、また意識が薄れたと思ったら、気が付いたら自分の泊っている部屋───という感じだ。なので、まったく休んだ気がしない。
体力は回復しているようだが、精神的には疲労している。
そんなサキのことを知って知らずか、凪は部屋のドアを開けると「おーい、みんなー!沙雪さまが起きたぞー」と大音量で叫んだ。
凪の体に合わぬ大きな声にサキが思わず耳をふさいでいると、廊下からドタバタと音が聞こえて銀次をはじめとした『館』の住人たちが体の小さい凪を吹っ飛ばす勢いで───否、実際に吹っ飛ばして部屋になだれ込んできた。
「あ、凪。すまないねェ」
「沙雪様、大丈夫ですか!?」
「にしても、あの人間の小娘が沙雪様だったとはのう」
「ふーん、僕が出張してる間にこんなことになってるなんてなぁ」
「沙雪様、大きくなっても相変わらずかわいいです!」
わわわわわっ
いきなり全員が話し始めたので、ただでさえ混乱している頭がもっと混乱してきた。すると、「やあ」と言いながら最後に入ってきた紫月が皆を押しのけた。強引に。
銀次と住人一同は画面外に押し出されるようにサキの前からいなくなった。
「紫月、乱暴な真似はやめてください」
「沙雪───じゃなくて、その反応はサキちゃんかな?」
「そうですが」
「ふんふん。ねぇ、沙雪ちゃんはなんて言ってた?」
サキの頭の中をを読んだようなことを言う紫月。もしかして、寝言でも言っていたのを聞いたのだろうか。
ほう、話が早くて助かる。
「沙雪は体の『所有権』は私に託すと。後、九頭竜学園の拾壱年生に入学し直すように言っていました」
「「「所有権・・・」」」
住人一同と銀次は微妙な反応をしたが、弁解に徹すると面倒臭くなるのでサキは淡々と話を続ける。
「それと、妖界に残るかどうかも私に任せると言っていました」
「ほう・・・!君はどうするんだい?」
紫月がベットの淵に手をかけてこちらに乗り出してくるので、サキは思わず後ろに引いた。
「私は・・・」
待てよ・・・
そこまで言いかけて、サキはあることに気が付いた。
「さゆ・・・じゃなくて、サキ、どうしたんだ?頭でも痛いのか?」
「・・・いえ。私、妖界に残る心算でいたんですけど、よく考えたら私は人間界に帰れませんよね?」
まず、サキを犠牲にして助かった(?)彼氏にはどう、接すれば良いのか。自分が妖怪であることをどう、数少ない友人達に説明するのか。この二つは「嘘だ」言われるか、怖がられるかのどちらかだ。前者は別に良いが、後者となると色々面倒そうだ。後者で一番懸念すべきは、噂として広まらないかということだ。動物園などに行くのはまっぴらごめんだ。
何より、お父さんはサキが人間ではないと知っていて父親をやっていたのではないだろうか。
サキは不確定要素が多いまま、人間界に行くのはいけないような気がした。
妖界にいた方が問題少ないような・・・
それを紫月達に話すと、そろって考え込んだ。
「確かに、その通りだね。まぁ、私達が妖界で上手くいくよう、支援するけど・・・でも、私との婚約は避けられないよ?」
「別にいいです。私にとってはそんなもの問題ではありません」
「ふーん、私との婚約を破棄することがサキちゃんにできると?」
「いいえ、婚約するのは問題ではないと言っているんです。でもいずれ、そちらが破棄したくなるようになりますよ?」
「ハハ、望むところだね」
フフフと不敵な笑みを交し合うサキと紫月。それはもはや、宣戦布告だった。
「なんか、沙雪様と紫月は何かとバチバチだけど、サキ(?)と紫月も違う意味でバチバチだねェ」
「そうだな」
アズサと銀次は笑顔で睨み合う二人の後ろでボソッと遠い目をして言った。
読了ありがとうございます。
自分の作品がどれほどのものか知りたいので、評価などなどよろしくお願いします。
(不定期更新なので、とても空くことがあります)




