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謎解きタイムー出た結論ー

今度は4000文字オーバーしました。

どういう風に書くかは分かってるんですけど、文章に書きだすのがめちゃ遅いです。

「それで、沙雪様はどこにいるんだ?」

「フフフ・・・銀次はせっかちだなぁ。そう慌てなくとも、沙雪ちゃんは見つかるよ」


 先程の真剣な顔はどこへやら。いたずらっぽそうな笑みを浮かべた紫月は、かなり上から目線で銀次に言った。

 咲希達は紫月の言う通りに庭の広場のようになっている所へ移動した。つくづく、広い庭だ。武家妖怪の子供の屋敷だと考えれば、無理もない話だが。


「じゃあ、沙雪ちゃんが出てくるまでの時間、ただの前置きとも言ってもいい私の推理をお聞かせしよう。あ、どうしても探しに行きたい人はどーぞ。ま、絶対見つかんないとおもうけどねー」


 非常に失礼なことを言ってくれる紫月。銀次の方が年上で、恐らく成績も上だというのに。まぁ、これがこいつのいつもの様子なので、咲希は放って置くことにした。何しろ、一々突っ込んでいたらこっちが疲れてしまうのだ。


「まず、なぜ沙雪ちゃんと花吹雪様が人間界に行ったのかというと、沙雪ちゃんが花吹雪様から逃げたためだ。刺客の可能性もあった訳だけど、前々から二人の不仲は知られていたことだしね」


 「ムッ」と顔をしかめる銀次を放っておいて、紫月は話を進める。


「後、沙雪ちゃんは報告書にあった通り、『百代に一人』と呼ばれる妖怪だし、花吹雪様だってそこそこ腕が立つ。そんじょそこらの刺客じゃ負けないはずだ。喧嘩した結果、沙雪ちゃんが人間界まで逃げなければいけないほど花吹雪様が追い詰めたというのが一番、自然だ。と、ここまではいいのだけれど・・・」


 そこで言葉を切ると紫月は桜の木の方を向く。その目は少し、悲しそうに見えた。


「ここで、二人が面会で話し合っていたことが関係してくる。恐らく、私と沙雪ちゃんの婚約に関することが話し合われていたのだと思う」

「! ちょっと待ってください。今、『婚約』って言いましたよね?」

「うん」


 待て待て、確か沙雪は七歳では・・・?

 銀次が読み上げていた報告書には「〈九頭竜学園・弐年生(にねんせい)〉と書かれていた。対する紫月は十七歳・・・十歳差だ。

 銀次が「沙雪様」と呼ぶのに対して紫月が「沙雪ちゃん」と呼ぶ理由。身分の違いかと思ったら、婚約関係の方だった。咲希は吐き気がした。


「政略結婚だ。人間界では少ないようだが、妖界(ここ)では珍しくない。・・・まぁ、コイツの場合、前々から沙雪様にゾッコンだったんだがな・・・」

「だって、沙雪ちゃん可愛いもの。あのサラサラした髪と硝子(ガラス)細工みたいに繊細で綺麗な目。あと、ちょっと気が強くて尖ってる性格・・・もう、可愛いとしか言えないでしょ!」

「・・・」


 さらに吐き気がした。


「でもね、この前、その・・・フラれちゃったんだよね」


 おっ!?

 やはりこの最悪な性格だ。いくら政略結婚とあろうとも、こんな男に嫌気がさしたのだろう。


「『あなたのことはきらい。大きらい。だけど、その(こころざし)は素晴らしいわ。だから、同士か後方支援者みたいに遠くから見守っていたいですわ』って。ついでに『それでも結婚するというなら殺しますわ』って脅された」


 つまり、「結婚はせずに遠くから見守る支援者になる」と言うことらしい。恐らく、紫月は性格上、はっきりと断られると逆にさらに絡みついてくるだろう。そこをうまくかわしつつ、はっきりと結婚は断っている(脅し付きで)。流石、武家妖怪のお嬢様だ。

 天晴れ!

 咲希は心の中で会ったこともない沙雪に向け、拍手を浴びせた。


「で、話を戻すんだけど沙雪ちゃんはここ数週間、結婚を断るために私の父上・黎桜家当主の叶十郎(きょうじゅうろう)と雪華家当主の霞夜(かすみよ)様に説得をしてたんだ。そこに不満を持った花吹雪様。六日前の面会はそれについて直談判しに来たんだと思う」

「? それはなぜだ?」


 銀次が首を傾げる。

 その通りだ。政略結婚とはいえ、両当主が納得した。そんな中で結婚をするよう直談判とは不自然だ。


「『狼女はいない』、そうだろう?」

「!」


 咲希は首を傾げたが、銀次は驚いて目を見開いた。


「沙雪ちゃんの家、雪華家は『人狼』なんだ。人狼は本来、男しかおらず女は希少だ。女の人狼は完全な人型で血に特別な力を持つが、その代わり、それが次の代まで続かないんだ。だから、力の強い者と結ばれる必要がある。そこで幼い頃から親しかった私が選ばれたんだ。後、自慢じゃないけど、私の家は今どんどん出世している。政治的にも悪くなかった訳だね」


 確かに・・・

 人間界の昔話や伝承でも人狼は一般的に(オス)であることが多い。

 特別な力を持つが、次に世代にそれを活かせない。ならば、なるべく力の強いものに、政治的に都合の良い者にとなるだろう。だから、花吹雪はどうしても沙雪と紫月がくっついてほしかった。花吹雪は直談判に乗り出す。

 仲の悪さから沙雪も簡単には引かない。話し合いは言い合いへと発展、そしてガチの殴り合いへ・・・。紫月の話から「百代に一人」と言われている沙雪らしいが、体力・経験ともに上回る花吹雪が優勢に。沙雪は追い詰められ、ついには人間界に逃亡する。


「花吹雪様は沙雪ちゃんを殺すつもりで追った。となると、式神を使ったのも頷ける。時間稼ぎの心算だったのだろう。そして、人間界で沙雪ちゃんの反撃を受けて、十年間過ごしても妖界に帰って来れないような深手を負った」

「? 十年間?」

「ん?あ、説明してなかったっけ?六日前の〈時空記録帳〉を見たら時空乱流の所為で人間界とこちらの時間が十年ずれてたんだ」


 そういえば、銀次がそんなことをつぶやいていた気がする。しかし、そうなると・・・


「そうなると、妖界に戻っている沙雪様が十七歳になってませんか」

「あー!くそ、その可能性もあったな。どうするんだ、紫月」

「勿論、推理の範囲内だよ。さて、話を戻そう。沙雪ちゃんはその性格上、人間界には馴染めない。だから、もう一つの自分を作った」


 もう一つの自分?

 咲希は首を傾げた。どういう事だろうか。


「つまり、二重人格を作ったという事か?」


 銀次が咲希がよく分かっていない様子なのを察してか口をはさむと、紫月は前を向いたまま頷いた。その顔は異常なほど無表情だ。


「そう、沙雪ちゃんは帰るすべもなくそのまま人間界で十年過ごしたんだ。そして、『完全な二重人格』になったんだ」

「「『完全な二重人格』?」」


 咲希と銀次は同時に首を傾げた。紫月はこちらを振り返ることなく舞い散る夜桜を眺め、淡々と続ける。


「簡単に言うと、二重人格を()()()()あまり、体の中に魂が二つできるんだ。そのどちらかが働くかによって人格が変わる。妖界では言霊や本人の意識と言ったものが大きく働いたりするからね。・・・私も何人かそういう妖怪を見たことがあるよ」


 何かが、おかしい・・・

 咲希は紫月の推理が進むにつれ、違和感を覚え始めていた。

 紫月の打って変わったような喋り方もだったが、自分の中で知ってはいけないこと、今まで押し込めてきたものがあふれ出そうな感じがするのだ。押し込めてきたものなど、咲希には存在しない。だからこそ、余計にその感覚が気味悪く感じられた。

 そして、その結論がもうすぐ分かるような、嫌な予感がした。


「そして、沙雪ちゃんは二重人格の仮面をかぶったまま妖界に帰ってきた・・・そう、()()()()()


 紫月がささやくようにそう言った瞬間、咲希は反射的にその場にうずくまっていいた。


「大丈夫か!」

「待って」


 慌てて駆け寄ろうとする銀次を紫月は手で制する。

 

 嘘だ、そんな訳ない・・・!

 咲希は激しく頭を振った。呼吸が荒い、嫌な汗が出ている。こんなに動揺したのは、小学校一年生の時に狂った六年生男子にナイフを突きつけられた時以来だ。

 自分にはちゃんと父がいる。母親のいない自分を一生懸命に育ててくれる優しいお父さんがいる。ちゃんとした戸籍もある。

 第一、妖怪のような面妖な姿なぞしていない。〈時空記録帳〉の中で見た沙雪のような白い髪と水色の瞳など持っていない。


「あれ、言ってなかったっけ?人間界に行くような妖怪は大抵、人間に化けることが出来るんだよ。特に、沙雪ちゃんはほぼ人型だから髪と目の色変えたらどうにかなるのだけど?」


 咲希の心を読んだようなことを言う紫月。咲希の体がビクリと震えた。

 いつの間にか、紫月は咲希の前に来て上から咲希を見下ろしていた。長い前髪が影になり、その表情は読めない。


「おい、しづ・・・」

「ねぇ、沙雪ちゃんが花吹雪様を殺したんでしょ?」


 銀次の声を遮るように紫月は断言した。


「紫月、何を根拠に言っているんだ?沙雪様がそうする可能性はなくもないが・・・第一、他世界での生死は戸籍を見ないと・・・」

「見たよ」


 紫月はそういうと、ベストの内側から一枚の紙を取り出し、銀次に渡した。一体、どれぐらいの容量がその中に納まるのだろうか。こんな状況ながらも、咲希は紫月のベストの仕組みが気になった。


「これは・・・!」


 銀次はそれを読んで驚愕の表情になった。


「一番最初に沙雪ちゃんの生死が気になったからね。君たちと別れた後、(たけ)さんに言って調べさせてもらった」

「岳さん・・・第三校長か!」


 九頭竜学園(くずりゅうがくえん)は生徒数が多いため、校長が三人体制で運営している。第一校長と第二校長には会った咲希だが、第三校長には会っていない。


「岳さんはこの学園の『裏』を管理する。〈烏天狗(からすてんぐ)〉の後ろ盾の一人でもあるからね。この情報は信じていい。後、このことは雪華家にもう伝えてあるから・・・さてと」


 紫月は咲希に向き直り、感情のない声で淡々と続ける。


「これで全てつながった。〈時空記録帳〉の中で君の跡を見た時、違和感を感じたんだ。何せ、人間を表す実線にまとわりつくように沙雪ちゃんの妖力の跡があったから。でも、その時点では『可能性』の域を越えなかった」


 銀次も声を出せず立ち尽くして、紫月の話を聞いている。今、ここは紫月の独壇場だった。


「それが確信に変わったのは〈時空記録帳〉に映りこんだ君の姿を見た時だ。かすかに君は沙雪ちゃんの妖力をまとっていたんだ・・・。君は自分の母親は交通事故で亡くなったと言っていたね。それは、間違いだ。自分の母親を殺したそうだろう?」


 そのとたん、咲希の頭の中に一つの映像が流れ込んできた。

 赤に染まった視界。赤に染まった自分の手。赤に染まった頭のない誰かの体。その首の断面。肉と骨が見える。そして、長い無数の白蛇でできた髪を引いて転がった誰かの頭。


「わぁああああああ!!!」


 咲希は頭を抱えて声の限り叫んでいた。もう、制御などきかない。透明な蝶達がその声に驚いて一斉に飛び立った。そこに、先程までの冷静で無表情な少女はいない。銀次はその変わりように息をのむ。

 咲希の叫び声が響く花園で、唯一、紫月だけが冷静だった。


「ねぇ・・・」


 紫月は残酷に叫び続ける咲希───否、沙雪の体をおさえると、その耳元でささやいた。


「沙雪ちゃん、見ーつけた」


 その言葉を最後に、()()()目の前は真っ暗になり、何も聞こえなくなった。


読了ありがとうございます。


自分の作品がどれほどのものか知りたいので、評価などなどよろしくお願いします。


(不定期更新なので、とても空くことがあります)

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