妖怪探し
文章、クルクルパーかもしれません。
あー、くそっ!
「じゃ、私は少し気になることがあるからそっち調べるね。あ、新しい情報があるかもしれないから、銀次は雪華家の人達に詳しい聞き込みをしといて。集合は私の『館』。よろしくね~」
と言う紫月の身勝手かつわがまま(どちらも同じ意味)な指令で紫月・銀次と別れた後、咲希は本部塔の廊下をやや速足で歩いていた。
「とりあえず、ここに行けばあるはずだ」と銀次に言われてきたものの、全く〈時空記録帳〉とやらに出会えない。咲希はかれこれ、二十分に渡る「本部塔一周の旅」に出ている。
最初は第二校長・川神(河童)、次は第一校長・時沼(時の精)、その次は国語教師の一人・金持(虫化け)、そのまた次は化学教師の幾多郎(鬼?)そのまたまた次は・・・もういい。ちなみに、今向かっているのは第二学年四組担任・貴子の所だ。もう、何番目かは数えるのをやめた。
咲希は「第二学年四組担任」と書かれたドアの前に立つとコンコンとノックをした。「はーい、どうぞ」と返事が返ってきたので、一つ深呼吸をしてからドアを押した。
さて、鬼が出るか蛇が出るか(マジの話)。
部屋の中にいたのはたくさんの鰭をたなびかせた馬だった。その馬が蹄で器用に紙をつまんで資料を読んでいる。
・・・
一瞬言葉を失った咲希だが、すぐに我に返ると銀次に教えられた文句をそのまま言った。
「黎桜家の紫月に保護されています、人間の咲希です。〈烏天狗〉の活動により〈時空記録帳〉を探しております。ご協力いただけますか?」
「ん、人間か、珍しいね。紫月に付き合わされて〈烏天狗〉の仕事かい?」
貴子はのんびりした喋り方の三十代後半とみられる妖怪だった。性別は判別不可能。鰭に似たやたらにふんわりとした雰囲気をまとっている。
「はい」
「ん、大変だね。紫月は問題児だからなぁ。名声は二年生まで響いてるよ。あ、〈時空記録帳〉を探してるんだっけ?」
貴子はそう言うと後ろの戸棚をゴソゴソと漁った。馬なので、鰭がなければ餌を漁っているようにも見えただろう。(めちゃくちゃ失礼)
「あーごめん。玖年生の生物の先生の所だ。多分柴乃のことだから温室にいると思うから、そっちあたってくれる?」
「・・・はい」
あの黒猫に対して、沸々と殺意が沸いてきた。
「あの、すごく妖怪殺しそうな顔してるけど大丈夫?」
「はい」
咲希はゆっくり扉を閉めて、また、廊下を歩き始めた。
案の定、今度は本部塔外の九頭竜学園をグルグルさせられた。疲れ果てた咲希の中では紫月をボコボコにする計画が半ば本気で出来上がろうとしていた。
◇ ◇ ◇
「あ、これこれ。どうぞ」
「あり・・・がとう・・・ございます」
やっと、数学教師・晴吉(狸)の所で〈時空記録帳〉に出会うことができた。タクタだ。一日だけの登校のはずなのに九頭竜学園にすごく詳しくなった気がする。もう、こんなことしたくない。
これが、〈時空記録帳〉・・・か。
やっとお目にかかれた〈時空記録帳〉は鏡だった。予想外と言うか、予想内と言うか。やはりここは妖界なんだな、と思う咲希だった。
◇ ◇ ◇
校内をグルグルさせられた咲希が『館』に来たのは、日も沈みかけた夕方だった。桃色と紺色のグラデーションの空に暮れの明星が光り輝いている。
幻想的で美しい景色に心が安らいだ咲希の神経を逆なでしたのはあの男だった。
「やあ、咲希ちゃん。遅かったね」
庭にある洋風の白い金属椅子に座って優雅に手を振ってい居る紫月がいた。その右手には紅茶のカップがある。
・・・プチッ
「誰の所為だと思って・・・!」
「咲希、心中察するが、今は抑えろ。〈時空記録帳〉が割れる!」
銀次の声に我に返と咲希は広大な心を生かして、殺意を抑える。そして〈時空記録帳〉を握り割ることなく紫月に渡した。
紫月は満足そうな笑顔で差し出された鏡の持ち手部分をハンカチで包むように受け取った。
「よし、これで必要な材料はそろったね。それじゃあ、謎解き時間と行こうか」
紫月はニコニコ笑いながら手をパンッと合わせた。
読了ありがとうございます。
自分の作品がどれほどのものか知りたいので、評価などなどよろしくお願いします。
(不定期更新なので、とても空くことがあります)




