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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

洗濯物が乾かない

作者: あるい

 夏のホラー2025テーマは「水」投稿作品!

 洗濯物が乾かないと大変ですよね。


洗濯物が乾かない、


どうゆう訳だかこの家では洗濯物が乾かない。

天気の良い日に干してもどこか湿り気が残ってしまう。

乾燥機を使ってやっと完全に乾く


それ以外は良い家なのだが、


夏はクーラーを使わなくても涼しいし、冬は暖かく乾燥もしない

観葉植物は良く育つし花瓶の花も長持ちするし、野菜と果物は冷蔵庫に入れなくてもいつまでもみずみずしい。

家の中は爽やかな匂いがする。

庭は小さい割には手入れをして居なくても花が咲き乱れ植物がよく育つ。

家庭菜園をやってみようかなと思う。

私自身も調子が良い

朝は爽やかな香りと柔らかい陽射しで目が覚めて、昼は明るい部屋で仕事の合間に花の手入れをし、夜は天窓から星を見ながら眠る。

少し前までは慢性的な頭痛と季節の変わり目に体調を崩して居たが、この家に引っ越してからは頭痛も治り体調が良く髪も肌も水々しい。


でも洗濯物が乾かない

外に干してもどこか湿り気が残る。日向に干しても乾かない。

湿度計を使ってみたら、通常の倍の数値が出た。


友人が来た時に相談したら、「この家の湿度が高いのは立地に問題があるのかもしれない」と調べてくれることとなった。

私は家の中を調べる事にした。


この家は、中庭を囲う様に建っており、外観は六角形の箱の様で中央に穴が開いておりそこに中庭がある。

内見のとき鉛筆みたいだなと思ったのを覚えて居る。

一人暮らしにはちょうど良いデザイナーズ住宅だと聞いて居たがここまで斬新だとは思わなかった。


玄関を開けて入ると中庭が目に入る。

一階は中庭に面してガラス戸になっており、台所とリビング、お風呂からでも中庭が見えるのだ。

花の季節だと入浴しながら花見ができる。

二階は天窓からの光で明るく、寝室と書斎以外の部屋は中庭に面して一階と同じくガラス戸になっており、まるで温室みたいになっている。

寝室と書斎の足元のみに窓が開いており、部屋の性質のせいか光は入らない足元からの光が古き良き日本建築を思い起こす。

最後に中庭は、中央に池がありそれを囲む様に花が植えられており、樹木が壁沿いに茂って居る。

朝ここでお茶を飲むのが私の日課だ。


でも洗濯物が乾かない


最初中庭に干して居たが植物のせいなのか池のせいなのか朝から夕方まで干しても湿っており、乾燥機を使ってやっと乾いた。

二階のガラス張りの部屋に干してもどこかに湿り気が残る。

長めに干してドライヤーで湿って居る部分を乾かして居る


・・・洗濯物が乾かない以外は素敵なのに


家自体に問題は無さそうだから、土地自体に原因が有るんだろうか?

友人の報告を待とう


友人が調べてくれた事によるとこの家が立って居る土地には泉が有り神泉と呼ばれて居た。

湧き出る水には癒しの効果があったそうだ。だがある時泉が涸れてしまい周囲の森も枯れ果ててしまったそうだ。

その跡地に立って居るのがこの家だ。

元々神泉が有った土地というから念入りに地鎮祭は念入りに行われたそうだ。

泉が涸れたから水は今無いはずだが、今度は地質を調べてみると張り切って居る。

私は家の中には原因は無さそうだと言ったら。

「何を言っているんだ?中庭の池広がって居るぞ?」


相変わらず洗濯物が乾かない


水回りを調べる様に言われたのでざっと調べたが、相変わらず台所の果物や野菜は水々しいし味も良い、最近は肉や魚を食べて居ない。お風呂はお湯から良い香りがして気持ちが良い。

特に変わりは無い・・・

そういえばカビが出ないし、黒ずみも無いから掃除が楽だ。

中庭の池の写真を撮って友人にメールで送る。1日にどれくらい広がって居るのかを調べるそうだ。


広がって居ると同時に周囲の植物も茂って来て居るみたいだ


洗濯物は乾かない


最近は湿り気が残って居ても、そのまま着て居る。

じっとりとして肌に吸い付くかと思って居たら、完全に乾いた服より肌触りが良い。

最近は眠くて昼寝ばかりして居る。何処からか良い香りがして心地良い、入ってくる日差しも柔らかくまるで水底に居る様な・・・・・・・・・・・・


トゥルルル!トゥルルル!トゥルルル!


激しくスマホが鳴る。

友人からだった


「おい!玄関開かないぞ!チャイムも鳴らしたのに!何やって居るんだ!」

「・・・ああ昼寝してて、今行くよ。」

「お前家の周りヤバいぞ!!周りはカラっからで草木も生えていないなのにこの家だけ草が生えて居る!蔦がすごいぞ!」

「・・・ああ、植木屋さん呼ぼうと思って居たけど眠くて忘れてた。」

「この前来た時は蔦なんて無かっただろ!ヤバい事が分かったから今すぐ出てこい!」

「・・・」

「どうした!早く開けろよ!調べたら神泉とやらヤバいぞ!」

「水が・・・」

「水がどうした?」

「いっぱいだ・・・」

「中庭の池!一昨日送ってもらったヤツ見たら中庭いっぱいだったぞ!一階が水浸しなのか!」

「・・・いや、二階まで水が来てる。プールみたいだ」

「えっ!えっ!何言って居るんだ!」

「・・・ちょっと飛び込んでみるよ。」

「いやいや何を言って居るんだ!玄関ぶち破るからそこで待ってろ!!」


柔らかい水が私を受け止めた。


・・・心地よい、息苦しくない体が軽い、流れに任せてゆっくりと進む。

どんどん潜っていく。中庭草木が招く様にゆらゆらと揺れて居る。

池が穴になってそこに流れて行くみたいだ。


ふと横を見ると昨日洗濯した洗濯物が流れて来た。

また洗濯し直さないと・・・



やっぱり洗濯物が乾かない


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― 新着の感想 ―
 当事者が危機感を覚えていないのが一番怖いですよね。このまま、主人公はどうなってしまうのでしょう。  明るくて快適そうな場所で起こる怪異は、かえって暗い場所で起こる怪異よりも不気味で恐ろしいのですね。…
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