6 大予言
○【場面もどって、ラ・キャン帝国オ・ソレイユ領】
『予言集』は語る「聖母は慈悲を、聖父は裁きを」
だが教えは二つへ分かたれ、信仰は分裂した。
魔動機関の蒸気は吠え、魔法は歪みを生じ、そして―――― 二千年弱の年月が経ち、この世界は終わろうとしているのだと。
世紀末に、人類滅亡を暗示する大予言では、
❝魔動蒸気機関❞ の煙が空を灰色へ染め、川に魚が泳がなくなった頃、絶頂を究める文明世界に、空から恐怖の大王が降って来る。
それは、滅びんとする人類の嘆きか。はたまた、新たな物語の幕開けの前兆か。
敬愛する、マダム・ローズ・タルトは語っていた。魔法では、
マダム・ローズ・タルト
「かくあれかしと想像できる、傲慢さが一番大切です。」
とのことだ。
ギヨティーヌ・タタンも名家の子女として、2年後の16歳には『帝立レネット魔法学院』へ入学し、魔法・魔術・魔女術の勉学が決定している。
前世で、文系は全滅だった俺だが、魔法は勉強してみたい!
入学まで時間はあまり残されていないので、それまでに、生前の ❝強さ❞ へ少しでも近づくべく、直ちに修行へ入らねば!
だが、体力が中々ついて行かぬ――――
まず土台を作る、それから一歩一歩、高みへ登り、最後の目的地へ到達できるように、して征かねばならない。
1年目は、わがままから怠けがちだった、立ち居振る舞いを、教育係りのマダム・ローズ・タルトより、真面目に習得しながら、
基礎体力を得るため、貴族の嗜みのダンスと乗馬。そしてストレッチからランニング。
食事はタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンをバランス良く摂取し、睡眠時間にも気を付けて、瞑想で内観法から ❝氣❞ を練っていく。
2年目には、なんとか基礎体力も付いたようなので、計画通り書き置き一枚を残し、お付きの使用人も連れず。
たった一人で1年間の山籠り修行を、敢行することにした。