58 アイデンティティ航路
○【山岳鉄道】
―――― 数週間後。
侍⚔武曲
「やはりコチラに居られたか、禄存どの。」
隻眼の侍⚔武曲は、ターラーラヤ山脈を降りる、レトロな魔動蒸気機関車が引く玩具のような客車の屋根に登り、
ヤクの親子、走り出す犬、暮らしを営む人々の、ゆったり移りゆく1コマ1コマを、腕組み直立にて望む、黒ずくめの忍者✦禄存へ声をかけ腰を下ろす。
後ろへ視線を移せば、聖なる『デーヴィーマーター』は山脈の上へ浮遊し、融雪はあくまで清く、滝は霧へと変わり、虹の掛かる姿を悠々と顕していた。
禄存は、己の右手で人差し指と中指を伸ばして刀を作り、同じように左手の人差し指と中指を伸ばし、右手の刀を左手の小指側から鞘として差し入れ刀を納める『刀印』を結ぶ。
忍者✦禄存
「忍❕
霊峰の見納めで御座れば。」
ウォーウイルス感染症も癒え、動けるようになったロザリー・マドレーヌも、村長夫妻と一緒に、
マノン・マドレーヌの旅立ちを見送りに来ていた。しかし、母と娘が積極的に会話しているようには見えない。
○【山岳鉄道の客席】
マノンはケモイチ村を振り返らず、顔を隠すように帽子を深くかぶり、窓際へ席を取って前のみを見つめた。
向かう先は、帝立レネット魔法学院。
少女の胸にはまだ痛みがある。
でも、この痛みこそが歩みの理由となった。
運命に抗い、真実を求める長い旅路が。
ギヨティーヌ
(ハァ〜、クロさまが居てくだされば、マノンさんのこと、相談できましたのに……)
古代のサイクロン、真黒きサイクロプス・ホース、クロ・ド・プラチナは、
クロ・ド・プラチナ
「ギヨティーヌ・タタン、汝の召喚に我は応ずる。必要ならば何時なりと呼ぶが良い。
マノン・マドレーヌ、汝の召喚に我は応ずる。ギヨティーヌが我を呼べず、汝が必要と判断するなら何時なりと我を呼ぶが良い。
ギヨティーヌは我を見出し名を付けた、
マノンは我に名を付くるべしと提案した、2人は我にとり特別な存在である。他に何が必要か。」
と言い残し、霧を呼び、虹の橋は立ち、一度だけ「ヒヒーン」と嘶けば飛び上がって、虹を駆け上がり雲の群れへと消えて行く。
これを弟子のマノン・マドレーヌと2人で、見送ったギヨティーヌだったのだが、魔動鉄道に乗ってからも、隣に座るマノンへどう声をかけたモノか、内心アタフタしていた。
人狼ルー・ガルー ฅ^•̀д•́^ฅ 貪狼
「(˶‘ᵕ’)ノ゛ˊᵕˋ*) よ〜し よしよしよし、よ〜し よしよしよし よしよしよし〜
戌ちゃん ◤˶˃̶ ㉨ ˂̶˶◥ わんわんお! わんわんお!
雪ちゃん ꒰⑅꜆ᐢ ᎔ . ᎔ᐢ꜀꒱ うさうさ! うさうさ!
アヒちゃん (∩o・Θ・) あひー! あひー!
辰子ちゃん (╯˶ˊ◕ᴗ◕˶)╯りゅうりゅう! りゅうりゅう!
なんて素敵なんだ〜 キスしておくれ、さぁ❤」
貪狼が眷属と、化け物娘たちと同じ席を取り、ムチャムチャ可愛がってる。
DJ ✴文曲
「Yo yo check it out
ターンテーブル回せ、準備はいいか!」
MC ⌐ロдロ 破軍
「闘いは終わった 新たな旅立ちだ
勝者も敗者も 同じ朝日浴びた
傷は勲章 背中が語るドラマ
ここまで来たぜ マイク握るサムライだ」
DJ ✴文曲
「Scratch! Wiki wiki!」
MC ⌐ロдロ 破軍
「ゴールじゃねぇ これはプロローグ
次のステージへ 上げる心拍数
誰かの正解より 俺のリアル
マイク一本で切り開く未来図」
DJ ✴文曲
「Drop it! もう一度!」
MC ⌐ロдロ 破軍
「闘いは終わった 新たな旅立ちだ
傷だらけの過去も 今じゃ語り草
背負った重さが 俺を強くした
倒れても立つ理由 ここに刻み出した」
DJ ✴文曲
「Hands up! Put your hands up!」
MC ⌐ロдロ 破軍
「闘いは終わった だが物語は続く
昨日の涙が 明日の俺を作る
振り返らず進む 新たな旅路
この声が道標 さぁ次の章へ行く」
DJ ✴文曲
「Rewind!! もう一回いくぞ〜〜〜」
紫微一族
「うぇえぇぇぇぃ〜〜」
そこへ持ってきて、せまい客車1両が貸切状態になってるのを良いことに。
「修学旅行かっ!」て言うような、紫微一族の騒々しい状況が、ちょっとイラッとしている処へ、
地味目なメガネ・メイド姿の❥アルコル★彡ちゃんの、介護を受ける隣のオッサンが、
紫微大王
「あれれ〜? 御主人さまも一緒に食べましょうよ〜
いや〜、外に出るの百年ぶりか〜 ガハハ」
揚げ饅頭食べながら浮かれる、ぽっちゃりメタボなお腹を擦る、只の怠惰なオッサンの声がデカい。
ギヨティーヌ
「貴方がた、ベイト・ノワール渓谷に残っても良いのに、着いて来るんですのねッ。」
(大きいサラマンダーさんは置いてきたのに…)
アルコル
「ちょっと大王〜 はしゃぎ過ぎよぉ。」
巨人ジェアン❇巨門
「Wカツバーガーはないのかぃ❇」
幽霊ファントームの廉貞
「廉貞は身体ができたから食べるの〜」
廉貞の身体、恐怖の大王 (青銅の少年像) の服は燃えてしまったため、ケモイチ村で頂いたのだが、女性陣が「きゃっきゃ」言ってた。
女の子と思われたのか? 女子用を身に着けている。
だが男だ。
たしかに似合っている。
だが男だ。
可愛らしく思える。
だが男だ。
紫微大王
「廉貞、お前は御主人さまと一緒に行きたいんだろ?」
廉貞
「廉貞は、渓谷を離れるの初めてなの〜」
紫微大王
「廉貞は、若い幽霊だからな。」
(❝恐怖の大王❞ の、この世を滅ぼす力を魅せられて、〈自分のモノにしたい〉と想わない奴はいないだろ! だからオレも、お前から離れないんだよ…)
一緒に行くと言いながら、さっきから全く姿の見えない、
帝立レネット魔法学院の教師 ソフィー・シューの声だけが響いた。
ソフィー・シュー
「君たち!!
ぼ、ボクの隣に居る、このデカい冷蔵庫は。気にならないのかなぁ⁉」
ちびっ子ツリ目の、横へ伸びる尖った耳をピコピコさせた、左眼が眼帯の女子、ソフィー・シューを、
そのデカい身体で隠して、隣へ席を取る――――
何処かの『コマンドー』なノースリーブ、スキンヘッドにサングラス✧、色黒ガチムチ・マッチョメンが、足を組んで座っていた。
そして「昨日、除隊して故郷へ帰る途中だゼ!」みたいな顔で、背中の白い海蛇のエンブレムを見せながら、咥えたペロペロキャンディーを口より出し、
マッチョメン
「⋆*.+(๑-■ㅂ■)b✧⁎∗゜ご注文どおり、ヒューマン姿で戻って来たゼ。ベイビー」
ギヨティーヌ
「…… いったい誰ですのォ━━━━❗❕❗❕」




