55 フェニックスの眼
○【世界衛生ウイルス研究所、別棟格納庫の瓦礫】
月光、斜めに射す宇宙へ。
蒔絵より抜けでたかの如く。
一筋の閃光を写し出し。
朱金の尾を引く不死鳥は――――
ギヨティーヌ一行が、ケモイチ村へもどるべく集まりし、
❝恐怖の大王❞ の災害に見舞われ、その権勢を誇った世界衛生ウイルス研究所が、いまや廃墟と成り果てる、別棟格納庫の瓦礫と化した小高き中心へ、
熱気を帯びた風と共に。
虹色の翼を静かに広げて舞い降りる。
そこでは、ソフィー・シューが自らの ❝魔眼❞ を駆使し、魔法防壁で被害を避けながら、
敵の魔術師ゴンタセスの構築した、転移✪魔法陣❂を維持すべく、魔力注入し続けていた。
遠くケモイチ村では、ギヨティーヌたちの帰りを待つマノン・マドレーヌの、不死鳥のアホ毛は逆立ち虹色へ煌めく。
マノンの瞳もまた金色に淡く瞬いて、視界は二重に重なり、現実の村の風景とフェニックスの眼前に広がる研究所跡の光景が、同時に流れ込む。
マノン
「あっ、お師匠さま、ご無事で良かったです……」
と、すでにフォルム・ドゥ・ワンワンを解除した、
マノンの独り言が、ギヨティーヌ・タタンの耳へ飛び込んだ。
ギヨティーヌ
「マノンさん、そこにいらっしゃるの?!」
マノン
「えっ? お師匠さまの… 声が聞こえます!
… 凄く揺れましたよ、空も光って! もう朝がきたのかと思いました!」
ギヨティーヌ
「恐怖の大王さんが目を覚ましたりしましてね、中々お強かったですわ。」
ソフィー
「❝お強かった❞ どころじゃない! 天地がひっくり返るかと思ったんだからなっ!!」
師弟の会話に待ちきれず割って入った、帝立レネット魔法学院の最年少教師にして、ギヨティーヌの幼馴染の女の子、ソフィー・シューは、横へ伸びたお耳をピコピコさせながら、
眼帯を上げ、左眼の『九曜魔眼』を啓《ひらくと眩く閃かせた。
ソフィー・シュー
「鑑定!」
鑑定結果 —【霊鳥:フェニックス】
▶種別: 神獣/高次魔性生命体
▶階位: 伝承級
▶材質: 魔炎素
▶魔動炉構造: 魂核を中心とした三層式魔動炉・第1層:永燃炎核/第2層:再生環/第3層:聖属性魔力循環
▶魔力制御: 極高精度。生命・火・天光属性を自在に混合し、瞬時に高位魔法へと変換可能
自動制御領域が広く、意思と連動した魔力の自動再生を行う
▶防御: 不死性/高熱耐性/聖属性防壁/飛行時、灼熱の尾羽による熱障壁が発生
▶攻撃手段: 天炎衝/羽雨炎撃/浄化烈光/転生炎嵐
▶弱点: 闇・無の系統による存在干渉攻撃/魂核を封印されると再生が阻害される/再生直後の一瞬だけ魔力安定が未完了で脆い
▶装備: 装備を必要としない固有存在のため、常時無装備
ソフィー・シュー
「ほっ、本物のフェニックス!…… いったいこれは、どんな仕組みで…
説明してもらおうじゃぁないか、ティティくん!」
ギヨティーヌ
「〈弱点:再生直後の一瞬だけ魔力安定が未完了で脆い〉なるほどぉ。
封印されてたんですのよフェニックスさま! ココがね〜 弱点でしたのねぇ。ぅんぅん、なるほど〜〜」
ソフィー・シュー
「へー、そお何だ〜、勉強になるなぁ〜〜
って、ちが〜〜〜〜〜う❗」
ソフィーは派手に両腕を横へ振って、突っ込む。
ソフィー・シュー
「だから説明を!」
ギヨティーヌ
「説明と、言われましてもネ〜
マノンさんは、フェニックスさまの見えてる物が見えますのよ。」
マノン
「すごい、本当に会話できちゃってるんですね。えへへ、」
ギヨティーヌがよく見ると、マノンの声はフェニックスの囀りで、それが愛弟子の喋り声に、聞こえるようだ。
これまでも、フェニックスの見ている景色を、マノンが共有できるのは、知っていたし、とっくに驚いていたのだけれど…
会話までも可能になるとは……
ギヨティーヌ
(…… 恐ろしい子!!)
ギヨティーヌは、驚きのあまり思わず白目アホ顔になった。
フェニックスを仲介する通信が、魔法・魔術でできることなのだろうか?
魔法学院教員であるソフィー・シューは、どう考えているのだろう、と… 彼女を見やれば、
( ;⁎꒪д꒪) ... やっぱり白目である。
ソフィー
「❝えへへ❞ じゃ無いぞ君!
フェニックスを媒介にする遠隔通話など、聞いたことがあるか?!」
ソフィー・シューは静かに息を呑み……
ソフィー
「… マノンくん、と呼ばせてもらおうか。
君の能力は、類を見ないモノだ。是非、帝立レネット魔法学院に来ないか!」
マノン
「えっ、わたしがですか?!」
マノンは戸惑いの声を上げるが、ソフィーは力強くうなずく。
ソフィー
「もちろんだ、君の ❝フェニックスの眼❞ は研究するべき価値があるな。何より、君自身のためにも――――」
キィィィガァァァァァン!!
フェニックスは、奇妙な荒々しい鳴き声を上げ突如として羽ばたき、空高く飛翔した。
周囲の空気が一瞬、大きく揺れ、ソフィーの維持する召喚✪魔法陣❂は、帰還をうながし光を増して行く。
ギヨティーヌ
「皆さん、ケモイチ村へ急ぎますわよ!」




