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53 折衝の条件

 その時、ギヨティーヌの目の前へ、

 加齢とともに身体が変化し、特に頭部と腹部に顕著けんちょ特徴とくちょうを持った、一人の ❝中年男性❞ が、ボチャッ っと降って来る。

 成層圏の彼方まで飛び立った、紫微大王しびだいおうだ。



紫微大王しびだいおう

「おいおい廉貞れんていさんや、聴こえるか〜? 御主人さまを呼び捨てにするんじゃァないぞ〜

 いやせん、遅れまして、ど〜も。月まで、用足ようたしに行ってたもんで〜」



 恐怖の大王の眼からのビームで、風船が運良うんよく撃ち落とされた、紫微大王しびだいおうを、

 クロ・ド・プラチナが拾い、くわえ持って来たのである。



紫微大王

廉貞れんていお前、身体が出来たって喜んでたろ〜

 いや、これまでも。ご遺○に憑依ひょういしてみたり、生きてる奴に憑依してみたり、幽霊らしいこともやってたんですよ〜 なぁーなぁー。

 でも、コイツ優しいもんだから、「気の毒なの〜」とか言って、めちまうんです〜

 人形にも乗り移ったり、してたよなぁ、すぐ壊れちまうけど。」


廉貞れんてい

「ぁうん…… 」


紫微大王しびだいおう

「どーだ今回は、御主人さまのおっしゃるよ〜に。ウミヘビに、恐怖の大王を説得させてみたら。

 な、ん? な、ん? な、ん?…」


廉貞れんてい

「…… わかったの… ウミヘビぃ、恐怖の大王をめるの〜」


ウミヘビ、アルファルド

(わかった、わかったからめてくれ!

 … はぁ、仕方ない…… ドナートさま、ドナートさま、)


恐怖の大王

「わぁははははははは、」

(話が付いたのか?)


海蛇、アルファルド

(ドナートさま、まずは。眼からの光線を、おくださいませんでしょうか……)


恐怖の大王

(… わかったぞ、アルファルドよ。)

「だが予言するぞ。❝あそこで、この世に終焉しゅうえんを与えておけば良かった❞ と、思う程の大災厄だいさいやくが。今後、必ずや降りかかるであろう!

 わぁ〜はははははははは……」



 そう言うと、眼からビームを発するを止める、恐怖の大王。



ウミヘビ、アルファルド

(ありがとうぞんじます。)


廉貞れんてい

「もう、恐怖の大王を眠らせるの〜」


ウミヘビ、アルファルド

条件じょうけんを付ける、わたしを実体化させろ! 出来るはずだッ、)


廉貞れんてい

「させないの、危ないの〜」


ウミヘビ、アルファルド

(ならば、ドナートさまは目覚めたままだ。

 わたしを実体化じったいかさせろ、それが条件だ!)



 廉貞は仕方なく、ギヨティーヌへ取り次いだ。



廉貞れんてい

「… ウミヘビが、実体化したいって言ってるの〜

 そうじゃないと、恐怖の大王を眠らせないの……」


ギヨティーヌ

「条件を出して来たんですのね…

 良いでしょう。ただし、廉貞れんていさんが憑依ひょういいても、恐怖の大王さんは暴れない。

 それが、こちらの交換条件こうかんじょうけんですわ。


 あと… 少しお話しよろしくて? 恐怖の大王さんの、お名前は何と申しますの?」


ウミヘビ、アルファルド

「ドナート・シリーズ Ε〈イプシロン〉さま だ。」


ギヨティーヌ

「… シリーズの Ε〈イプシロン〉と言うことは、他にも何体か居られるんですのね?」


ウミヘビ、アルファルド

「そうなるだろう。」


ギヨティーヌ

「…… そうですか… お答え頂き、ありがとう御座ございますわ。」



 ギヨティーヌ・タタンは( Ε〈イプシロン〉って、何番目だったっけ?)と想いながら、興味深げに考える。



紫微大王しびだいおう

「―――― それとよぉ実体化っても、あのウミヘビのままって訳には、いかねぇんじゃねぇか〜

 デカいへびに居られても困るぜぇ〜 」


ウミヘビ、アルファルド

「なら小さな蛇で、」


紫微大王

「いや、そう言うんじゃなくてぇ。」


廉貞れんてい

「それなら良いの〜」


紫微大王しびだいおう

「いいのかよ!」



 世界衛生ウイルス研究所の残骸ざんがいは、もはや火の海と化し、

 ウイルスも、感染した実験体たちも、全て焼き尽くされた。

 やまいの根は絶たれたのだ。


 だが… それは同時に、世界をも滅ぼしかねない炎であった。



ウミヘビ、アルファルド

「…… わかった。わたしが必ず、ドナートさまを暴れさせない! 約束する。

 そしてわたしは、ヒューマンの形をとろう。」

(―――― ドナートさま、新たな秩序ちつじょ構築こうちくは、今しばらくお待ちいただいて……)


恐怖の大王

(…… これで終わるのか、アルファルド。)


ウミヘビ、アルファルド

(おお、幸福な王子よ! ど〜か一先ひとまずお休みください… 次の機会が必ず御座います。)


恐怖の大王

(そうか、ならば休むとしよう……)



 ❝恐怖の大王❞ の青銅の瞳は閉じられ、獰猛どうもうなエネルギーはしずまって行く。

 青銅製の顔はかすかに笑い、おだやかな青き光が広がった。



 ドガラッガァァァァ〜〜〜〜ン!!


 世界衛生ウイルス研究所が、

 そのルージュ・パルフェ〈完璧な赤〉の光の中へ、崩れ落ちる。

 炎は消え、大地のふるえも静まり、

 青銅の少年の頭部を胴体へもどすと、雲間くもまから月輪がちりんの光りが皆を照らした。


 三度みたび、青銅の少年像へ憑依ひょういする廉貞れんていは、青銅せいどうの少年の瞳で星星も顔を出す夜空を見上げ、



青銅せいどうの少年、廉貞れんてい

(やっぱり、眼で観る星は輝いて見えるの〜)



 と、感じながら、

 上半身を起こし、ギヨティーヌ・タタンへ、



青銅の少年、廉貞れんてい

「ギヨティーヌ〜 恐怖の大王をおさえられなくて、ゴメンなの〜」


吸血鬼ヴァンピール、文曲もんごく

「廉貞は悪くない、あれはしょうがなかった。」


透明人間、破軍はぐん

Yoヨー 精一杯せいいっぱいやってきた、このステージ。

 満点じゃなくても、シャインする成果せいかページ。」


青銅の少年、廉貞れんてい

「ベラ・マルグヴェン所長は、ウイルス研究所の病原体びょうげんたいを全部、世界にまき散らそうとしてたの〜 だから…」


ギヨティーヌ

「幽霊になってベラ・マルグヴェン所長をめましたのね。わかっていましてよ、廉貞れんていさん、良くやってくれましたわ。

 文曲もんごくさんも、破軍はぐんさんも御苦労さまでした。


 ―――― そうですか、病原体を…… 総てを焼き尽くす ❝恐怖の大王❞ さんの怒りが、世界を救ったのかも知れませんのね――――」

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