52 情けは味方、仇は敵なり
○【大炎熱地獄】
ギヨティーヌ
「無上甚深微妙の法は、百千万劫にも遭い遇うこと難し。
奥義『開経偈』!」
ギヨティーヌは右腕で天を指差し、左の腕では地を指差すと、両掌の付け根を合わせ前へ突き出し、闘氣をもって、❝恐怖の大王❞ を包む焔の珠を掴み取り、握り潰そうとする。
ギヨティーヌ
「チェストォォォオオオ━━ッ!!」
恐怖の大王
「わははははは! わははははは! わははははははっ!!」
恐怖の大王の両眼より放たれる、凄まじきビーム!
ギヨティーヌは吹っ飛ばされ――――
とっさに、❝闘氣❞ を撃ち出す奥義を放った。
ギヨティーヌ
「苦の聖なる真理とは何か。それ、生苦、老苦、病苦、死苦、愛する者と別れる苦、怨み憎む者と会う苦、求めるものが得られぬ苦、それ則ち略して説く五陰盛んの苦しみなり。
奥義『四苦八苦』!」
ゴッゴッゴッゴゴゴ・・・ゴゴゴゴッッッ━━━❗❗
ダッアァ━━━━━━━ンン❗
❝闘氣❞ でできた、象の2倍ほどの玉は巨大な弾丸となり、ビームを撥ね返して爆発すると、気流が竜巻となりうねる。
そこへ、ギヨティーヌは更に奥義を繰りだした。
ギヨティーヌ
「行雲流水の如く、初め定まった質は無なく、但だ常に当に行くべき所へ行き、常に止まらざる可からざる所に止まり、文理自然にして、姿態横生す。
奥義『一処不住・大自在』!」
人為が加わらない、自然のありのままの状態、それを感じ取り、
推考にたよらず、身体の動きは思いがけなく、後から後から現れる。
❝氣❞ の流れは、❝恐怖の大王❞ の眼からの怪光線を、朧げだが乱反射させていた。
ギヨティーヌの身体はこれを感知し、勝手に動いて前へ前へと、恐怖の大王へ向かって征く!
ギヨティーヌ
「螺旋手刀!」
遂に手の届く場所まで近付いた。
ギヨティーヌは身体を縦軸に回転させ、ビームを発する首から上の部分めがけて、チョップを側頭部へ入れる。
続けざまに攻撃を仕掛け、
ギヨティーヌ
「真空・飛び膝蹴り!!」
恐怖の大王の、顎へ ❝膝蹴り❞ を命中させ、横を向かせると、
頭部を脇の下で挟んで組付き、高速ネックスクリュー (首へのドラゴンスクリュー) で大地へ投付け。
頭部を抱えたまま、ギロチンチョークで捻りあげて行く――――
すると、案外容易く頭部が首から取れた。
恐怖の大王の胴体だけが起き上がると、
胸のカバーが上へ開いて、胸部に内蔵された2つのファンは回りだし、高熱の暴風 ❝ファイアーストーム❞ が巻き起こる。
ギヨティーヌは ❝氣❞ の流れへ身を任せ、すぐ脱出した。しかし、抱える ❝恐怖の大王❞ の頭部が、
恐怖の大王
「わははははははは、わぁはははははははは!!
吾輩こそは、恐怖の大王。頭だけでも、躯だけでも、
世界に再び秩序を与える、終焉の構造なり〜〜」
と宣う。だがその時、
廉貞
「御主人さま〜」
ギヨティーヌの脳内へ直接、幽霊ファントームの廉貞が、覇気のない声で話しかけて来た。
ギヨティーヌ
「廉貞さんっ?!」
廉貞
「今、胴体に憑依してるの〜」
と、恐怖の大王の身体を見やれば、高熱の暴風はすでに止まり、ピョンピョン跳ねて手を振っている。
ギヨティーヌ
「出来しましたわ廉貞さん!」
ウミヘビ、アルファルド
(幽霊、邪魔をするな!)
廉貞
「ウミヘビが何か言ってるの〜」
恐怖の大王
「わぁははははははは! わぁはははははははは!」
まだ眼からビームを放つ、恐怖の大王の頭部。
廉貞
「御主人さま、眼からビームで胴体を破壊するの!
廉貞は幽霊だから大丈夫なの〜」
ウミヘビ、アルファルド
(止めろ! 止めろォ!)
廉貞
「ヘビはだまるの! ヤルの、ギヨティーヌ〜」
ギヨティーヌ
「あの蛇さんですわね……
廉貞さん、ウミヘビさんに ❝恐怖の大王❞ さんを止めるよう、言ってくださいまし。」
廉貞
「ギヨティーヌ甘いの、今ヤッてしまうの!」
ギヨティーヌ
「廉貞さん。貴方のおっしゃることは正しいですわ…」
廉貞
「ならっ!」
ギヨティーヌ
「…… でも。こう云う言葉が有りますの。
〈人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり〉
『人の和』を語った言葉ですわね。
恨みを買う行為や不満を与えると、敵に回してしまって、組織の弱体化をまねきます。
そして今、廉貞さんは、わたくしに不満を抱いているかも知れません。
それでも、❝恐怖の大王❞ さんを哀れに想うんですの。
愛情や信頼を知らず、❝この世を破壊する事❞ だけを繰り返して来たんですもの…」
廉貞
「…… うん、可愛そおなの〜」
ギヨティーヌ
「もちろん、愛情を ❝弱さ❞ だ ❝弱点❞ だ。と利用して攻めて来る様なら、
容赦しませんわよ、そう言う連中は居ますからね。」
廉貞
「情けは味方…」
ギヨティーヌ
「〈人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり〉ですわ。」
廉貞
「… 誰の言葉なの?」
ギヨティーヌ
「風林火山のおじさまですわ。」
廉貞
「ぉおお〜〜」




