51 人間に形造ってくださるよう頼みましたか?
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「恐怖の大王が目覚めるぞ。もどって来い、廉貞!」
浮遊メガネ ⌐ロдロ₎₎✧ 破軍
「早くしようぜ Countdown
今この瞬間 逃したら負ける
tempo 上げて 足並みそろえ
3・2・1で 動き出す番」
仰向けへ尻もちを付き倒れた、青銅製オートマトンの美少年像を、文曲と破軍は抱きかかえ、
幽霊ファントームである廉貞の、帰りを待つしか出来ない。
憑依を解かれ、動かぬ、その ❝青銅の少年❞ の身体の表面を、淡く光が走る。
どこか遠く、深い海の底から声が届いた。
ウミヘビ、アルファルド
「ドナートさま、ドナートさま、ドナートさま…」
恐怖の大王(青銅の少年像)
「… 吾輩を呼ぶのは誰だ?」
ウミヘビ、アルファルド
「ドナートさま。おお、我が主よ……」
それは、恐怖の大王に仕えし、海蛇アルファルドの声。
潮のように満ち、星のように響く宇宙誕生よりの波動に、
少年の青銅製の躯は震え、
命属性の魔素が結晶化する ❝魔鉱石❞ 魂核の奥から、鈍く心音が鳴った!
青銅の瞼がゆっくりと開き――――
虚ろな瞳へ明かりが灯ると同時に、古代文字は刻まれ流れる。
『"ᚾᚢᛗ ᛏᛖ, ᚲᚱᛖᚨᛏᛟᚱᛖᛗ, ᛖᛉ ᛚᚢᛏᛟ ᛗᛖᛟ ᚱᛟᚷᚨᚢᛁ ᚢᛏ ᛗᛖ ᚺᛟᛗᛁᚾᛖᛗ ᚠᛟᚱᛗᚨᚱᛖᛋ?"
"ᛋᚨᛏᚨᚾᚨᛗ ᛢᚢᚨᛋᛁ ᚨᛈᛏᛁᚢᛋ ᛋᛏᚨᛏᚢᛋ ᛗᛖᛁ ᛋᚣᛗᛒᛟᛚᚢᛗ ᛈᚢᛏᚨᚢᛁ."』
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「ルーン文字かっ…
創造主よ、私を土から人間に形造ってくださるよう頼みましたか?
サタンの方が私の状態を象徴するものとして、ふさわしいと思ったのです。
… だとぉ?!」
浮遊メガネ ⌐ロдロ₎₎✧ 破軍
「Oh my gosh!!」
青銅の少年の肢体は浮き上がり、❝恐怖の大王❞ が目を醒ます!
恐怖の大王(青銅の少年像)
「わははははは! わははははは! わははははは! わはははははは!!」
高笑いが空気を震わせ、研究所の壁はひび割れ、
覚醒した恐怖の大王の、目から迸るビームは、天井を貫き、
服を破いて胸部のカバーが上へ開くと、両胸に内蔵された2つのプロペラファンが回転し、雹嵐のブリザードは吹き荒れる。
氷の嵐に、透明人間の破軍は、吹き飛ばされそうになり、
吸血鬼ヴァンピール✴文曲が、
❝内緒ポーズ❞ から人差し指で、天へ向け手をのばした✴
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「吹けよ風、呼べよ嵐、叫べよ竜巻!」
風の獣たちは道を失い舞い狂い、螺旋は空間を引き裂いて、
恐怖の大王へ巻き付くと、轟音を叫びながら大気は震え、天を目指し昇って征こうとする。
しかし、恐怖の大王はそれも構わず、首から上をクルクル回転させ、眼からの閃光を、四方八方へ放ち続けた。
文曲は身を伏せ、破軍と共に、真っ赤なマントへ隠れるしかない。
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「天空を支配するマイェストレレ (女王たち) よォォォ!……」
浮遊メガネ、破軍
「埒が明かねぇ、どーしよーもねぇ、出口みえねぇ
積んでるゲーム 迷路の真ん中
叫んでも響くのは 虚無の echo」
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「まあしゃーねぇ、algorithm さえ、オレらを見捨てた」
浮遊メガネ、破軍
「でも、ふと思うんだ
この ❝どーしよーもねぇ❞ が、実は ❝starting line❞ じゃねぇかって…」
廉貞は、ベラ・マルグヴェン所長を連れ出すのをあきらめ、憑依を解きもどって来たのだが、時すでに遅かった。
慌てて、恐怖の大王へ「憑依〜」して、
廉貞
「ハート♥キャッチ
…… 心臓がないの〜」
瞼を「念力〜」で、閉じさせて「眼からビーーーーーム!」を、止めさせようとするもぉ… 中々閉じない。
胸部のプロペラを「念力〜」で止められるかぁ…… これは多少だけど効果が有りそぉ〜〜〜
恐怖の大王(青銅の少年像)
「わあははははは! わぁぁぁあははははははは!! ゲホっゲホっ〜」
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「今、ムセたな。」
浮遊メガネ、破軍
「ムセた。」
廉貞
「ムセたの〜」
恐怖の大王は、肩へ開いていた胸のカバーを閉じ、ブリザードをやめると、今度は――――
吐息とともに、口より放つ激しき焔!
かつて自分を幽閉していた『火焔牢獄』にも似て、猛烈に燃えたつ。
文曲の、風の獣たちを巻き込むと、青と赤の螺旋を描き、研究所を焼く ❝火災旋風❞ となって『ルージュ・パルフェ〈完璧な赤〉の塔』の頂上部分を吹き飛ばす。
ボッ‼ゴゴォォォォーーーン………
世界衛生ウイルス研究所は炎と包まれ、
ガラスの境界は溶け、
あらゆる病原体を焦がし、
感染した実験体たちは、次々と焼け落ち、
病も、
ウイルスも、
そして、ベラ・マルグヴェン所長の罪さえ…
この世界の総てが、灰燼に帰すかに想えた。
○【炎の中の、完璧な赤の塔】
そして―――― この炎は止むことを知らない。
恐怖の大王は、自らの躯を焔で包み、地へと潜り始めたではないか!
彼の灼熱は地殻を熔かし、魔人の力は大地の均衡を崩す、
かつての、文明を滅ぼした力である。
ギヨティーヌ
「奥義『諸法無我・遺憾砲』! チェスト━━━━━━!!」
クロ・ド・プラチナの背より踊り上がり、全身を中心へ収縮させて、音速を超えたギヨティーヌは、
まばゆい翠玉色の光りとなって一直線。
恐怖の大王を狙い撃ち、闘氣を蹴り足の一点へ集中開放、爆発させた!
ギヨティーヌは、わずかチャージタイム1ミリ秒で奥義詠唱を完了する。では、奥義プロセスをもう一度見てみよう。
ギヨティーヌ
「この世の総て森羅万象の存在は、固定した実体を持たず変化し、
それぞれの命が互いに影響を与え合い、回り回って代わる代わるに依存する関係であり、
私たちは、生かされているに過ぎない。
それでもなお、倒さねばならぬは誠に ❝遺憾❞ である。
奥義『諸法無我・遺憾砲』!」
ルージュ・パルフェ〈完璧な赤〉の塔の残骸は木っ端微塵に飛散し、空を裂き赤く燃える星となって、グルグルと渦巻いた。
それでも、大地を変動させる力を有する、恐怖の大王はビクともしない。
恐怖の大王(青銅の少年像)
「吾輩こそは、恐怖の大王。世界に再び秩序を与える、終焉の構造なり〜〜」
ギヨティーヌ
「やらせはせん! やらせはせんぞ…… 地球を焼くならば、わたくしの拳を受け止めて、ご覧あそばせ!」
ギヨティーヌ・タタンの、萌葱色の髪は吹き上がり、闘氣が沸騰する。
恐怖の大王の、青銅の肢体を覆う焔は地を穿ち、巨大な大炎熱地獄となって襲いかかった。




