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50 メガネ、メガネ

○【世界衛生ウイルス研究所、内】



 ❝完璧な赤の塔❞ に、青い回転灯が点滅てんめつし、

 ―――― 静かに崩壊の幕を開けた。


 くずれた外壁の奥で、非常ベルのうなりは響き渡り。

 煙の向こうで、研究棟けんきゅうとうの最深部へ向け、別の3つの影が進む。

 彼らは、幽冥ゆうめいそのものだ。



 最初に姿を見せたのは… いや見えないのだが。

 風の如く、掴みどころの無い男。


 『透明人間』破軍はぐん

 彼の存在は、視覚でとらえられ無い。

 敵が気付いた時すでに遅し、その首筋へ冷たい息が触れている。



透明人間、破軍はぐん

「メガネ、メガネ。メガネ、メガネ。

 ⌐ロдロ✧ Yoヨー 遠視でメガネかけたゼ。OKオーケー❕」


女性研究員 A

「きゃぁぁ〜〜」


女性研究員 B

「きゃあぁぁー」


男性研究員 A

「きゃぁぁぁ〜」



 ⌐ロдロ₎₎ 踊るメガネを見た研究員たちが、警報音のように悲鳴を次々と上げていった。



浮遊メガネ ⌐ロдロ₎₎✧ 破軍はぐん

「…[コントロール室]見つけたゼ。Yayエーイ‼」



 さらに室内がざわめくのも気にせず、メチャクチャにコントロール・パネルをイジれば、周囲のセンサーは一斉いっせいに誤作動を起こし、

 防衛システムの魔動まどうレーザーが、味方を撃ち始めた!

 目に見えぬ混乱が、研究所を侵食しんしょくして行く。



 次に現れたのは、赤きころもをまとい、血の香りをまとう男――――


 『吸血鬼ヴァンピール』文曲もんごく

 その指先からしたたる血は、自らの意志を持つように形を変え、

 やがてけんとなり、やりとなり、

 その軌跡きせきには、串刺しのパワードスーツたちが居並んだ。



吸血鬼ヴァンピール✴文曲

血潮ちしおは時間を超えて、永遠の記憶を運ぶ……

 お前たちの痛みと恐怖、いただこうか。」



 文曲の声は、静かにしてあでやか、

 研究所の白壁しらかべは、くれないに染まり、

 その瞳が緋色ひいろかがやくたび、敵の体内の血液は逆流する。



 そして、もう一人が歩み出た。


 『幽霊ファントーム』廉貞れんてい

 彼が憑依ひょういしているのは、精緻せいちな青銅製オートマトンの美少年。

 ❝恐怖の大王❞ を内に眠らせ、物憂ものうげにととのった顔立ちは耽美的たんびてきで、冷たい微笑をひそませている。


 彼が手の平を前へかざし、



青銅の少年、廉貞れんてい

念力ねんりき〜」



 と唱えると、警備員たち皆がビタ〜ン! 激しく音をたてて天井に張り付けて、



警備員 A

「あった〜!」


警備員 B

「あった〜!」


警備員 C

「あった〜!」



 また床に落とす。



警備員 A

「あった〜!」


警備員 B

「あった〜!」


警備員 C

「あった〜!」



 次に、青銅せいどうの少年の瞳がひらめく時、



青銅の少年、廉貞

「眼からビーーーーーム!」



 まなこより放たれる光線は通路をいだ!

 はがねの扉は切り裂かれ、焼かれた金属の臭いが立ち込める。

 幽霊と機械の融合した ❝亡霊兵器❞ は、まさに冥府めいふが如き象徴である。


 3者は交錯こうさくしながら塔の中央へと進撃し、遠くで警報はとどろいて、

 追跡する魔動まどう監視ドローンが破壊され落ち、塔の防衛プログラムは次々と沈黙していく。



○【世界衛生ウイルス研究所、正面】



 やがて瓦礫がれきの上へ、霧は立ち一陣の風が吹き、

 その霧の波をり、風を狂飈きょうひょうごとひずめの音。


 『サイクロプス・ホース』クロ・ド・プラチナ。

 黒銀こくぎんなる古代の颶風サイクロン――――

 その背にるは、


 『不敗令嬢』ギヨティーヌ・タタン。

 乙女の眼光が、塔の深奥しんおうつらぬいた。



ギヨティーヌ

「―――― 間に合いましたかしら。

 ❝ルージュ・パルフェの塔❞ 落としますわ!」


クロ・ド・プラチナ

「ベラ・マルグヴェン所長は、意図的にケモイチ村をおそったと考えられる。

 質問があるのであろう、ギヨティーヌ。」


ギヨティーヌ

「その通りですわ、クロさま。

 ベラ・マルグヴェンさんには、お聴きしたいことが有りましてよ。」



 クロ・ド・プラチナはいななき、嵐が如く駆け出す。



○【世界衛生ウイルス研究所、内】



 今や勢力は、川が劇的に大海へ注ぐように交錯こうさくし、熔解ようかいする臭いは混じり合い。

 塔の中心で、青き警告灯の明滅めいめつが激しく渦巻うずまいて『神経制御中枢しんけいせいぎょちゅうすう』へと戦場は移り。

 塔全体を包む赤光しゃっこうの、荒い息づかいさえ聞こえてくる。


 ―――― その赤が、まるで意思でも持つかのように……



吸血鬼ヴァンピール✴文曲もんごく

「どうだ、所長は居たか?」


青銅の少年、廉貞れんてい

「こっちには居ないの〜」


ベラ・マルグヴェン所長

「わっ… なんだぁお前は!」


浮遊メガネ、破軍はぐん

「⌐ロдロ₎₎✧ Heyヘイ! こっちに居たぞ。」



 吸血鬼ヴァンピール、青銅の少年、

 そして、浮遊メガネ ⌐ロдロ₎₎ に追い詰められる、ベラ・マルグヴェン所長は最上階、制御中枢室せいぎょちゅうすうしつの前に立っていた。


 冷ややかな美貌びぼうの奥で、狂気の決断が生まれ、

 彼女の拳が、緊急スイッチを叩く!



ベラ・マルグヴェン所長

 「―――― 全部、開放してやる! 総ては、新世界秩序ニュー・ワールド・オーダーのためにィィィ!!」



 その瞬間、空気が震え、

 重い非常扉ひじょうとびらが、幾重いくえにもまり、

 拳を突き上げ彼らへ勝利の笑みを浮かべる、ベラ・マルグヴェンを遠ざけて逝った。



吸血鬼ヴァンピール✴文曲もんごく

Yoヨー これを読んでみろよー。

 この奥は、ウイルスや細菌が保管されている場所だぞ!」


浮遊メガネ ⌐ロдロ₎₎✧ 破軍はぐん

OKオーケー あらゆる感染症、開放するんでしょー Understandアンダスタン?」


青銅の少年、廉貞れんてい

「眼からビーーーーーム!」



 青銅の少年から放たれた光線に焼かれる、矢継やつばやじる非常扉は分厚ぶあつく、一枚を破るのに時間がかかる…

 今にも、ありとあらゆる病原体が、世界へまかれるかも知れない……



青銅の少年、廉貞

憑依ひょうい解除かいじょ〜」



 幽霊ファントームの廉貞れんていも、最後の手段。

 憑依ひょういしていた ❝青銅の少年❞ から離脱りだつし、幽霊となり、

 幾重いくえもの厚き扉をすり抜けて征く。


 ベラ・マルグヴェンが伸ばした手は、

 病毒びょうどくふうめる、扉のレバーを押上ようと指がかかった!



廉貞れんてい

憑依ひょうい〜」


ベラ・マルグヴェン所長

「はっぁぁ……」



 ベラ・マルグヴェンへ飛びかかる廉貞れんてい

 彼女は透明な悲鳴を上げ、廉貞れんていをおかず、その心臓を掴んだ。



廉貞れんてい

「ハート♥キャッチ」


ベラ・マルグヴェン所長

「ウンがっぐぐッ…」



 ベラの瞳は見開みひらかれたまま、空色の涙がほおを伝う。

 彼女は気を失い、指はレバーから離れ、

 研究室に充満していた、病原体びょうげんたい培養槽ばいようそうの圧力が、静かに落ちていった。


 響き渡る警告音と、動き続ける青い回転灯が

 戦いの余韻よいんを残し、赤き残光だけがらめいて塔を通り抜ける。



 「ベラ・マルグヴェン所長と話しがしたいですわ。」と、ギヨティーヌが言っていたから、廉貞れんていはベラ・マルグヴェンをココから連れ出したい。しかし、

 憑依ひょうい〜 して、動かすことも、喋らすことも出来るのだけれど。気絶させたため…


 この数々の分厚い扉をどのように開けたら良いものか?

 ベラの知識は当然停止したままだ。

 廉貞れんていの「念力ねんりき〜」でも、鉄扉てっぴはビクともしない……

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