47 絶対正義
○【ケモイチ村の上空、貪狼】
銀色の巨大な満月は、煌々《こうこう》たる相貌を見せ。
金狼の肩下まで有るソバージュは、燦々《さんさん》と鮮やかに天へたなびく。
貪狼
「待たせたね〜〜 カワイコちゃん❤
こんな所に居たのかぃ、鬼ごっこが好きなんだね。でも、もぉ逃さないよ〜」
化け物
「リュリュリュゥゥゥゥゥゥゥ!!」
辰の化け物が動くたびに、空気は引き裂かれ、雷が地面を叩く音が轟き、化け物の眼は闇の中に青く浮かび、光りを発している。
鋭い爪が地面を引っ掻くと、そこには焼け跡が残り、世界が悲鳴を上げ震撼した。
化け物彼女の尾が、鞭のようにしなり。地面を焦がす爪が、貪狼を襲うが、
それを縄跳びでもする如く、潜り飛び超える人狼ルー・ガルー。
遂に彼女の切り札、東洋風ドラゴンの、鋭利な造形の頭部に伸びる角が点滅する。
貪狼の目の前は、真っ白な光りへ呑み込まれた!
○【ケモイチ村、氷晶に埋もれた集会所】
霊犬 戌ちゃんは、マノン・マドレーヌの周辺の宙を、綺羅綺羅と煌めき駆け廻る。
マノン
「戌さま… 逃げてください、戌さま……」
マノンの声はかすれ、息は浅い。
戌ちゃん
「 ◤˶^㉨^˶◥ わんわんお! わんわんお!」
次の瞬間、マノン・マドレーヌの身体は、霊犬と共に光へ包まれ――――
新たな様相へと変身した❕
少女の周りの氷は溶けて乾き、そして生命力の向上から、先ほどまでの傷はどこにも無い。
代わりに頭の左右には、柴犬のような三角の犬耳を模した飾りが立ち、
額にも戌ちゃん ◤˶•̀㉨•́˶◥ の顔の造形が「わんわんお! わんわんお!」と吠えている。
籠手には、左手に口を開けた〈阿〉、右手に口を噤んだ〈吽〉の ❝お犬さま❞ の刻印が現された。
マノン
(ちょっ、ちょっと恥ずかしい格好です。でも、力が出せるかも知れません!)
「はあぁぁぁぁあ━━━━っ!!」
半球の領域薔薇結界✿が、マノンを中心に一挙に広がると、集会所の氷塊は全て蒸発し、透き通る空色の薔薇の香りと花弁は舞う。
貪狼の能力 ❝薔薇結界✿❞ が、使える『フォルム・ドゥ・ワンワン』。
マノン
(こんなに良い香りが、するんですねぇ。)
アルコル
「マノンちゃん、見て!」
マノン
「アルコルちゃん!」
❥アルコルちゃん★彡の指差す先に、黒衣を纏い、ペストマスクの魔術師ゴンタセスが、飛行魔術で浮かび上がり、
こちらへ向かって、何らかの魔術を使おうとしているのが、確認できた。
邪悪なオーラは空気をゆがませ、その手に握られる杖の先から、放出しているようだ。
○【ケモイチ村の上空】
魔術師 ゴンタセス
(何をやっておるのだ、災厄の使者よ…)
「死霊魔術、発動。キチベンヂボレボキン、キチベンヂボレボキン… クコリ!
出でよ… 我が屍たちィィィィ……」
○【ケモイチ村、集会所の外】
土が、ぼこっ、ぼこぼこっ!
地表のあちこちが、まるで呼吸をしているように脈打ち、ついに破裂するかの如く盛り上がる。そこから突き出したのは、土にまみれ、鮮血に染まった、
無数の手、手、手、手、手、手、手、手、手、手、手. 手. 手. 手. 手. 手. 手. 手. 手. 手. 手. 手.手.手.手.手.手手手手手手手. . . . .....
○【ケモイチ村、集会所】
アルコル
「ふふん♪ 死霊魔法なら❥アルコルちゃん★彡に、お・ま・か・せ・よ❤」
✪マジカル❥アルコル★彡ステッキで、❧ゴスロリ❦冥土❥アルコルちゃん★彡に、♡メタモルフォーゼ♬
ふわりと空より降り立ったのは、紅と黒と白のフリルひらめくスカート、ニーハイを纏いし一人の少女。
マノン
「わたしも行きます! 薔薇結界✿」
マノンはそう言うと両腕の籠手を、カキンッ♪カキンッ♪ と打ち鳴らし、魔術師ゴンタセスに向かって。
集会所の割れた窓を開けて跳び出し、結界✿を階段状に張り巡らせて、足元より花弁を舞わせ、駆け登って行く。
○【ケモイチ村の上空、マノン】
マノン
「チェストォォォォ━━━!!」
魔術師 ゴンタセス
「なんだお前はッ?!」
マノン
「セイヤッ!」
マノン・マドレーヌは、薔薇結界✿を面の攻撃として、ゴンタセスめがけて撃ち放った!
さらに、
マノン
「セイ! セイ! セイ! セイィ! セイヤァ━━━!!」
魔術師 ゴンタセス
「お前は一体、なんなんだ〜〜〜ッ!」
マノンは、連打、連打、連打、薔薇結界✿を連打で放つ!!
吹き飛ばされた、ゴンタセス。
○【ケモイチ村の上空、貪狼】
―――― そしてコチラ側では、人狼ルー・ガルーの貪狼が。
貪狼
「薔薇結界✿に御座います。」
化け物彼女の必殺の攻撃にも、
自身を、薔薇結界✿の球体へ包み完全に防御して、丁寧に挨拶する余裕をもみせた貪狼。
『不死鳥の眼』を通じた、彼の能力は強化されている。
貪狼
(凄いですね、この身体。
空は飛べるし魔力も増大して、彼女の強烈な肘鉄にも動じない。)
「では、♡薔薇封印✿に御座います。」
強大な辰モンスターを、薔薇結界✿の防御壁で包み込む♡薔薇封印✿を発動させた。
美しく鋭利な造形の頭部に生えた角が点滅し、ピカッっと真っ白に光る!
しかしそれは封印の中だけで、こちら迄は届かない。
不満の声が、化け物彼女から漏れた。
化け物
「リュウゥゥゥゥゥゥ……」
貪狼
「さァ、君の中に有る本物の『可愛らしさ』、引き出してあげるよ❤」
人狼ルー・ガルーの貪狼は✿紫の薔薇を口にくわえ、懐のホルダーから、
愛らしいリボン模様の刻まれる、『宝具』銀のMimi弾丸が装填された、
フレンチ M1777、スチームパンク黄金ピストルを抜き、撃鉄を起こす。
―――― ガチャッ。
貪狼
「❤可愛くなぁれっ――――」
狙いをつければ、ピンク色の✪魔法陣❂は展開され、引かれる引き金。
夜空へ流れる星の一つのように、銀色の弾は輝き、モンスターの額へ吸い込まれてゆく。
一刹那に起こる、凄まじき閃光と、爆縮!
化け物は崩れ落ち。
あっと言う間に、ちっちゃく成っちゃって――――
ふわふわ浮いてる、もふ縫いぐるみのモンスターになっちゃった〜
辰子ちゃん
「 (╯˶ˊ◕ᴗ◕˶)╯りゅうりゅう! りゅうりゅう!」
貪狼
「… ふふふ、魅力的だぞ辰子ちゃん❤
世界がどんなに壊れても、❝可愛い❞ だけは『絶対正義』だ❕




