46 ドラゴン vs サラマンダー
○【ケモイチ村、集会所の外】
青白い✪魔法陣❂が、空間へ歪むように現れたかと思うと、辺りの空気が瞬く間に凍りつく。
その瞬間、周囲の暗闇は拉げ、強く稲妻が走り辺りを明るく照らし出した。
目を閉じる暇もなく、雷鳴は轟き。
空がまるで、ひっくり返るかのようにひどく震える。
暗闇に蠢く化け物彼女、東洋風ドラゴンの巨大な輪郭は、稲光を背へ浮かび上がり、とぐろは螺旋にして長大、
金色に輝く圧倒的な鱗に覆われ、さながら無数の雷のようなその風貌は、
霹靂に撃たれた如く、不幸がここに顕現す。
魔術師 ゴンタセス
「災厄の使者は、今ここに現れた。我は勝った!! わっはっはっはっはっ!」
化け物彼女
「リュウゥゥゥゥゥッ……」
○【ケモイチ村、集会所】
マノンが、アルコルが、集会所の人々が、ただ立ち尽くし、驚愕して、或いは恐怖に凍りついていた。
空は裂け、大地は悲鳴をあげ、熱風は地表を焦がす。
あらゆる音が消え、ただ重々しい鼓動だけが、世界へ響いていた。
化け物彼女は、山吹色の尾を振り上げ、木々を吹き倒し、薙がれた大木は怒涛と逆巻き、集会所を襲う。
○【ケモイチ村、集会所の外】
ドドドドド! ドドドドド! ドドドドドドドド!!
大地が鳴ると共に、巨大なトカゲ… いや両生類のサラマンダーだ!
熔岩の脈打つ赤黒き灼熱の平らな頭で、巨木を跳ね上げ、そのまま辰の化け物へ飛び上がり、両前足で突き押した!
土煙は昇り、砂礫が、バラバラバラ、と音を立てて降って来る。
集会所の窓ガラスは割れ、土の腐った臭いが入って来た。
アルコル
「✪氷舞台生成❂!!」
❥アルコルちゃん★彡は何重もの✪魔法陣❂を写し出し、次々に灯される明かりと、回転しながら地を割り出現する氷舞台の上で、
2大怪獣の決戦は始まった。
サラマンダー
「だふぅぅぅぅぅ〜!!」
サラマンダーの燃え立つ炎の吐息は、稲光を纏いし、雷龍の鱗へ吹きかけられ、
前足へ噛り付き、身体をひっくり返すと、雷龍も引きずられ、もんどり打ち倒れる他ない。
なおも身体を返そうとするサラマンダーへ、長き尾の鞭を叩き込み、絡み付き、ギリギリ、と音を立て締め上げて、バリバリ、と稲妻が走り、
それでもサラマンダーの口は、前足を咥えて離さない、これは引き離されず。と思った瞬間、
硬質的造形の龍の化け物の、頭部の角は点滅し、空気が泡立ち爆ぜる!
サラマンダーの身体中から湯気が立ち込め、焼き焦げる臭いが充満し、息もできない。
仰向けへ吹っ飛び、ゆっくりと崩れ落ち、倒れ込むサラマンダー。
○【ケモイチ村、集会所】
マノン
「サラマンダーさん!」
突風が吹き荒れ、氷舞台を割り巻き上げて、そこら中へ打ち付ける!
集会所へ氷晶は流れ込み、マノンも、アルコルも、タコたちも、村人たちも皆、埋もれて仕舞った――――
……… 刹那のこと… マノン・マドレーヌの ❝梵の座❞ に、フェニックスの羽き毛が、虹の如く玉響に煌めき萌え立つ。
○【世界衛生ウイルス研究所の正面】
フェニックスの愛おしき翼の焔は、闇へ灯る大星の光り。
天の原を舞う満月の瞳が、悠遠なる太古よりの存在『人狼ルー・ガルー』を照らし、
その懐のポケットより、木札は顔を出して転ずるは、
◤˶•̀㉨•́˶◥ 貪狼の眷属霊犬、豆柴の戌!
フェニックスの眼差しを通し、マノンは見出した――――
○【ケモイチ村、氷晶に埋もれた集会所】
マノン
「… 戌さま……」
少女の手が、空へ掲げられる。
少女の血が、手の平から一雫、氷晶の白さへ落ちて染み込む。
魔法ではない。契約でもない。
それは、遙かなる呼び声。
少女の瞳が、暗闇へ示す先に輝く。
○【世界衛生ウイルス研究所の正面】
フェニックスの瞳と、霊犬 戌の瞳、そしてマノン・マドレーヌの瞳が共に眩く光る時、それは起こった。
戌ちゃんが貪狼の懐より宙へ飛び出して、空間は凹んで穴が開き、その切れ目へと戌ちゃんは入って征く。
戌ちゃん
「 ◤˶✴㉨✴◥ わんわんお! わんわんお!」
貪狼
「戌ちゃん!」
貪狼は慌てて跳び上がり、右手を伸ばした。
すると彼も、そのまま 雪兎ちゃん、アヒルちゃん を抱いたまま、霊犬を追い裂け目へと吸い込まれ、この場より跡形も無くかき消えて仕舞った。
○【ケモイチ村、氷晶に埋もれた集会所】
アオオォォォォォォォン……
村人 アラン
「…… 聞こえるか?…」
夜空の奥へ耳を澄ませば。
誰も答えないけれど、沈黙の中に確かに聞こえる。
アオオォォォォォォォン……
アオオォォォォォォォン……
アオオォォォォォォォン……
それは遠く、だけども明らかに響く。
宇宙を金色に染め、長く尾を引く遠吠え。
風が運んで山々へこだまし、森の息吹と鳴り渡り、
魂の底を揺さぶる声が。
アルコル
「… 来た!」




