42 かわいい物の狩人
ギヨティーヌ
「あちらも、出迎えてくださった、みたいですのね。かえって、好都合というものですわぁ〜
では先生がた、お願いします。」
その時、橋の上に3つの怪しき影が現れた。
一つは、真っ白な燕尾服の裾を風へひるがえし、金色の瞳を輝かせ。
紫色の薔薇を左手に、『宝具』Mimi弾のフレンチ キャバルリー、スチームパンク黄金銃は右手に。
人狼ルー・ガルーの貪狼。
もう一つは、状態保持・破壊不可を操る、ブルー・ラインが入った、ユニフォームの爽やか男子❇️
君の行く手には何が待つ❕ 巨人ジェアンの巨門。
さらにもう一つは、そよぐ少ない頭髪と、ちょっとメタボが気になる、お腹をさすりながら登場のオサーン。
呪詛ピエロの紫微大王。
貪狼
「かわい子ちゃ〜ん、待ってておくれ。今いくからね!!」
紫微大王
「貪狼ちゃん。〈かわい子ちゃん〉なんて死語よ〜〜!」
巨門
「よぉしみんな、ワールドチャンピオンが俺の夢だ❗ いっくぞぉ〜〜〜‼」
紫微大王
「俺たちの夢を叶えるのは巨門、お前しかいないんだ!
と言うわけでですね、わたくしは失礼いたします……」
ギヨティーヌ
「はいはい。」
紫微大王
「あっダメ! 髪に触るなっッ言ったろ!!
あぁ止め〜〜止めてよぉ、きゃァァァァ……」
この場を離脱しようと画策する、紫微大王の頭髪を一本だけ、ギヨティーヌが摘むと、その毛根が悲鳴を上げて、ペンギン歩きになる。
垂直3連装人間砲塔1基付きトラックの、前後のアウトリガーが左右へ張り出され、アウトリガー・ベース上に設置させると、荷重でベースはゆっくり土へ沈んで止まった。
紫微大王
「ごめんなさい、ごめんなさい。わかりましたハイ! 一番下ですか? 下ですね、ハイ! 失礼しま〜す。」
○【世界衛生ウイルス研究所、別棟格納庫、人間砲弾前】
シューゥゥゥゥ〜〜〜
❝魔石炭❞ で焚かれる、水蒸気は炊き上がり、
たいへん素直な紫微大王が自ら進んで砲弾となり、その他、貪狼、巨門の、垂直3連人間砲弾がそろう。
砲塔の左側にある射手席ではソフィー・シューが、水準器で水平・垂直を調整。
照星・照門に目標を照準合わせ。砲身を旋回させて方位を一致させる。
距離、約1キロメートル、砲身の角度を調節した。
ソフィー・シュー
「では諸君、下門を発射後に、弾着位置を目視で確認して、ズレを修正するぞ。」
金属の軋む音、魔力はうねり、人間砲塔✪魔法陣❂が展開する。
紫微大王
「あの〜、聞こえたんですが、もしかして試し射ちですか?」
ソフィー・シュー
「そうとも言うな。発射ぁーッ!」
紫微大王
「昔のように、もう一度ぬくもりを〜〜〜〜〜!!」
ギヨティーヌ
「ソフィーさん! 紫微大王は破軍さんのバフだけで、状態保持も破壊不可も、結界魔法も使えませんのよ!
着弾の際にかなりアレなことに、なるのではありませんこと?!」
ソフィー
「そ、そうなのか?! なら、中門も上門も発射ー!!」
巨門
「チャンバひとつに、ボールもチャ〜ン〜バ〜〜〜〜〜♬」
貪狼
「かわい子ちゃ〜ん、土日どちらか空いていたら会おうよぉ〜〜〜〜〜」
○【世界衛生ウイルス研究所、敷地内、氷雨降る上空】
吠えるウォートロールたちを、飛び越えざまに、サラマンダー・パウダーの朱い尾を引き、飛んで逝く紫微大王。
紫微大王
「こんなに辛いのなら… こんなに切ないのなら… こんなに寂しいのなら… こんなに虚しいのなら……」
巨門
「重力軽減、巨大化、身体能力増強、生命力増強、攻撃力上昇、状態保持、破壊不可。どこまでも走り抜くんだ、いっくぞー!」
巨門もウォーウイルスに効力のある、サラマンダー・パウダーをウォートロールへ振りまきながら、
そのユニフォーム姿の身体は、みるみる15等身の巨大な爽やか男子❇️へ変わって行き、
紫微大王をヒョイと摘むと、自分の背へ乗せる。
紫微大王
「巨門ちゃん、好き❤」
紫微大王は巨門の背中へ、顔を埋めた。
紫微大王
「ちょっと汗くちゃい❤」
巨門
「汗は涙より、美しい❇」
○【世界衛生ウイルス研究所の正面、敷地内上空、雲の切れ間より月】
ウォートロールの群れを飛び越えて、
化け物彼女
「ギィイイィィィイイッ!!!」
精神を劈く、激しい悲痛な叫びが聞こえる。
それはもはや、生き物の声ではない。
元は獣人だったらしいそのウサ耳の ❝化け物❞ は、全身を白色の禍々しき煙へ包み、触れたものを溶解させる毒を撒き散らし、木々は枯れ、酸の臭いで咽かえっていた。
貪狼
「聞こえる、聞こえる。君の憎しみに悩む叫びが、君の愛に苦しむ嘆きが。」
氷雨は止み、雲の切れ間より覗く月光を背負い、人間砲弾と化した人狼ルー・ガルーの、ウェーブした長髪が夜風に揺れ動く。
彼はゆっくりと、凝った彫刻のフレンチ M1777 キャバルリー フリントロック、スチームパンク黄金銃の撃鉄を起こした。
―――― ガチャッ。
愛らしいリボン模様を刻んで、『宝具』銀のMimi弾丸が装填されている。
貪狼
「さァ、君の中に隠された本物の『可愛らしさ』、引き出してあげるよ♡」
男の名は、貪狼。紫微一族の長兄。
かつて恐れられた ❝ฅ^๑•̀д•́๑^ฅ 人狼❞ の生き残りにして、今では世界最後の『かわいい物の狩人』。
彼の得物は、相手を倒すための物ではない。
撃てば、化け物は「可愛く」なる。
かつて失われし貪狼の『愛しい記憶』を、少しずつ削って作られた……
それが彼の愛の証。宝具―――― 〈Mimi弾〉だから。
貪狼
「♡可愛くなぁれっ――――」
狙いをつけると同時に展開する、ピンク色の✪魔法陣❂、引き金が引かれ、
銀色の弾が夜空を舞い、化け物の額へ吸い込まれた。
一刹那、凄まじい閃光とともに、爆縮音が鳴り。
そして次の瞬間、
地面へ崩れ落ちたモノは―――― ぴょこぴょこ飛び跳ねる、もふ耳の小っちゃな、雪兎ちゃんの縫いぐるみ、のようなモンスターだぬ。
雪兎ちゃん
「 ꒰⑅꜆ᐢ ᎔ . ᎔ᐢ꜀꒱ うさうさ! うさうさ!」
貪狼
「… ふふふ、魅力的だぞウサギちゃん♡
世界がどんなに壊れても、❝カワイイ❞ だけは『絶対正義』だ❕
おやおや? そこに見える、君のその黄色くて愛らしいフォルムは、アヒルちゃんかな♡」
夜風が、貪狼の真っ白な燕尾服のすそを、大きく弾ませ、
彼は微笑み、Mimi弾をもう一発、装填する。
―――― 人狼ルー・ガルーの戦いはこれからだ‼




