40 人間砲弾だ!
ソフィー・シューは、尖った耳が横へ伸び、実年齢より余程幼く見えるが、ギヨティーヌの一つ歳上のお姉さんだ、❝ティティ (ちびちゃん)❞ と彼女を呼ぶのは、そのためなのだが。
しかし今では、ギヨティーヌに遙か身長は越され、ちびっ子ツリ目、左目眼帯。
短パンに膝下まである上着を着込み、細くて褐色ぷにぷにの肌、桃色長髪を三つ編みに結い。
メカヲタから、特待生として逸早く、帝立レネット魔法学院へ入学し。
❝魔動蒸気機騎獣❞ の専門教師になっていた。
ギヨティーヌ
「… フィーさん! クロさまに御挨拶、挨拶して!」
ギヨティーヌは小声で、ソフィー・シューにクロ・ド・プラチナへの、挨拶をうながす。
ソフィー・シュー
「えっ?! 馬に?…
く、クロ・ド・プラチナくんかぁ。ボクは、そうだな。ソフィー・シューと言う、
シュー家は名門でな、タタン家へ招かれ、ラ・キャン帝国の首都メトロポールにて、オ・ソレイユ領の経営を代々任されているな。
ボクは今、ギヨティーヌくんが言ったように、帝立レネット魔法学院で、教師の職に付いている。まぁ、よろしくたのむ。」
クロ・ド・プラチナ
「クロ・ド・プラチナである。よろしくたのむ。」
ソフィー・シュー
「しゃ、喋ってる?! 馬が喋ってる、馬が……」
ギヨティーヌ
「失礼の無いように、お願いしますわ。
ところでフィーさん。貴女が来られたと言うことは、ナニか持って来て、らっしゃるんでしょうねぇ。」
ソフィー
「…… 喋った、馬が…
ぁあっ?! あ〜〜、持って来たとも特別製のヤツを、ココにな! ふっふっふぅ〜」
ソフィーは、シートをかぶせたトラックの荷台の方を、とんとん叩いて見せる。
○【ケモイチ駅付近】
ケモイチ駅へ山岳鉄道が到着すると早速、救援隊のスタッフが荷物台にレールを取り付け、
ソフィーを助手席へ乗せて、魔動蒸気機関トラックは降り立ち、かぶされるシートは取り除かれた。
ソフィー
「見たまえ、これが。❝魔動蒸気機人間砲弾❞ だ!」
ギヨティーヌ
「ほうほう、フィーさんが開発なさったんですのね。で、どのように使うんですの?」
ソフィー
「魔動蒸気機関で、撃ち出す砲弾だ!」
ギヨティーヌ
「何を?」
ソフィー
「人間砲弾だ!」
ギヨティーヌ
「―――― スタッフの皆さま、ご愁傷さまで御座います。」
救援隊スタッフ一同
「(ヾノ・∀・`) いやいや、いやいや、いやいや!」
スタッフへ向かい、丁寧に礼をとるギヨティーヌ。
ドド〜〜〜ン!
近くで音がして煙は上がり、白いドラム缶に手足が生えたような、世界衛生ウイルス研究所の、パワードスーツの数体が、サラマンダーの一振りで皆を越え飛んで逝く。
ソフィー
「理想的な放物線だ。あれだよ!」
○【ケモイチ村、外れの物置小屋内】
ケモイチ村の外れの、無人の物置小屋の中では、ペストマスクを付け、黒いローブの裾を泥に汚し、ひそかに5名の魔術師が、描かれた魔法陣に向かい、長文の呪文を低く唱えていた。
魔術師 ゴンタセス
「今宵… 人類は終焉の時を迎える…… ウォーウイルスの裁きを受けぇ〜よ〜〜」
夜の霧雨が赤い光に満ちて染まり、腐敗した病の匂いは混濁し、一陣の風が遠く深き森から吹き抜ける。
地面は震え、魔法陣が鈍い光りを放ち、白き霞は深く立ち込め、
ウォーウイルスに感染した、ヒューマン10名ほどが、よだれを垂らし、服は汚れ、皮膚は爛れて、目は焦点を失い虚ろに、もはや体力は使い果たし、無気力に立ち尽くしていた。
世界衛生ウイルス研究所から、魔法により転移したのだ!
黒い小袋が飛んで、感染者の顔に当たって弾け、サラマンダー・パウダーの、朱い粉が舞う。
トロールたちを感染させた方法が、
ウォーウイルスに感染したヒューマンを、トロールの丘へ送り込んだからと、
貪狼の眷属霊犬 戌 の報告で知る、
透明人間の破軍と、吸血鬼ヴァンピール✴文曲は、これを警戒していたのだ!
魔術師 ゴンタセス
「何者だッ?!」
暴れるだけの体力を、もはや持たぬ感染したヒューマンたちは、バタリバタリとその場へ倒れ、手足だけを小刻みにパタパタ揺らしている。
魔術師たちは物置小屋じゅうを明かりで照らすが、自分たち以外には誰も居ない… ように見えた。
魔術師 ゴンタセス
「不可視の何者かがいる、必ずいる!
キチベンヂボレボキン、キチベンヂボレボキン… クコリ!」
ゴンタセスが不思議な呪文を唱え、魔鏡を、あらゆる方向へぐるり回すと、その一角に、一つの揺らぎの如き陰が顕れた。
黒い小さな包みも数個が浮いている。
この、透明人間・破軍のピンチに、吸血鬼ヴァンピール✴文曲の、眷属蝙蝠の数匹が飛び交い、魔術師たちを攻撃し翻弄した。
眷属蝙蝠たち
「ちすちす! ₍₍ ⎛⎝㇏^˶˃ ᵕ ˂˶^ノ⎠⎞ ₎₎ ₍₍ ⎛⎝㇏^˶•-•˶^ノ⎠⎞ ₎₎
₍₍ ⎛⎝㇏^˶◕.◕˶^ノ⎠⎞ ₎₎ ₍₍ ⎛⎝㇏^˶•̀ω•́˶^ノ⎠⎞ ₎₎ ちすちすちす!」
魔術師 ゴンタセス
「アンデットの眷属共めぇ〜」
破軍はこの隙に物置小屋より脱出、それと入れ替わって現れ出でたる吸血鬼ヴァンピール。
己が顔の前で、指を鳴らして、
吸血鬼ヴァンピール✴文曲
「低血圧✴パチン♪」
5名の魔術師はいっせいに昏倒した、血液を操るヴァンピールにかかれば、脳貧血でヒューマンの魔術師など一捻りだ。
それでも、魔術師のゴンタセスは魔法陣へ触れ、
魔術師 ゴンタセス
「キチベンヂボレボキン、キチベンヂボレボキン… クコリ……」
青白い亀裂が地面へ走り、その裂け目から咆号が轟くと同時に、
異形の存在が姿を現した―――― ウォートロール。
ウォートロール
「ウオォォォォオォォ!」
身の丈4~5メートル超、全身に瘴気を纏い、その眼には感染したウォーウイルスの暗い靄が、グリグリと宿っている。




