表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/58

33 知恵捨て

○【ケモイチ村の集会所、夕方】



ギヨティーヌ

「皆さま、ごきげんよう。

 わたくしは、リ・グランドゥ・アスピラシオンりょう石鹸問屋せっけんどんや 令嬢、ギヨティーヌ・カヌレと申します。


 我がカヌレ家に伝わる、この空飛ぶ不思議な馬に乗り、旅をしておりましたら。ベイト・ノワール渓谷で、気を失い倒れたマノンさんを、みつけたので御座いますわ。

 さきほど、マノンさんのお母さまには、ご挨拶して参りました。

 皆さま、以後お見知りおき、お願い申し上げます。」


村人 アラン

「ありがとう、カヌレさん。皆でマノンちゃんのこと、心配してたんですよ。」


村長

北陸道ほくりくどうとは、遠くからいらしたんですね〜」



 ギヨティーヌ・タタンは、ベイト・ノワール渓谷けいこくの ❝女の怪物❞ とう、皆におそれられるふたは、あえて使わないようにした。



村人 アラン

「… 広場にいる救援隊のことは、ご存知ですか? 世界衛生ウイルス研究所と、関係があると思うのですが。」


ギヨティーヌ

「オ・ソレイユ領から来た、救援隊と言うのなら、そうなのでしょう。

 わたくしは、個人で来ておりますわ。」

(世界衛生ウイルス研究所? なんのことでしょう。)



 広場にむらがる、世界衛生ウイルス研究所の連中のことは、侍⚔武曲ぶごくが、人狼じんろうルー・ガルー 貪狼どんろう眷属けんぞく霊犬れいけん いぬ を走らせたはずだが、いまだギヨティーヌたちの前へ姿を見せない……



○【ケモイチ村の集会所の外、夕方】



マノン

「あのぉー、お師匠さま。前からお聞きしたいと思っていたのですが、

 ❝チェスト❞ って、何か意味が有るんですか?」


ギヨティーヌ

「❝チェスト❞ は、❝知恵捨ちえすて❞ ですわね。」


マノン

「❝知恵捨て❞ ? ですか?!」


ギヨティーヌ

火焔牢獄かえんろうごくの謎をいたマノンさんに、こんなことを言うのは、どうかな? とも思うのですけれども…


 いざ戦いの場で、今更いまさらあれこれ考えると、まよったり躊躇ためらったり決断ができなくて、身体が動かなくなったりしますの。ですから、あれこれ考えるのは捨てて、

 稽古けいこで身に付いたわざと、感じとった情報から頭に浮かぶ法則ほうそくしたがい、戦うのですわ。」


マノン

「法則ですか……」


ギヨティーヌ

法則ほうそくとは単純たんじゅんです。

 〈水はひくきに流れる〉と言ったような、当たり前の『ことわり』のことですわ。

 これは、❝水❞ そのものの場合と、❝大衆たいしゅう❞ のことをす場合がございます。」


マノン

「❝大衆❞ ?…」


ギヨティーヌ

「❝大衆たいしゅう❞ は、周囲しゅういの意見や社会の動きに流されて、同質化どうしつかを望んで低い箇所かしょまります。

 学者などの専門家せんもんかも、自分の専門のことしか知らない、❝大衆❞ の典型てんけいになりますわね。」


マノン

「はあ…… 難しいです、お師匠さま。」


ギヨティーヌ

「大丈夫! マノンさんなら分かるように成りますわ。

 ところで、稽古けいこがまだでしたわね。稽古ですわマノンさん!」


マノン

「はい、お師匠さま!」



 マノン・マドレーヌの亡くなった父、アンドレ・マドレーヌの友人であった村人、アラン・フリュイが集会所の窓から、

 そっと、マノンを心配そうに見つめる中、師弟してい稽古けいこが始まった。


 マノン・マドレーヌは足を肩幅、向きは内八うちはの字に、足で大地をつかみ、

 腕を胸の正面でエックス字から、引っ張り込みわきめ、拳は逆八の字に肩の高さ。

 呼吸は、吐くときは吹くようにゆっくり。吸うのは足の裏から素早く、身体全体を巡らせ、おヘソの下に息を貯め、お尻の骨盤底筋こつばんていきんめる。



マノン

ッ‼」


ギヨティーヌ

「〈相手の太刀筋たちすじ見極みきわめ〉。きや前蹴まえげりを使い、〈自分の間合まあいいで戦う〉。

 〈かれを知りおのれを知れば百戦ひゃくせんあやうからず〉これも、この世の『ことわり』、絶対不変ぜったいふへん法則ほうそくですわ!」


マノン

「はい、お師匠さま!」



 前蹴まえげり、横蹴よこげりをやってみせるギヨティーヌ、そしてこれを真似まねるマノン。

 さらにギヨティーヌ・タタンは、改めてマノン・マドレーヌへ語り始めた。



ギヨティーヌ

「マノンさん、

 もし村人に、ウォーウイルス感染者が出たらどうします? 戦えますか?」


マノン

「… それは……」


ギヨティーヌ

「マノンさん、まさに ❝知恵捨ちえすて❞ が必要ですのよ。


 村人が暴れてお互いに傷付け合ったり、それ以上の取り返しが付かなくなる前に、

 止めなければなりません。そのためには、


 相手をせいするための力を、迷わず使うことです。〈愛のために戦う〉ことです!

 大丈夫、貴方は強い。相手を過剰かじょうに傷付けること無く、制御せいぎょできます!

 〈強さは愛〉ですわ!!」



○【ケモイチ村への道、逢魔時おうまがとき



 日が暮れると同時に、夜の闇を引裂き、ウォーウイルスの感染で、狂暴化したウォートロールのかなしき雄叫おたけびが轟き渡った。


 ケモイチ村への道のりは、岩からウォートロールへもどり、暗がりよりい出た、彼らウォートロール同士の衝突で、今や修羅場しゅらばと化す。

 トロールの肌は緑から減紫けしむらさきへ変色し、筋肉は異様な肥大化を果たしている。口からは泡を吹き出し、理性を失うその形相ぎょうそうは、もはや知的生命体だったとは、信じられない有り様だ。



 そのウォートロールが、馬防柵ばぼうさくみちびかれ、ケモイチ村ではなく、ベイト・ノワール渓谷へ誘導ゆうどうされて行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ