25 不死鳥は羽ばたいて
紫微大王
「文曲は、太古からアンデットやってるインテリ・ヴァンピールだからな。
古代文字なんて、チョチョイのチョイですよ〜!」
アルコル
「それで、どんな意味なの?」
文曲
「…… はてな?」
紫微大王
「解かんねぇぇぇぇのかよッ!」
マノン
「最初の詩は、魔人の説明ですね。
次が、謎…… 森の謎と同じようです。
❝進むは退く、終わりは始まり。❞……
―――― 森を進むと、森の入り口へ戻っていました。」
マノンが泉を見つめ、独り言のように囁いた。
ギヨティーヌ
「その通りですわ、マノンさん! 続けて、続けて。」
マノン
「❝求める者は求めず、得る者は捨て去る。❞…
最後の段は、牢獄の開け方で……
フェニックスさまの、死と蘇生の繰り返しが、炎の正体で。魔人が炎に閉じ込められているのも、この謎のせい。
後は、どうやって火を消すかですね……
❝少年の瞳から流れる涙❞ は何処にあるのか?
❝逆さの月❞ とは何なのか?……」
ギヨティーヌ
(逆さの月が… 盃になった…… 月、月…… ぅん〜〜)
「―――― 先程から、頭の上の泉には、半月が映っているのですけれど、本物の月は、どこにも見当たらないのです、どちらへ有りまして?
皆さん、月をお探しくださいまし。」
クロ・ド・プラチナ
「月は、出ているか?」
紫微大王
「頭の上の泉に月が反射してるんだから、本物の月は足元のどこかに、有るだろ…… おい、有るか?!」
しかし真下へ広がるのは、ただ闇ばかり。
逆さに生える木々の葉の一枚一枚へ、溜まった雫に映る、無数の月、月、月、
月の灯りだけが、その暗黒へ溶けてゆく。
ギヨティーヌ
「本物の月は…… 有りませんわね。
今からわたくしが話すことを、皆さんで考えてくださいませ。
お酒の器に、逆さの月が映ったことから逆月、お酒の器を、盃と云うようになった。
(前世で読んだ気がしますが〜 あれは何でしたか……)
水に映った月、水月は手で直接は取れません。出来ないことの例え、
ですが、手におさまる器に水をはり月を映せば、水月を手に取ったとも言えます。
下弦の月とも考えましたが…… これがわたくしの思い付く、❝逆さの月❞ ですけれど、他にございまして?」
これを聞き、マノン・マドレーヌは、サラマンダーを口にした際のことを、思い出していた。「見たことを忘れないようにしよう」と想ったことを。
マノン
(あの時… 白鳥と映り込んだ半月…… お父さんは水面を指差した。フェニックスさまも鳥、水鏡に映る月は、反対に映る……)
「❝求める者は求めず❞ は、水に映った直接取れない水月のこと、なのではないでしょうか、お師匠さま。
…… 手におさまる器なら、水月を取れると言うことは―――― ( ゜д゜)ハッ!」
マノン・マドレーヌは、何かを思いつき、
マノン
「クロ・ド・プラチナさま、」
と、クロ・ド・プラチナへ何やら話し、共に木々の方へ飛んで行く。月の映り込む雫が乗った木の葉を一枚、もいでもどって来ると、火焔牢獄の正面で、
マノンは、手のひらを下にして木の葉を持ち、本来なら零れ落ちるはずの一雫は、逆さに木の葉へクッ着いている。
これが ❝得る者は捨て去る❞ だろうか。
火焔牢獄へかざして見ると、雫は何処までも澄みきり震え、半月と一緒に火焔をも映し出し、上下逆だったものが、正しく、炎と少年を浮かび上がらせていた。
マノン
「最後は、❝フェニックスの炎は一息にて消える……❞」
マノンはこの一雫を、そっと一息で吹いてみる。
雫は一気に、広がり散らばって、それと同時に雫へ映り込んだ、あんなに激しく燃え盛った火焔までもが、
火の粉を勢い良く舞わせ、フゥッと大きく揺らいだかと思うと。
赤く、青く、銀に、金に、瞬きながら、炎は歌い、息吹は描く。
一つの命が終わるたび、世界はひっそり呼吸を止めた。
けれども、未だ灯る明かりが一つある。
それは希望、記憶、名もなき祈り。
やがて一筋の光りは立ちのぼる、新たな翼、焔を纏い、空へ高く、不死鳥は羽ばたいて、
燃えては生まれ、散っては黄泉より帰り、
永遠を抱いて、浮かぶ希望の星に、一片の羽は贈られる。
少女の手が文字をなぞり、泉は強く輝き、囚われの炎の鳥は天へ解き放たれ、少年を縛る鈩の鎖は砕け、火焔牢獄は音もなく崩れ去った。
❝あべこべ砂時計❞ の砂は逆流を止め、正常な時を刻みはじめる。
マノンの周りを、嬉しさに翼を躍らせていたフェニックスも、たちまち泉の水鏡より表へ飛び立ち。
一枚の烈々たる羽だけが、舞い降りて、少女の両手のひらへ託された。
マノン
「痛いっ」
羽は消え、マノンの頭頂部へ小さき炎を上げて、アホ毛となり芽吹く。




