1 ケモイチ村、小さな宿屋
○【ケモイチ村、小さな宿屋】
明星が輝く、明け初めし早朝の ❝ケモイチ村❞ の空の下。
登山支度を終えてギヨティーヌ・タタンは、一夜お世話になった、小さな宿屋から、静寂に凍てつく表へ向かうため、扉のノブへ手をかけた。すると、宿屋の娘――――
前世で言えば中学生くらいの少女が、毛布を肩まで掛けたまま立っている。名は『マノン』と言ったろうか……
家の手伝いで日焼けした肌、両側へ垂れる透き通る空色のモフ耳がピコピコして、
(U^ω^) とても愛らしい〜
ここケモイチ村は、乱れる方位磁石に、針路を見誤る悪所が近くにあるため、一般のヒューマンが住むには厳しく、
優れた嗅覚や聴覚、その他の特殊能力を必要とする住環境なのだが、
だからこそ、他所よりの侵略者をこばみ、宗教都市城下の、平穏を保ってきたと言えよう村だ。
少女、マノン
「道、気をつけてください。」
マノンはそれだけを言い、小さな包みを差し出す。
ギヨティーヌ
「ありがとう御座います。お気持ち、とっても嬉しいですわ。」
それが道すがらの弁当であろうことが解り、俺は礼を言い歩き出した。
ふと振り返ると、少女はまだ石段の上からこちらを見つめている。手を振れば、マノンも静かに振り返す。
ギヨティーヌ
(マノンさん、この土地に生まれ、山を知り、日々の営みに身を置く少女。)