第0話
いつも平凡で過ごせる。
いつも幸せな日常がある。
そんな日々が当たり前でいた――。ほんの、さっきまで。
★
海沿いに住んでいて、産まれてからずっとこの地で過ごしていた。
結婚して、旦那が来てくれて、子供を三人産み、両親は孫が出来てとても喜んで。
そして猫と一緒に暮らしていた。
日曜日の朝。皆と集まって食事していた頃、突然、揺れが始まり、地震だと思い皆でテーブル下に逃げた。
でもさすがに皆とテーブル下で地震が過ぎるまで凌ぐごとが出来ない。
「結衣、愛美、裕二はここに残ってて。あなたも、ここで一緒にお願い」
あなた――旦那に子供達に任せて、私と両親は地震が落ち着くまで凌げる場所を探した。
外がいいのか?
いろいろ考えているうちに、揺れはどんどん強くなってくる。
「仕方ない。狭いけど、ここで耐えよう!」
父親が叫んだ。
六人でテーブル下に入るが、やはり窮屈。
それでも父親の言うように、あれこれ考え行動できず怪我などしてしまうよりもいいだろう。
そう思ってテーブル下で地震が落ち着くまで耐える。
とは言うものの、地震は激しさをより増していき、このままテーブル下にいては危険なのでは? と思い始めた。
「危険だけど、外に出ない?」
提案すると、直後に玄関側から声が聞こえてきた。
「今すぐ外に出て、地下に逃げてください!!!」
お隣さんの声だった。
地下と聞いて、私と旦那、そして両親はすぐに行動に移した。
私達が住む家の直ぐ横に図書館がある。
その図書館には階段を下りて地下へと行ける。
そこのことか。
皆で一斉に離れ離れにならないよう外に出た。
地震はまだ続いてるけど、まだ天井が崩れる様子はない。
「皆、俺から離れるなよ!」
旦那は娘ふたりを。私は息子ひとりと手を繋いで、両親は後ろから。
旦那が先頭に立って家族を地下まで避難誘導してくれる。こんなに頼りになる人は、他にいない――。
★
「……んっ」
何か、おかしい。
手に、結衣と愛美の体温を感じない。
感じるのは、ざらざらした地面のような無機質な物。
風で髪がなびく――。
ハッとして直ぐ起き上がると、目の前には信じられない光景がある。
住宅街もない、高層建築物もない。ほとんどが更地になっているのに、空はただただ青い。
海からは波音が聞こえて、地震なんてなかったかのように静かな時間が流れていた。
ただ、私の体温と、脈が、普通でないことを訴えかけてくる。
皆は……?
ふと、上空を戦闘機が通り過ぎた。
一機。続いて二機と。
その戦闘機の先を見て、私は目を疑った。
そこには超大型生物がいて、街を破壊しながら、次々と来る戦闘機を大きな尻尾や腕で振り払おうとしてる。
どういうこと?
私は何もわからず、状況が理解できず身動きも息もできなくなった。