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転生したオバサンは、枯れヒロイン目指して仕事に生きます!  作者: 風間レイ
オバサンの慌ただしい学園生活

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オバサンは入学試験くらい平穏に受けたい  5

 指定された自分の椅子に腰を下ろし、筆記用具をカバンから取り出しながら自然と口端があがってしまう。

 緊張はしているのよ。

 でもこうして映画のセットのような素敵な教室にいられるというだけでも嬉しいの。


 試験を受けるのなんて何十年ぶりだろう。

 晴れて合格したら、一年とはいえ素敵なこの教室で学べるんでしょう? 頑張るわよ。


 すぐに全ての生徒が指定された席に座り終え、試験が始まった。

 入学試験は最初の試験が三科目分、休憩を挟んで、また三科目分の計六科目行われる。

 国語も数学も小学生中学年くらいに習う問題かしら。

 基本的な問題ばかりなので、特に悩まずに答えられた。


 入学はそんなに難しくはないと聞いていたから、予想の範疇の問題ね。

 でもクイズ番組で、小学校で習う問題ですといって出された問題が解けないことってあるでしょ。

 勉強してよかったと思う問題がいくつもあったわ。


 転生者は前世の記憶があるから有利だと言っても、この世界の地理や産業、経済に関しては新たに学ぶしかない。

 でもうちは商会の仕事をしているから、産業や経済は最優先で学んでいたし、異常な暗記力のおかげで学者並みにいろいろ覚えている私に隙はないわよ。


 問題は次からの学年をスキップするための試験ね。

 語学に魔法、礼儀作法なんて項目も出てくるらしいの。


 名前を書いたことを確認して、二回も解答を間違えていないか確認してから試験用紙を先生の使用する机に提出に行く。

 傍で見ると黒板が大きくて驚いたわ。

 黒板消しが日本の高校にあるものと同じだ。

 懐かしいなあ。

 窓の外で黒板消し同士をぶつけて掃除したものよ。

 今では黒板消しを綺麗にする装置があるのよね?


 カバンに筆記用具をしまって教室の外に出て行く。

 もう半分くらいの生徒しか教室に残っていなくて、ローズマリー様もユーインの姿もなかった。


「すごいな。ダンジョンにはいったことがあるのか」

「一度は行ってみたいよな」


 教室からさほど離れていないところで、ユーインは男の子たちに囲まれていた。

 男の子はやっぱり冒険者が好きなのか。

 そも周りでさりげなく話を聞いている女の子たちは、ユーインと知り合いになる機会を窺っているのかしら?

 アオハルね。学生生活って雰囲気がオバサンには眩しいわ。


「遅いじゃない」


 ローズマリー様の場合は若いから、この雰囲気に特に感じるところはないみたい。

 扉の近くの壁に寄りかかって、腕組みをして私を待っていた。

 普通それはイケメンの男子生徒がやるポジションじゃない?

 そんな顔をしているとこわいって思われちゃいますよ。


「試験を受けに来たんですから、成績を最優先させていただきます」


 試験結果はクラス分けにも、最初の席順にも反映されるのよ。

 合格するだけではなく、首席も狙っていきたいわ。


「わかっているわよ。休憩時間も入れると三十分くらいはあるから、休憩室で話しましょう」


 学園に休憩室があるの? って思ったけど、使用されていない教室を自由に使えるようにしてくれているだけだった。

 よかった。

 各階に豪華な休憩室がある学園なんて嫌だ。


 それでも何種類も飲み物が用意されていて、給仕の人が手渡してくれるのよ。

 そのくらいは自分たちでやらせて、自主性を育てないと駄目なんじゃない?


「一番奥で話しましょう」


 ローズマリー様が選んだのは、一番前の壁際の席だった。

 ここなら用事もないのに私たちの傍までくる人はいないもんね。


「ユーインの話ね」

「違うわよ。それも聞くけど、まずはあなたが襲撃された話よ」


 そうでした。

 とはいっても、私は馬車の中にいただけであっという間に片が付いてしまったので、あまり話せることはないのよ。

 だから、遭ったことをそのまま簡潔に話したので、すぐに話が終わってしまった。


「……祝賀会でジョナスにあなたを攫わせようとした犯人がまたやったのかしら」

「そうかもしれませんね。ずさんだけど地位とお金がないと出来ない計画ですから」


 ピアソン伯爵を動かすのも、治安維持部隊の新品の制服を用意するのも、それなりにお金がかかるし、権力も必要だわ。

 

「私とあまり接点のない人の計画だと思います。親しい人はみんな、私にはいつも警護がついていることを知っているはずです。大伯父様が騎士団を派遣してくれているのは予想外でしたけど、アレクシアがいますから」

「そうよね。アレクシアなら、戦うのが不利ならあなたを抱えて転移すればいいんだものね。うーん、じゃあ最初から襲撃者は捨て駒で、あなたを動揺させるのが狙いとか?」

「そのためだけに制服を用意するって、物好きですね」

「アホよね」


 これはもう考えても答えはわからないんじゃないかしら。

 今回は手の込んだことをしたせいで、いろんな証拠が出てくるかもしれないし、そろそろ犯人を特定してほしいな。


「でも私に出来ることは何もありません。ここで動いて、大人の方達の足を引っ張るような馬鹿な子供になる気はないんです」

「あなたは楽々と試験に受かって、襲撃なんてまったく気にしていないわって顔をするのが一番よ」


 私もそう思う。

 私が元気で、笑顔で、いつもと変わらずにいるほうが、犯人は悔しい思いをするはずよ。

 そしたらまた何か仕掛けてくるかもだけど、何回もやれば必ずぼろが出るでしょう。


「じゃあ、ユーインの話も聞かせて」


 続いてユーインの事情を説明したんだけど、ローズマリー様は難しい顔で話を聞いて、最後に額を押さえてため息をついた。


「アードモアのやつらって、めんどくさいわね」

「そうですか?」

「あなた忘れたの? クロウとホリーがマガリッジに来たことがあるじゃない。あの時のホリーの態度が気になっていたのよ」

「そういえば、ユーインが受験する気だとか、お金があるから学園に通えるみたいな話をしていましたね。……つまりもう、あの時にはバルナモアにくる話が出ていたってこと?」

「だとしたら、あの時にユーインも顔を出すべきだったでしょう。前もって話しておいてくれれば、こちらも迎える準備をしておけたのに」


 たしかにそうだわ。

 連絡もなしに突然来て、アシュベリー子爵家なんかに行くから嫌な思いをすることになったのよ。


「もしかして、一緒に来られない理由があったりして?」

「ローズマリー様、その笑い方はジョシュア様によく似ているけど、御令嬢としてはどうかと思います」

「そんな悪い顔をしてる?」


 口の周りや頬を指で押さえているローズマリー様が可愛い。

 それに、彼女の言っていることもわかるのよ。

 ホリーはたぶんユーインが好きなんでしょ?


「好きというより、宿の経営を彼らがずっとやってくれると思い込んでいたんじゃない? それが違っていて、ユーインは隣国に行くって言い出したでしょ? ヒロインのせいだって短絡的に責任転嫁したのよ」


 彼女は恋愛脳タイプだったのか。

 それで年齢をあんなに気にしていたのかしら。

 でも、ユーインだって自分とそっくりな顔の女の子と、しかも中身がオバサンと恋愛なんてしたくないでしょ。

 

「アードモアの残りのふたりも、ユーインがバルナモアに行くのに協力的だとは思えないしね」

「そうですか?」

「だって考えてみてよ。フューリアは教皇がいるおかげで平和で、うちも殿下のおかげでみんな仲良くうまくやっている。アードモアだけが揉めていたのが、ようやく平和になると思ったらヒーローがいなくなっちゃうのよ」


 ヒーローとかヒロインとか、ゲームの影響を受けているとはいえ、そこまで気にするようなことかしら。


「自覚がないのは本当に困るわね。これでユーインも活躍するようになったら? アードモアはもう三人しか残っていないから、もっと差が出るでしょう」


 なにも転生者だけで考える必要はないでしょう?

 もうこの世界にオギャーと生まれて二十年近くたっている人が、いつまでも転生者だからどうとか言っているのがおかしいのよ。


「教皇や殿下、あなたの活躍がそんな内輪だけのものだったら、誰も気にしないのよ」


 ……まあ、いろんな人にいろいろ言われているので、目立ちすぎていることは反省していますけど、でもやれることをやらないでいるのもどうかと思ってしまうのよ。

 伝票の変更とそろばんのおかげで、王宮の事務仕事がだいぶ改善されて喜ばれているし、マガリッジに関してはアレクシアを手伝わないなんて選択は、私にはないわ。


「いいのよ、あなたはあなたらしく行動していて。ユーインもそうよ。殿下にも連絡したのなら、すぐに手を打ってくれるでしょう。……いいなあ。私だけなかなかみんなに会えなくて、動きにくくて嫌になるわ」

「学園に通うようになれば毎日会えますよ。ユーインも話してみたらいいやつっぽいし、友達になれますよ」

「そうね。十代の男の子って感じよね」


 十代の男の子ですからね。

 でも言いたいことはわかる。

 ジョシュア様もコーニリアス様もギルバートだって、転生者でもないのに大人っぽすぎるのよ。

 ノアのほうが可愛げがあるんだもん。


 いや、実は中身が子供じゃないから可愛げが出せるのかもしれない。

 あれは計算しつくした可愛さなのかもしれないわ。

 本物の十代の男の子は、もっと格好をつけるわよ……きっと。


「そういえばノアといえば」

「ノア? 急に何? どこからノアが出てきたの?」

「考えていたらひょいっと……」

「……へえ」


 引かれてしまった……。


「この建物って天井が高くて、たくさん魔道具が使われていて理想的な学び舎ですけど、暖房効率悪いですよね」

「……あなた、他所でそういう話をしないでよ?」


 貴族は暖房効率を気にしたらいけないのかしら。

 いくらお金があるからって、無駄に使うのは私は嫌いよ。


「でも我が国にはダンジョンがないですし、人工魔石もまだ質のいい物が作れないんですよね? こんなに魔道具を使ったら、魔力補充も大変ですよ」


 魔石はバッテリーみたいなもので、魔力を補充して使うのよ。

 ランクの高い魔獣の魔石は何十年も、ドラゴンの魔石なんて半永久的に使えるらしいんだけど、魔力を使用した分は補充しなくてはいけないの。


「大丈夫よ。魔法科の生徒の魔力を使っているから」

「え? 生徒の魔力を吸っているんですか?」

「なんでそういう発想になるの。魔法科は魔法の練習をするでしょう? 訓練場は魔法で建物が破壊されないように、発動された魔法の魔力を吸収して魔石の補充に使用できるようになっているそうよ」


 へえ、うまく出来ているのね。

 そのおかげで生徒はいくらでも魔法を発動できるんだもんね。


 でも、安定した人口魔石の供給は至急の課題よ。

 ノアもいろいろ試しているって言っていたし、暇が出来たら私も作ってみようかしら。

 ……いつ暇になるんだろう。

 




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クイズ番組では今どきの小学校問題が云々というところにすごく共感。 転生者は地球の知識で難なく勉強ができるというラノベあるあるですが、そういうことだってありますよね! こういうところも主人公の精神年齢を…
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