表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第4話 ダンジョン住まいで一番世知辛く大切な事

「ええと、ここで良いか」


庭の一角、特に影が濃い所にギルドから支給されたグリーンモスの飼育用のセットを設置する。まあ、飼育セットとは言っても成体のグリーンモスの大きさは手のひらサイズなので、それを超えれない高さの柵と就寝用兼卵置き場の小屋を置くだけなんだけどな。餌である葉っぱを置くのは孵ってからだ。グリーンモスは温厚、無警戒の魔物の為、人間の子供でも倒せてしまう。しかも、同族からも面白半分で殺されてしまうと言うから、その弱さはラビットと同じぐらいである。いや、飢餓状態のラビットが餌にする為に倒されて、食べられたと言う事件もあるから、ラビットより弱いかもしれん。虫だからって甲殻が硬い訳でも無いので牙付けた敵はほぼ天敵とも言えるだろう。それ故に、冒険者達は見つけたら掃除が済んで森に帰るまで陣を組んで保護するほどである。バカマスターの行動は例外である、イイネ?


「まあ、しばらく街には近づかんとこ、1か月ぐらい」


まあ、残念でもなく当然と言うか、天の剣メンバーは取り巻き除いて、事前抜けたようだし、そこら辺は心配ないようだ。取り巻き以外で残っちゃったメンバーもギルドに密告者として保護されたようだし、安心、安心。何で知ってるかって?ロバートのとこの情報屋が教えてくれたのである。料金は前の情報と相殺してロハらしい。


「ん~、念の為、小麦粉と乾パンと干し肉追加で買ってきたから、解体に肉1を要求すれば、1か月は保つかな?」


冒険者やってれば、食事の大体の計算は出来る。まあ、足りなくなればフード被るなりして街に戻ればいいしね。と言うか、自分は脱退してるから噂はされんとは思うが、元クランが起こした事件だからね。気まずさがある程度抜けるまでは、うん。


「卵は数日あれば孵るかな?んじゃ、看板の外出中の札は取ってと」


客が居ないのを確認すると、今度は庭で焚火を行う。ただし、ただの焚火ではなく、少年達に貰ったラビットの肉を巻き付けた木を焼くのだ。肉が焦げて無くなったら火を消し、更に肉を巻く。そして、また火に近づけ、焦げて無くなるまで焼く、これを繰り返す。


「よしよし」


そして、肉の焼き付いた木で出来た灰をしっかりと冷ました後、袋に詰めていく。何人かの解体希望者が来たので、今度は中に入れずに魔道具を使ってやっていく。なんでかって?顔色が青いからである。つまり、慣れていない者、貴族あるいは市民のドロップアウトであろうからだ。それでも2~3匹狩れてるのは良い方で、1匹しか狩れていない場合は内臓の一部を貰った。まあ、コレがここが冒険者最初の壁と言われる由縁である。


「見る限り、ここでギブアップして、薬草採集に切り替えかねえ?」


誰もが魔物退治に成功する訳ではない。まあ、トラウマになってない事を祈りつつ、客が途切れた夕方から夜になる頃に灰が入った袋を持ち、外に出る。まずは、解体終了の札を看板に下げ、袋と一緒に持ってきたスコップとナイフを取り出し、シェルターの周りに2センチぐらいの筋を彫っていく。傍目から見ると、すっげえ怪しい行動だよな、コレ。


「人が少ないからこそ出来るよな、コレ。許可も貰ってるから心配ないし」


次に袋に入っている灰を筋に埋め、足で踏み固めていく。先も言ったが、兎自体は結界のダメージで倒せる。しかし、なるたけ、その結界に頼らないようにしたい。装置自体も壊れない訳じゃないし、起動の度に貯めこまれた魔力消費するからな。なので、兎にここはお前の同胞の肉を焼く、つまりお前達を仕留める存在が住んでるぞと匂いでアピールする訳だ。これで良し。では、晩飯用意するか。


「まあ、こんなもんなんですけどね」


用意したのは干し肉を使ったスープ、買ってきたパン、果実を絞ったジュース。以上!うん、まあ、酒飲めないし、あんまり増やしすぎて、家事で就寝時間削るの嫌だしね。そうなると、こうなってしまうのだ。まあ、要するに、世帯。うん、そういう事である。アレ?塩の味がシテキタゾイ・・・・・・


「解決方法はいくつかあるけど・・・」


1つは使い魔の召喚。これは魔法使いのある意味特権だね。後はネクロマンサーも、うん、まあ、独特の匂いさえ気にしなければ出来るかな?


「自分は最低限の魔法しか使えんからなあ」


これの問題点は使い魔の召喚は膨大な魔力が必要であり、定期的に魔力補充しなければ崩れてしまう。ぶっちゃけ、完全スローライフでもない限りはバタバタする事になるから、うん、あまり現実的じゃないね。で、2つ目。魔導人形の購入。


「本来はシェルターとセットなんだよな、本来は」


オプションとしてではあるが、かなり上の方の貴族や王族でもない限りは大抵の人間はこのオプションを諦める。何故か?簡単だ、魔導人形は高性能ではあるが、融通が聞かないのである。どういう事かと言うと・・・


「一つの事に専門的すぎるんだよな、アレ。値段は勿論、数揃えないとダメっていうね」


例えば、家事を行えと命令したとする。この場合、家事とは基本的に洗濯、掃除、料理を指すが、人形側には家事いずれかを集中して行ってしまうのだ。つまり、家事<料理>、家事<掃除>、家事<洗濯>となり、ただでさえクッソ高い人形を3台買わねば出来ないと言う事だ。で、勿論だが、家事<全般>を試した奴が居る。結果どうなったかって?命令のオーバーフローを起こし爆発した。なんでって、そりゃ、どの家事を優先して行うか?という思考に加えて、体一つしかないのに全ての家事を同時に行おうとすりゃ、そら、体が四方八方に同時に動こうとするから、爆発するしかないよね。


「勿論、俺に今後も見据えた金銭的余裕はない!・・・・・・・・・チキショウ」


まあ、正直、AどころかSランクですら、支払いにメンテ代でムリィ!と言うから、実質、上級貴族や王族専用である。そうなると、選択肢に上がるのがハウスキーパー、つまり、人を雇うと言う事だ。


「ここら辺はまだ考えんで良いけど、いずれは考えないとなあ」


人手はなんだかんだで正義である。と言うか、ダンジョン住まいに必須である。一応、かなり先になるが人と交流は出来る予定ではある。


「ま、とりあえず、今は1人でも回るし、放置で良いか。おっとと、コレもやっておかんと」


レバー以外の肝臓部分を燃やす。多少は乾燥させてあるので燃えやすいから助かる。レバー以外の部分も食えるらしいが量もあるから燃やすしかないのだ。こういう事もあって、焚き木は必須なんだよなあ。だから、焚き木料金がまず壁になるんだよな。木は無料じゃないからね。街では冬の家の暖炉とかにも使うし、早め、早めの購入が肝となるのだ。後、遠いダンジョンの場合は商人とのコネ大事。


「お金がどんどん出ていくからなあ・・・」


世知辛いが、これがダンジョン住まいと言うものを選んだ道である。ま、日常をまず頑張ろう。まずは1か月だ。

お金、大事。ただし、湯水のように出ていく。この辺がダンジョン住まいと街住まいの大きすぎる違いなんですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ