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ぽえむ

作者: 屋仁



はらはらと真白い雪、雪が舞う


ひらひら舞って、まって、どこにゆく


枯れてゆく、ゆく、散り散りに散って


なだれてとけて、なみだもなく


海にかえる。





わたしの背中にのこるてのひらのあと


わたしを突き飛ばした冷たきてのひら


凍えるような冷たさがいまも在るのです


あなたのそのてのひらが冷たく悴むように





わたしの心にはふれられない


伸ばした手をはじき返す殻がある


わたしの心にはふれられない


殻が腐り落ちて花が咲くまで





わたしの魂を焦がす陽の光


凍りついた光は突き刺すような暖かさでわたしを焦がす


焼けた肌が痛みを訴えていても


ぢりぢりと突き刺さるぬくもりはなお緩まることもなく


わたしの魂は醜く濁り融けてゆく





泣きました


泣いて泣いて泣き腫らしました


醜くもがいて引っ掻いて、爪の先をぼろぼろにして


痛みから逃れるために痛みを食んで泣きました


首を絞め、声も出さずに泣きました


肺の中で閉じ込められた息が自分は泣けないのかと


全身で泣くことも出来ずに泣きました


泣きたかったのだと泣いていました


泣くことも出来ずに





かみさまはいますか


春のひかりが蚯蚓脹れをおこし


夏のまなざしが爛れさせ


秋のさえずりが膿ませて


冬のなきごえが殺していく


かみさまはいますか


ゆるやかに肌をなぞる時の隙間に


心臓を握り潰すかみさま





明日はあなたのそばにあります


昨日はあなたのそばにありました


今日はあなた


あなたが


愛しているとうたえるのなら


愛はあなた





耳を閉じて、鼻を塞いで、目を摘んで、口を伏せて


手を棒にして、足を焼いて、腹を折って、腰を抱えて


涙は心臓から滴り、喘ぎ声は脳から溢れ


ただ、それでも、生きていたい





てのひらがさみしい夜


包み込む温もりも握り込む愛も無く


そこにいたはずの夜はもう


永久の別離に塞がれている


突きつけるための鋭くひかるナイフもない


こころをとかす涙もない


鼻につく煙のにおいだけが


夜からとおくはなれてゆく





まちがいが積み重なってつまずいて


奮い立たせた背中にかなしみが石を投げる


ただしさを指したはずのひとさしゆびが


心臓に突き刺さって穴をあける


きりきりと抉り取られるくるしみは


まちがいとただしさを撫でていく


そうして垂れたあかい血が


わたしの形をとっていく


わたしをまちがいとただしさとゆびさきがつくる


間違ったゆびさきが間違ったただしさのままで


間違ったわたしを間違って作っている







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