〜日常〜
「全く寝付けない」
ここ2週間は寝たくても寝れない日々がずっと続いている。
どうしてなんだろう。とか何で寝れないのだろう。とか初めの時は考えてたけど、もう最近は考えるのをやめた。
そこに答えはないし導いたとしても、それは結局自分の安直な考えから生まれた答えにしかすぎないのだから。
おもむろに亮二は起き上がり、タバコと携帯灰皿とライターを持って冷え切った夜中のベランダに向かった。
何やかんや、外でこうして夜中にタバコを吸う時間が自分にとってはとても良い時間だったと考えている。
この時間に同じように眠れなくて、同じ様なことをしている人が外にはいる気がして、換気扇の下で吸えば良いのにわざわざ寒い外気に触れようとしていた。
持ち出したハイライトに火を付けて、今時で言う”チル“な雰囲気を出しながら口から煙を吐く。
そしてコップに二口分の水を出して、それを一口で飲み干して地獄の時間に戻るのだ。
朝の日差しで目が覚めた。
時刻は7:30を指していた。亮二はまだ半分も機能していない頭をフル回転させて、今日のスケジュールを思い出す。
今日は学校に行って授業の後にバイトだ。
思い出しながら、時間を気にして支度を始めていた。
家を出るときには午前10:00ごろになっていた。
一人暮らしを始めて半年が経ち、家も最寄駅から歩いて10分以内で8畳もある1Kのマンションで男の自分には良すぎる程の物件だ。
学校に向かう時には必ず駅の近くのコンビニで濃いお茶を買ってから向かう。
性格としてはだらしないのにこだわりだけは無駄に強いのが自分でも自分に腹が立つ。しかし濃いお茶の方が得をした気分になって美味しい気がするのだ。
学校の最寄りまでは大体15分で着く。
その間は、1週間ずっと聴き続けているお気に入りのヒップホップを聴きながらぼーっとしている。
「おはよ!今日3限から?ちょっと早いんだね!一緒に行こ!」
駅の改札口でばったり会ったのは、同じ学年で同じゼミに入っている美咲だった。
容姿端麗で人柄もよく頭もいい。まさに典型的な女性が憧れる女性である。
「おっすー、昼飯買ってから3限行こうと思ってからさ。」
俺はよくあるような適当な返しをして一緒に向かうことにした。
1人で向かうと何故か大学という怪物からは、怪訝されてみられる気がしているからだ。
「ゼミのレポートやった?テーマが先生の趣味出し過ぎじゃない?」
美咲の屈託のない笑顔は、まさにヒロインだ。
「本当にね、メールで確認してもらったけどダメだよって返されちゃった。」
「だよねー、人を動かす方法なんて考えた事ないやー」
一応大学に入ってすぐに留学をしたため、英語はある程度出来ていた。なので、ゼミを決める際も英語できるしという考えでアメリカ人が先生のゼミにする事にした。そこで美咲と出会ったのだ。
「そろそろ進路も考えなきゃだし、大変だね。」
「そうだよねえ〜、頑張らなきゃ。」
心許ない事を言ったのが、自分に返ってきて辛い。