7話
至って真面目な、おふざけなんて微塵も入っていない顔で、
『ストライプ』は言うのだった。
「神はいる、ですか…」
「ああ。疫病神も益神も太陽神も創造神も神の息子も、全て実在する。」
キリストはあくまでも人の名前なので、
いても別におかしくはないだろう。
「神だけじゃない。
天使も妖怪も超能力者も、宇宙人もUFOも。
いわゆる『非科学』と呼ばれるもの、
その一言で片付けることが出来てしまうものの殆どが
実際にこの世にいる。」
いや、あると言うべきかな?
話しに一区切りをつけ、紅茶を飲み干すと立ち上がり、
続きは移動しながら話そうかと言って、
『ストライプ』は部屋を出た。
すぐに後に続き、三歩ほど後ろを歩く。
『スケープゴート』はついてきていないが、良いのだろうか。
「いきなりこんなことを言われて戸惑っているだろう?
なぁに、そんなに難しく考えなくたって良いんだ。
君は今まで生きてきて、
全てのものが常識と論理だけで説明できると
思っていたのかい?
違うだろう。」
『ストライプ』は振り替えることなく、
歩みを緩めることなく、
僕が先ほど出た部屋、
『ボディーランゲージ』に連れられて出た部屋の方へ向かっている。
部屋を出たときには気づいていなかったが、
僕が目を覚ました部屋の奥にも
まだまだ廊下は続いている。
遠くが霞んで見えないほどの距離(これはちょっと大げさだ。)続く廊下には
所狭しとドアが立ち並んでいる。
「君は今まで、幽霊にもUFOにも妖怪にもであっている。逢っている。
気づかないだけで
気にしていないだけで
気にしていない振りをしているだけで。」
もちろん、神にだって。
暫く沈黙が続く。
『ストライプ』は僕が目を覚ました部屋の
一つ奥の部屋の鍵をあけ、僕に中に入るよう促す。
わざわざここまでくるのなら
何故さっきの部屋に連れていったんだ。
横の部屋に行くのなら最初からそうして欲しい。
部屋の中は簡素なもので、
家具は
備え付けられたベッド、
さまざまな器具が置かれた台車、
色々な瓶の入った、見た感じ医療用の物が入れられている棚だけだった。
『ストライプ』は備え付けのベッドに腰掛け、
台車の上の器具をなにやらいじっている。
「視界の端にうつる影、
言葉や論理じゃ説明できない音や現象、
やたらと運がいい人なんてのもいただろう。」
君は運が良いほうかい?と『ストライプ』はいう。
運が良ければ人違いで拐われたり
いきなり指を切り落とされたりはしないだろう。
「僕には君の運なんて知ったことじゃないが、
悪かったのなら喜んでくれ。
あれは全て非科学で説明がつくものだし、
君はやつらの仲間になったんだ。」
まぁ、非科学ってくくりでの仲間だがね。
『ストライプ』は至極ゆるやかに動いていたが、僕には反応できなかった。
きっとまだこの人たちに常識が通用すると信じていたのだろう。
しかしその期待は裏切られることとなる。
まさか、台車の上にあったナイフを使い、
右手の指を親指を残し切り落とすなんて
誰が想像出来ただろうか。